屋敷の中は俺が思っていた以上に最高の生活だった。

 部屋は良い匂いで包まれてベッドは宿屋の倍以上ある。

 生まれて初めてお風呂というものも経験したし、出てくる食事は何を食べても美味しかった。

 そんな生活が3日も続いていた。

「にいちゃ、早く起きてー!」
「いつまで寝てるの?」

 馬車で移動していたからどこか動く気力が起きないのだ。

「そういえばロビンのおじさんからこんな紙をもらったよ?」

 俺はロビンから貰ったという手紙をロンから受け取り中身を見た。

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ウォーレンよ

働かざる者食うべからず
大人1泊 3000G
子供1泊 1000G
冒険者として活動するのであれば支払いを免除する。

ロビンより
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 俺は勢いよくベッドから起き、準備を始めた。
 さっきまでの体のだるさも手紙を見たら一気に吹き飛んだ。

「2人とも冒険者ギルドに行くよ!」

 タダだと思っていた屋敷での生活に、まさか高額なお金がかかるとは思ってもいなかった。

 都市ガイアスの一般的な宿屋で100Gなのにそれの30倍はあった。

 3000Gもあればルドルフの鍛冶屋で権利を1つ購入できるのだ。

「2人とも早くしないと置いてくぞ?」

「はーい!」

 部屋を出ようとするとロンとニアは壁に親指を立てていた。

「やっとあいつは動く気になったか」





 俺は王都の冒険者ギルドに手をかけると一度深呼吸をした。

 過去に冒険者ギルドに入れば、何かしら絡まれる可能性があったからだ。

「よし、入ろ──」

「くそ、邪魔だ!」

 俺は扉を開けて入ろうとした瞬間に扉が開いた。

 そのまま俺は姿勢を崩して誰かにぶつかった。

「すみません!」

「お兄ちゃんが勝手に行くからぶつかって……」

 俺はすぐに体を起こすとそこには金髪でキラキラとしたオーラを放った男が立っていた。

 そして後ろからついてくる女性も目の前の男と同様にキラキラとしていた。

 まるで絵本の中から出てきた王子様とお姫様のような見た目をしていた。

「にいちゃ、大丈夫?」
「兄がすみません」
 俺はその場で二人に見惚れてぼーっとしていた。

「ああ、ごめんなさい。 どうぞ!」

 俺が道を開けると男は俺達を上から下まで見て去って行った。去っていく姿もどこか煌びやかな感じがしていたが、通り様に舌打ちをしていた。

「兄がすみません!」
 後ろにいた女性は俺に頭を下げて男を追いかけた。

 男はなぜ俺達を見たのかわからないがやはりポーター特有の雰囲気が出ていたのだろうか。

 たしかに俺達って攻撃を受けることを考えていないから鎧とかも着ていない。

 俺達は冒険者ギルドに入ると、やはりポーターだからか視線を感じた。

 俺は何度も経験しているがこの雰囲気はいつになっても耐えられない。

「にいちゃにはオラが付いてるよ?」
「大丈夫だよ」
 ロンとニアは俺の手を引っ張って中まで歩いた。王都に来てからどこか二人は逞しくなったように感じた。これが成長なんだろう。

「おいおい、お前達はポーターか?」
 俺に声をかけてきたのは体格が大きく、顔がイカツイ男だった。

 筋肉隆々で着ている服もどことなくピタッとしており、見た目からして強そうな屈強な体をした男だった。

「はい」

 俺が返事をすると冒険者ギルド内はザワザワとしていた。また、いつもの展開だと思った。

 俺達がポーターと言った瞬間に目の前にいる男は震えていた。俺は念のために腰につけている短剣に手をかけた。

「やっと来たわよ……」

 さっきまでの声とは違い、どこか甲高い声が聞こえてきた。男の後ろを確認するが女性の姿はなかった。

「お前達やっと来たわ」

「えっ?」
 声がしたのは目の前にいる屈強な体をした男の方からだった。

「あーん、やっとポーターちゃん達が王都のギルドにも来てくれたわよ!」

「ウォー!」

 ギルドの中では男達の雄叫びが反響して建物が振動していた。

「あなた達みたいな人を待っていたのよ!」

「えっ!?」

 やはり甲高い声は目の前の男だった。しかも、逃がさないようにと俺達三人を抱きかかえたのだ。

「野郎ども今日はパーティーよー! ねぇ、あなた達パーティーは組んでるのかしら?」

 男?の合図とともに冒険者達はテーブルに酒を準備していた。

「あっ一応三人で組んでます」

「あら、好都合だわね! ポーターのみのパーティーらしいわよ!」

「ウェーイ!!」

 気づいたら俺は冒険者ギルドの中央にあるテーブルに座らされていた。

 俺達はどうやら王都の冒険者ギルドに歓迎されたようだ。