「にいちゃん剣が握れないよ」
「お兄ちゃん弓が打てない」

 いざスキルを試そうと森に来たが問題が起きていた。それは一般的にスキル玉は手に握った状態でしか発動しないのだ。

 そのため剣を持てば片手で振らないといけないし、弓矢は弓を引く方か支える方のどちらかが緩まって弓が飛ばないのだ。

 一方俺の短剣術は元々片手で操作しているため、特に問題はなかった。

『スキル【短剣術】を吸収しました』

 その結果しばらく使っていたら、スキルを吸収していた。

 それでもスキルの影響は強く片手槍や片手杖でもそれなりに威力はあった。ニアなんて杖で叩いたら木の幹が凹んでいたのだ。

 その時にロンとともにニアの前では悪いことをしないようにしようと男同士の熱い握手をした。

「ロンそっちにゴブリンが行ったよ」

「任せて!」

 しばらくすると二人でゴブリン程度なら倒せるようになった。まぁ、槍で滅多刺しにして、杖で殴れば流石のゴブリンも子供に負けてしまう。

 ゴブリンよ、ご愁傷様です。

 そんな俺もオークであればすぐに倒せるようになった。

 それだけブリジットのスキル屋からもらった世界"スピークス"のスキル玉は特殊だった。

 俺達は魔物を倒したあと、メジストの錬金術店に向かった。このスキル玉問題はスキル玉を作っているメジストに直接聞いたほうが早いと思ったのだ。

「ばあば! じいじ!」
「ただいまー!」

 二人は最近メジストの錬金術店に来ると自分の家に帰ってきたように、"ただいま"と言うことが増えてきた。

 その度に二人はにやにやと笑っている。本当の家族みたいな関係に、俺も心の底から安心する。

「二人ともおかえり」

 カウンターにいたのはモーリンだった。

「じいじは?」

 俺が聞く前にロンがメジストがどこにいるか聞いていた。

「メジストなら工房でスキル玉を作ってるわ」

 どうやら俺が持ってきたサハギンの魔石はスキル玉にするのに時間がかかっているらしい。ここ最近ずっと工房に籠り続けている。

「それで今日はどうだった?」

「今日は二人でゴブリンを倒したの!」

 ロンとニアは笑顔で答えたがモーリンからの視線が痛かった。子供二人にゴブリンの相手をさせて、お前は何をしていたんだと視線で訴えていた。

 子供達には優しいが、俺に対してはどこか当たりが強くなっている気がする。

「これにはわけが――」

「でもスキル玉が邪魔でね。大変だったの!」
「オラは槍でグサってしたよ!」

 二人が別々のことを話していてもモーリンは頷いて聞いていた。

「それで相談があるんですけど……」

 だから俺と子供達と話す時の表情が違うのはどうにかならないのだろうか。

「なんじゃ?」

「ニアも言っていた通りスキル玉を持ったままだと戦いづらくて何か良い方法はないですか?」

「あー、ウォーレン達はスキルホルダーを知らないのね」

 そう言ってマーリンは近くの鞄から腕輪を出してきた。

「これがスキルホルダーですか?」

「そうじゃ。そもそもスキル玉はどうやってスキルを発動させているのか知っているか?」

「スキル玉は手に握って使うの!」

「こんな感じでぎゅーって!」

 ロンとニアは手にスキル玉を握っていた。確かに俺も使う時は握るもんだと思っていた。

 そもそもスキル玉が出回っていることが少ないため、普通はスキルホルダーなんてものは持っていないのだ。

「それが一般的に言われているスキル玉の使い方だね。でもロンとニアだとスキル玉は大きいでしょ?」

 モーリンの言うように二人がスキル玉を持つと手の半分は使ってしまう。そのため剣も弓も使えなかったのだ。

「そこで使うのかスキルホルダーじゃ。ここの溝にスキル玉を入れると自動でサイズを合わせてくれるんだ」

 モーリンは説明するように自身のスキル玉を溝に入れると、勝手に金属部分が動きスキル玉が固定されていた。

「基本的にスキル玉は体に接していたら使える仕組みになっている」

 モーリンはそのままスキルホルダーを腕につけると手から氷が出ていた。

「氷属性を使えない私もこうすればスキルホルダーを通して、氷属性の魔力を受け取って簡単に使えるようになるのじゃ」

 モーリンが言っているようにスキルを使った瞬間にスキル玉が光っていた。

「ねぇ、ニアもそれ欲しいよ!」
「オラもオラも!」
「俺も俺も!」

 二人に合わせて伝えたがモーリンに睨まれてしまった。俺も一応孫のような感覚だったが、そこまで睨まれたら違うのかと思ってしまう。

「おっ、今日は賑やかだと思ったらどうしたのだ?」

 そんな中、作業が終わったのかメジストが工房から出てきた。

「あっ、じいじ! ニアもスキルホルダー欲しいよ!」
「オラもオラも!」
「俺も俺……」

 なぜ俺が言うとメジストまでそんな顔をするのだ。可愛い系で言ったのがいけなかったのだろうか。

「それなら――」

 そもそも孫ポジションにいる俺が間違っているのだろうか。

 俺も優しくされたいが、年齢的にダメなんだろう。

 どうしたら構ってもらえるのか考えていたら、メジストが言っていたことを聞き逃してしまった。