その後メジストの錬金術店に入ると目を赤くしたメジストが立っていた。
「覗いて――」
「ぐずっ、覗いてはない」
メジストは目を擦りながら、奥の工房に戻って行った。きっと心配して見にきたのだろう。
工房から大量のスキル玉を持ってきては、子供達にプレゼントしていた。俺も欲しかったが、子供を泣かすやつは自分で稼げと言われてしまい諦めた。
あの一件以来、ロンとニアはさらに俺にべったりとくっつくようになった。寝る時やお風呂に入る時も常に一緒だ。
最近は排泄まで一緒に来ようとするため、引き離すのが大変なぐらいだ。
「ねぇ、私も冒険者になりたい」
「僕も武器が欲しい」
以前よりも活発的になった二人は、自分から魔物と戦いたいと訴えることが増え、自分達の意思とロビンの勧めで冒険者になることが決まった。
生憎、ロンはスキル【収集】でニアに関して無スキルのため、ポーターとして冒険者ギルドに登録した。
流石に子供だからか、獣人が関係しているのかはわからないが意地悪をする冒険者はいない。
ただ、登録するその日に限っては冒険者達は何かに怯えているような感じはしていた。
そんなことがあって二人は冒険者になることができた。
そして、俺達三人にとって今日は大事な日だった。
「じゃあ、初めての依頼を受けに行こうか」
「うん!」
俺達はポーターだけのパーティーを組むこととなった。実際はポーターのロンとニアの方が、俺よりステータスが高いため頼りになる。
今日の依頼はマンドラゴラという錬金術に必要な魔物の討伐および回収だ。危険度も低いため、ポーターだけのパーティーでも依頼を受けることができた。
「あー、わしの可愛い孫達やー!」
その依頼主はメジストの錬金術店の店主であるメジストだった。もうメジストにとってロンとニアは孫のような存在だ。
「じゃあ、これが依頼内容だからマンドラゴラを10体持ってきてくれよ」
「わかった! じいじ頑張ってくるよ!」
「今日はニアも活躍してくるからね」
「ああ、無理はしちゃんかんぞ」
メジストはデレデレしながら二人を撫でている。初めての依頼だからか元気よく店から飛び出して行った。
「あの子達を頼むぞ。もし怪我でもさせたら、ただじゃすまないぞ」
二人を孫と言っているなら関係上だと俺も孫になるはずだが、どこか俺には優しくないのだ。世の中理不尽だらけだ。
「じゃあ行ってきます」
俺も店から出ると依頼に書いてあるマンドラゴラの生息地に向かうことにした。
「ロビンあいつらを頼むぞ」
「あいつにあんなこと言って一番の心配はウォーレンのくせに」
「うっさい! お前も早くいけ」
「はいはい」
♢
マンドラゴラの生息地は森の中でも川の近くに生息しており、自然豊かなところにしかいないらしい。
そもそも川に行ったことない俺達はどこかウキウキとしていた。
「マン・マン・マンドラ・ゴラゴラ」
ロンは何か訳の分からない歌を口ずさみながら歩いていた。
「お兄ちゃんしっかりしてよね!」
逆にニアはどこかキビキビとしている。全く正反対の二人だが仲は相変わらず良い。
「マンドラゴラって確かうるさいやつだよな」
事前の情報ではマンドラゴラは土の中におり、人の形をした植物の魔物らしい。引っこ抜くと痛みなのか耳に響く声で叫ぶのが特徴だ。
そのため抜いた瞬間に攻撃しないと、鼓膜が破れるという地味に怖い魔物と言われている。
「おい、お前達川だぞ!」
歩いていると川をみつけた。子供達…….いや、俺のテンションは最高に上がっていた。
「お兄ちゃん少し落ち着いたら?」
「そうだよ。にいちゃ危ないよ?」
ウキウキしていたのは俺だけだったらしい。どうやら俺は二人に心配をかけたようだ。
俺が住んでいた故郷にも、森はあったけど草原が近いため川は存在していない。
「じゃあ、マンドラゴラを探すか」
俺達は目を凝らしてマンドラゴラを探すことにした。
「マン・マン・マンドラ・ゴラゴラ」
「マン・マン・マンドラ・ゴラゴラ・マンドラ」
「ゴラ・ゴラ・マンドラ・マンマン」
ロンがずっと変な歌を口ずさんでいたため、いつのまにか俺とニアも釣られて歌っていた。すると足元から声が聞こえていた。
「ウェーイ! マン・マン・マンドラ! 俺もお前もマンドラ! マンドラ!」
俺達は突然地中から出てきた謎の生物に驚いた。
「にいちゃ、あれがマンドラゴラか?」
まさかマンドラゴラが自分から出てくるとは思いもしなかった。ロンの歌の影響か、スキルの影響かは分からないが何か惹きつけられたのだろう。
ちなみにマンドラゴラはスキル【音操作】を持っていた。以前鑑定を魔物にも使ってみたところ、人間と同様にスキルを持っていることに気づいた。
「マン・マン・マンドラ・ゴラゴラ・マンドラ」
ロンがさらに歌ってみるとマンドラゴラもノリに乗っている。
「ウェーイ! 昨日も今日もマンドラ――」
今がチャンスだと、マンドラゴラが歌っている最中に、容赦なく短剣を刺した。マンドラゴラの歌を聞くと、なぜか無性にイライラする。
何が"ウェーイ"だ。こっちは初めて見た川にも入れずイライラしている。
ただの八つ当たりだって思われるかも知れないが、そんなことは関係ない。
その後もロンとニアが歌っていると、ボコボコとマンドラゴラ達が出てくる。
俺はマンドラゴラをストレス発散するかのように倒すと、気づけばマンドラゴラの山ができていた。
一応マンドラゴラも魔物のため、体からは鮮やかな黄緑色の魔石が出てきた。
「ねぇ、お兄ちゃん川に入ってもいい?」
討伐が終わり帰ろうとすると、突然ニアが川に入りたいと言い出したのだ。
「オラも川に入る!」
それに乗ってロンも川に入りたいと言ってきたのだ。
「じゃあ、少し遊んでから帰るか!」
俺は少し服とズボンを捲ると川の中へ入っていく。初めての感触と冷たさに俺は感動していた。
「ふふふ、なんかお兄ちゃんって私達より子供だよね?」
「それが良いところだな」
「いつも頑張っているからご褒美だね」
「おーい、ロンとニアもおいでー!」
俺は何かを話している二人を呼んだ。ロンとニアは耳と尻尾を立たせて俺のところまで走ってきた。
一言あるとすれば人生初の川は最高でした。
「覗いて――」
「ぐずっ、覗いてはない」
メジストは目を擦りながら、奥の工房に戻って行った。きっと心配して見にきたのだろう。
工房から大量のスキル玉を持ってきては、子供達にプレゼントしていた。俺も欲しかったが、子供を泣かすやつは自分で稼げと言われてしまい諦めた。
あの一件以来、ロンとニアはさらに俺にべったりとくっつくようになった。寝る時やお風呂に入る時も常に一緒だ。
最近は排泄まで一緒に来ようとするため、引き離すのが大変なぐらいだ。
「ねぇ、私も冒険者になりたい」
「僕も武器が欲しい」
以前よりも活発的になった二人は、自分から魔物と戦いたいと訴えることが増え、自分達の意思とロビンの勧めで冒険者になることが決まった。
生憎、ロンはスキル【収集】でニアに関して無スキルのため、ポーターとして冒険者ギルドに登録した。
流石に子供だからか、獣人が関係しているのかはわからないが意地悪をする冒険者はいない。
ただ、登録するその日に限っては冒険者達は何かに怯えているような感じはしていた。
そんなことがあって二人は冒険者になることができた。
そして、俺達三人にとって今日は大事な日だった。
「じゃあ、初めての依頼を受けに行こうか」
「うん!」
俺達はポーターだけのパーティーを組むこととなった。実際はポーターのロンとニアの方が、俺よりステータスが高いため頼りになる。
今日の依頼はマンドラゴラという錬金術に必要な魔物の討伐および回収だ。危険度も低いため、ポーターだけのパーティーでも依頼を受けることができた。
「あー、わしの可愛い孫達やー!」
その依頼主はメジストの錬金術店の店主であるメジストだった。もうメジストにとってロンとニアは孫のような存在だ。
「じゃあ、これが依頼内容だからマンドラゴラを10体持ってきてくれよ」
「わかった! じいじ頑張ってくるよ!」
「今日はニアも活躍してくるからね」
「ああ、無理はしちゃんかんぞ」
メジストはデレデレしながら二人を撫でている。初めての依頼だからか元気よく店から飛び出して行った。
「あの子達を頼むぞ。もし怪我でもさせたら、ただじゃすまないぞ」
二人を孫と言っているなら関係上だと俺も孫になるはずだが、どこか俺には優しくないのだ。世の中理不尽だらけだ。
「じゃあ行ってきます」
俺も店から出ると依頼に書いてあるマンドラゴラの生息地に向かうことにした。
「ロビンあいつらを頼むぞ」
「あいつにあんなこと言って一番の心配はウォーレンのくせに」
「うっさい! お前も早くいけ」
「はいはい」
♢
マンドラゴラの生息地は森の中でも川の近くに生息しており、自然豊かなところにしかいないらしい。
そもそも川に行ったことない俺達はどこかウキウキとしていた。
「マン・マン・マンドラ・ゴラゴラ」
ロンは何か訳の分からない歌を口ずさみながら歩いていた。
「お兄ちゃんしっかりしてよね!」
逆にニアはどこかキビキビとしている。全く正反対の二人だが仲は相変わらず良い。
「マンドラゴラって確かうるさいやつだよな」
事前の情報ではマンドラゴラは土の中におり、人の形をした植物の魔物らしい。引っこ抜くと痛みなのか耳に響く声で叫ぶのが特徴だ。
そのため抜いた瞬間に攻撃しないと、鼓膜が破れるという地味に怖い魔物と言われている。
「おい、お前達川だぞ!」
歩いていると川をみつけた。子供達…….いや、俺のテンションは最高に上がっていた。
「お兄ちゃん少し落ち着いたら?」
「そうだよ。にいちゃ危ないよ?」
ウキウキしていたのは俺だけだったらしい。どうやら俺は二人に心配をかけたようだ。
俺が住んでいた故郷にも、森はあったけど草原が近いため川は存在していない。
「じゃあ、マンドラゴラを探すか」
俺達は目を凝らしてマンドラゴラを探すことにした。
「マン・マン・マンドラ・ゴラゴラ」
「マン・マン・マンドラ・ゴラゴラ・マンドラ」
「ゴラ・ゴラ・マンドラ・マンマン」
ロンがずっと変な歌を口ずさんでいたため、いつのまにか俺とニアも釣られて歌っていた。すると足元から声が聞こえていた。
「ウェーイ! マン・マン・マンドラ! 俺もお前もマンドラ! マンドラ!」
俺達は突然地中から出てきた謎の生物に驚いた。
「にいちゃ、あれがマンドラゴラか?」
まさかマンドラゴラが自分から出てくるとは思いもしなかった。ロンの歌の影響か、スキルの影響かは分からないが何か惹きつけられたのだろう。
ちなみにマンドラゴラはスキル【音操作】を持っていた。以前鑑定を魔物にも使ってみたところ、人間と同様にスキルを持っていることに気づいた。
「マン・マン・マンドラ・ゴラゴラ・マンドラ」
ロンがさらに歌ってみるとマンドラゴラもノリに乗っている。
「ウェーイ! 昨日も今日もマンドラ――」
今がチャンスだと、マンドラゴラが歌っている最中に、容赦なく短剣を刺した。マンドラゴラの歌を聞くと、なぜか無性にイライラする。
何が"ウェーイ"だ。こっちは初めて見た川にも入れずイライラしている。
ただの八つ当たりだって思われるかも知れないが、そんなことは関係ない。
その後もロンとニアが歌っていると、ボコボコとマンドラゴラ達が出てくる。
俺はマンドラゴラをストレス発散するかのように倒すと、気づけばマンドラゴラの山ができていた。
一応マンドラゴラも魔物のため、体からは鮮やかな黄緑色の魔石が出てきた。
「ねぇ、お兄ちゃん川に入ってもいい?」
討伐が終わり帰ろうとすると、突然ニアが川に入りたいと言い出したのだ。
「オラも川に入る!」
それに乗ってロンも川に入りたいと言ってきたのだ。
「じゃあ、少し遊んでから帰るか!」
俺は少し服とズボンを捲ると川の中へ入っていく。初めての感触と冷たさに俺は感動していた。
「ふふふ、なんかお兄ちゃんって私達より子供だよね?」
「それが良いところだな」
「いつも頑張っているからご褒美だね」
「おーい、ロンとニアもおいでー!」
俺は何かを話している二人を呼んだ。ロンとニアは耳と尻尾を立たせて俺のところまで走ってきた。
一言あるとすれば人生初の川は最高でした。