俺はとりあえず面倒事に巻き込まれる前にメジストの錬金術店から出ることにした。
「また後日来ま――」
俺は扉を開けようとした瞬間に危険を感じて横に踏み込んだ。扉を見るとそこにはナイフが刺さっていた。
「あれを避けるのか。流石はリードン錬金術店め! 手慣れなやつを連れて来たのう」
モーリンもだがナイフを投げる高齢者が流行っているのだろうか。ナイフがある場所を見るとさっきまで俺の顔があったところにちょうど刺さっていた。
「いきなり客を襲うってどんな店ですか!?」
俺は咄嗟に声が出てしまった。確かに俺は何も買う気はないがお客さんだ。
「この店に客なんか来ねーぞ!」
おじいちゃんはさらにナイフを投げようと構えている。
「モーリンさんの紹介で来たんです!」
俺がモーリンの名前を出すとメジストはビクッと体が反応していた。
「モーリンじゃと?」
「これがその手紙です」
どうやらモーリンを知っていると感じた俺はおじいちゃんに手紙を渡した。
「ふむ……うん……うっ……あああああ」
手紙を読み始めるとおじいちゃんは震え出し、最終的には崩れながら床に手を付けていた。
手から落ちて来た手紙を拾うと2人の関係性は明らかだった。
――――――――――――――――――――
メジストへ
元気にしていますか。あたしは元気じゃ。
さて、錬金術店をやりたいと言って街を勝手に出てからお店の調子はどうじゃ?
無理を押し切って始めたお店はさぞかし行列が出来るほど立派なお店になっておるじゃろ。
さて、話は戻るが今目の前にいるウォーレンを助けてやってくれ。
昔のあたしらを感じさせるその子に手を貸してやってくれんか。
きっとメジストも気にいるはずじゃ。
ではいつかメジストの錬金術店まで遊びに行きます。
その時までに行列が出来てないと離婚します。
愛しの妻より
――――――――――――――――――――
モーリンと目の前にいるおじいちゃんのメジストはまさかの夫婦だったのだ。手紙の内容から明らかに立場はモーリンの方が上だろう。
「お主の名前を聞いてもいいか?」
「俺の名前はウォー──」
「ウォーリンだな」
俺の名前に被せるようにメジストは話し出した。
「いや、ウォー──」
「ウォーリンだ。お前は今日からウォーリンだ。それ以上、それ以下でもない」
「もう、ウォーリンで大丈夫です」
名前を間違えていたため俺は訂正することにしたがずっとこの調子だ。だから諦めることにした。
「そうか、ウォーリンか! 俺はまだウォーレンには会っていないからな。それでウォーは何の用事だ?」
「モーリンさんに相談したらここで買い取って貰うといいって言われたんです」
俺はこの間倒したゴブリンジェネラルから手に入れた琥珀色の魔石を渡した。
「こっ……これがなぜここにあるんだ!?」
メジストの驚き方からして何か珍しい魔石なのはわかった。
「これって珍しい――」
「魔石を買い取らせてもらうことはできないか?」
「ええ、大丈夫です。それよりも離れてください」
「ああ、すまない」
メジストは尋常じゃない速さと距離感で詰め寄ってきた。その距離は口付けをする一歩手前だ。
「これで店が経ち直せるぞー! 打倒リードン錬金術店だ!」
やはりメジストの錬金術店は潰れる間近だったのだろう。モーリンの手紙からも反対を押し切って街を離れたのなら尚更帰りにくいはずだ。
「じゃあ、この魔石はいくらになりますか?」
「……」
「あのー、魔石はいくらで買い取ってもらえますか?」
「……」
聞こえていないのか2度も言ったが反応はなかった。
「なら違うところで売り――」
俺は魔石をメジストから受け取った。正確に言えば離そうとしなかった手を無理やりこじ開けて返してもらっただけだ。
「年寄りへの暴力か! 最近の若者は年寄りを労るってことを知らんのか!」
「こっちだって命が掛かってるんだ」
俺だって証券口座にお金を入れすぎた結果、生活するお金が少しだけしかないのは変わらない。
「そんなことは知らーん!」
話しても無駄だと気づいたメジストは俺に抱きつくように飛び込んできた。
しかし、俺もそう簡単に抱きつかせる男ではない。
この間手に入れた素早く動ける靴を使えば一瞬で飛び越え……れなかった。
「へへへ、お主はまだまだだな」
なんてことでしょうか。俺は気づいたら壁際に誘導されていたのだ。
ジリジリとさっきから詰め寄って来たのはこのためだったのか。
「さぁ、逃がさないぞ?」
「いや、これは俺の魔石だ」
俺は魔石を抱きつくように守った。これを渡すわけにはいかないのだ。
「早く渡した方が身のためだぞ」
逃げ場がない俺にメジストは近づいて来た。もう距離としては人が一人入れるかどうかの距離だ。
「この魔石はわしの――」
「アバババ!」
メジストの手が近づいた瞬間に鼓膜が破れそうなほどの轟音が鳴り響く。
気づいたら目の前でメジストは倒れていた。なんと天井を突き破るように雷が落ちて来たのだ。
「えっ……」
俺が戸惑っていると雷の勢いでなのかモーリンの手紙が俺の足元まで飛んできた。一部分は雷の影響で焦げている。
その手紙には紙が焦げた部分に追加で文字が浮かび上がっていた。
――――――――――――――――――――
追伸
魔石を無理やり奪おうとしたら無事に生きていけると思うなよ。
ウォーレンを襲うと自動で雷属性の魔法を発動するように仕込んであります。
――――――――――――――――――――
やはりモーリンは逆らってはいけない人のようだ。
「また後日来ま――」
俺は扉を開けようとした瞬間に危険を感じて横に踏み込んだ。扉を見るとそこにはナイフが刺さっていた。
「あれを避けるのか。流石はリードン錬金術店め! 手慣れなやつを連れて来たのう」
モーリンもだがナイフを投げる高齢者が流行っているのだろうか。ナイフがある場所を見るとさっきまで俺の顔があったところにちょうど刺さっていた。
「いきなり客を襲うってどんな店ですか!?」
俺は咄嗟に声が出てしまった。確かに俺は何も買う気はないがお客さんだ。
「この店に客なんか来ねーぞ!」
おじいちゃんはさらにナイフを投げようと構えている。
「モーリンさんの紹介で来たんです!」
俺がモーリンの名前を出すとメジストはビクッと体が反応していた。
「モーリンじゃと?」
「これがその手紙です」
どうやらモーリンを知っていると感じた俺はおじいちゃんに手紙を渡した。
「ふむ……うん……うっ……あああああ」
手紙を読み始めるとおじいちゃんは震え出し、最終的には崩れながら床に手を付けていた。
手から落ちて来た手紙を拾うと2人の関係性は明らかだった。
――――――――――――――――――――
メジストへ
元気にしていますか。あたしは元気じゃ。
さて、錬金術店をやりたいと言って街を勝手に出てからお店の調子はどうじゃ?
無理を押し切って始めたお店はさぞかし行列が出来るほど立派なお店になっておるじゃろ。
さて、話は戻るが今目の前にいるウォーレンを助けてやってくれ。
昔のあたしらを感じさせるその子に手を貸してやってくれんか。
きっとメジストも気にいるはずじゃ。
ではいつかメジストの錬金術店まで遊びに行きます。
その時までに行列が出来てないと離婚します。
愛しの妻より
――――――――――――――――――――
モーリンと目の前にいるおじいちゃんのメジストはまさかの夫婦だったのだ。手紙の内容から明らかに立場はモーリンの方が上だろう。
「お主の名前を聞いてもいいか?」
「俺の名前はウォー──」
「ウォーリンだな」
俺の名前に被せるようにメジストは話し出した。
「いや、ウォー──」
「ウォーリンだ。お前は今日からウォーリンだ。それ以上、それ以下でもない」
「もう、ウォーリンで大丈夫です」
名前を間違えていたため俺は訂正することにしたがずっとこの調子だ。だから諦めることにした。
「そうか、ウォーリンか! 俺はまだウォーレンには会っていないからな。それでウォーは何の用事だ?」
「モーリンさんに相談したらここで買い取って貰うといいって言われたんです」
俺はこの間倒したゴブリンジェネラルから手に入れた琥珀色の魔石を渡した。
「こっ……これがなぜここにあるんだ!?」
メジストの驚き方からして何か珍しい魔石なのはわかった。
「これって珍しい――」
「魔石を買い取らせてもらうことはできないか?」
「ええ、大丈夫です。それよりも離れてください」
「ああ、すまない」
メジストは尋常じゃない速さと距離感で詰め寄ってきた。その距離は口付けをする一歩手前だ。
「これで店が経ち直せるぞー! 打倒リードン錬金術店だ!」
やはりメジストの錬金術店は潰れる間近だったのだろう。モーリンの手紙からも反対を押し切って街を離れたのなら尚更帰りにくいはずだ。
「じゃあ、この魔石はいくらになりますか?」
「……」
「あのー、魔石はいくらで買い取ってもらえますか?」
「……」
聞こえていないのか2度も言ったが反応はなかった。
「なら違うところで売り――」
俺は魔石をメジストから受け取った。正確に言えば離そうとしなかった手を無理やりこじ開けて返してもらっただけだ。
「年寄りへの暴力か! 最近の若者は年寄りを労るってことを知らんのか!」
「こっちだって命が掛かってるんだ」
俺だって証券口座にお金を入れすぎた結果、生活するお金が少しだけしかないのは変わらない。
「そんなことは知らーん!」
話しても無駄だと気づいたメジストは俺に抱きつくように飛び込んできた。
しかし、俺もそう簡単に抱きつかせる男ではない。
この間手に入れた素早く動ける靴を使えば一瞬で飛び越え……れなかった。
「へへへ、お主はまだまだだな」
なんてことでしょうか。俺は気づいたら壁際に誘導されていたのだ。
ジリジリとさっきから詰め寄って来たのはこのためだったのか。
「さぁ、逃がさないぞ?」
「いや、これは俺の魔石だ」
俺は魔石を抱きつくように守った。これを渡すわけにはいかないのだ。
「早く渡した方が身のためだぞ」
逃げ場がない俺にメジストは近づいて来た。もう距離としては人が一人入れるかどうかの距離だ。
「この魔石はわしの――」
「アバババ!」
メジストの手が近づいた瞬間に鼓膜が破れそうなほどの轟音が鳴り響く。
気づいたら目の前でメジストは倒れていた。なんと天井を突き破るように雷が落ちて来たのだ。
「えっ……」
俺が戸惑っていると雷の勢いでなのかモーリンの手紙が俺の足元まで飛んできた。一部分は雷の影響で焦げている。
その手紙には紙が焦げた部分に追加で文字が浮かび上がっていた。
――――――――――――――――――――
追伸
魔石を無理やり奪おうとしたら無事に生きていけると思うなよ。
ウォーレンを襲うと自動で雷属性の魔法を発動するように仕込んであります。
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やはりモーリンは逆らってはいけない人のようだ。