大文字伝子が行く


 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
 ==EITOエンジェルズとは、EITOの後方支援部隊である。==========

 12月14日。午前9時。新庄家。
 たまきは、夫の演奏旅行が休演になったので、思い切り朝から甘えていた。
 何故か、EITO東京本部から臨時の休日の告知メールが来たので、伝子に確認した。
 「結城。たまには、のんびりしろ。実は、国会閉会後、新大臣を見学させて欲しいと総理から申し出があったんだ。EITO東京本部には機密事項が多い。そこで、夏目さんや理事官は臨時休暇を決めたんだ。夕べは、何ラウンドやったんだ?新庄さんは一般人だから手加減脚加減しろよ、妹よ。」
 「おねえさまの意地悪。今日は本当に休みなんですね。」「今、言った通りだ。緊急の場合は連絡する。」
 「了解。」
 電話を切った、結城たまきこと新庄珠恵は、一度来た衣類をさっさと脱いだ。
 「今日、休みだって?」と尋ねる夫に、「そう、あなたは休ませないわ。」と、たまきはニッと笑って言った。
 午前9時。馬場のアパート。
 「年賀状、買って来たよ、コンビニで。」
 「年賀葉書よ。ウチは表書きだけでいいから・・・まあ、可愛い。これでいいわ。」
 「なあ、和子。」「なあに?」「お前は『おねえさま』って言わないのか?」
 「おねえさまって言えるのは、条件があるのよ。」
 「どんな?」「一度死ぬか、死にかけるか、ね。」
 「死んだら言えないけど。」「私は、死にかけたことはないから。隊長の前では。」
 「隊長の前では?」「アンタと別れた後、死のうとした・・・出来なかった。アンタじゃないけど、最初で最後のオトコだったから。それで、自衛隊に入隊した。」
 「・・・いつか、子供出来たら、隊長に名付け親頼めるかな?」
 「頼めるわよ、条件ないから。年賀状書き終わったら、さ。」
 「うん?」「朝の『訓練、やる?』
 「ブーメラン?」「殺す!」
 午前9時。中島家。
 増田はるかは、中島の家に直接嫁いだ。
 中島は、下宿したことが無かった。母は他界していた。
 「良かったな。自衛隊員も公務員だが、教師と違って、なかなか有給休暇とって、休めない。はるかちゃん、子供出来たら自衛隊もEITOも引退する、って勝男から聞いたが、いいのかい?」
 「はい。勝男さんとお義父さまと、子供のために頑張ります。見て下さい、お義父さま。」
 増田は、一足早い『書き初め』を拾うした。『必勝』と描いてある。
 「見事だ。」「隊長にも褒めて頂きました。」
 「EITO隊長も、書道やるのかい?」「はい。」
 午前9時。青山家。
 仏壇の上方に、青山の母繁子の白バイ隊員姿の遺影があった。
 和机に、おせちや雑煮が並んでいる。
 2人だけの『正月』を、一足早く堪能していた。
 今日、臨時に休みになることは、久保田管理官から、昨日聞いていたので、急いで準備したのだ。
 「たかしさん、今日、元日の代わり、よね?ドリンク剤とビタミン剤、たっぷりあるわよ、芦屋グループの商品だけど。大阪支部の総子さん夫婦も使ってるそうよ。」
 「効くのかい?美由紀。」「使えば分かるんじゃない?」
 「そうだね。」
 午前9時。高木家。
 ダインイングキッチン。
 こちらは、剣道の『朝稽古』が終った後だった。
 高木の母、琴絵も自衛隊員だった。
 「さやか。前にも言ったけど、子供が出来ても引退しなくていいからね。貢を助けるのなら、家で無く、現場で助けなさい。」
 「はい。お母様。」
 午前9時。井関家。
 「警察官も自衛隊員も、『年末年始は早めに済ませろ』だからな。」井関が言うと、伝子が現れた。
 「そんな格言があったんですか。勉強になるなあ。あ、餅付きですか。手伝います。あかり、タスキを頼む。」
 「はい。おねえさま。」
 伝子はタスキを受け取ると器用に両腕に通し、権蔵から渡された杵を振るった。
 「なかなか上手いわね、今日は私の出番はないかな?」と民恵は笑った。
 あかりは介添えに回り、後の準備をしている五郎も智子も微笑んでいる。
 午前9時。ロバートのマンション。
 「後、数ヶ月だね、なぎさ。いいのかい?」
 ロバートの問いに、「後悔する位なら、再・逆プロポーズしないわ。子供はバイリンガルに育てなきゃね。」「そうだね。」
 もう、なぎさには、『B』の陰は無かった。
 午前9時。久保田家。
 「お嬢様。珍しく遅刻ですか?」「じいったら、知ってて意地悪言うんだから。朝食終えたら、トレーニングするから、健太郎、お願いね。あなた。トレーニング場の準備、お願いね。」
 「承知しました。」執事の千葉と久保田誠は同時に応えて笑った。
 役目が逆だかれである。
 午前9時。愛宕家。
 すやすやと眠る、寛治とみちるを見て、白藤署長は、そっと、家を後にした。
 愛宕家は火事で焼け落ちた為、白藤家を改造し、表札を変えた。
 午前9時。中津興信所。
 高崎は言った。「新妻の友理奈です。」
 健二所長は言った。「知ってますけど。なあ、みんな。」
 4人は吹き出した。
 「妻が臨時休業で、夫と同伴出勤?聞いたことないぞ。」
 画面の向こうの中津警部も笑っている。
 午前9時。伝子のマンション。
 「それで、ひかる君、いつ帰るって言ってた?学。」
 フレンチトーストにマーマレードをたっぷり塗って食べながら伝子は言った。
 「20日。クリスマス頃から混むから、早めにチケット用意したって。宿題持って帰るって。」
 「宿題?大学生の宿題をお前が見てやるの?」
 「違うよ、伝子。僕への『宿題』、アナグラムだよ。」
 「やっぱ、大学生は暇だな。」
 「ひかる君には、総子ちゃんも感謝してたよ。いつの間にか偉くなってたんだね、ひかる君のお母さん。」
 「今夜さ。」「エンドレスマッチかい?」
 「いや。敵が連絡してくる。」
 「何で?」
 「カン、だ。」
 伝子のカンは、またしても当たった。

 翌日。午前0時。Base bookにブルー・メデューサのメッセージが載った。
 『メリークリスマスは、24日だっけ?From B.M. To Denko』
 区切り隣の藤井が跳んできた。
 「来たわよ。」「知ってる。」
 大文字夫妻は、普段着のままだった。
 そして、午前9時。EITO東京本部。
 「だけ?」
 昨夜、宿直だった原田が「だけ、です。僕を責めないで下さいよ。」と言った。
 「誰が原田を虐めているって?私の舎弟の。」
 会議は、いつもの通り、伝子のキツいジョークから始まった。
 「あのメッセージが本物なら、メールは止めたってことだな。」と、理事官が言い、「2便が来ますね。」と、夏目警視正は言った。

 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)
 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
 橘なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。ロバートと婚約してから、姓を戻している。
 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
 愛宕[白藤]みちる・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。あつこと警察学校同期。警視庁丸髷署からのEITO出向。警部補。

 斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
 夏目房之助警視正・・・EITO東京本部副司令官。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
 渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 中島[増田]はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。見合いしたMAITOの中島と事実婚をしていたが結婚した。
 馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
 高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。
 高崎[馬越]友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
 青山[江南]美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
 伊知地満子一曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
 高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
 七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。
 青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。
 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
 井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。
 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁警部。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。

 新庄珠恵・・・元結城たまき警部。結婚と、『身バレ』の可能性から、名字だけでなく、下の名前も改名。警視庁は退職して、EITOに再就職。

 河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。
 原田正三・・・元新宿署刑事。警視庁警部。警視庁からEITO出向。

 藤井康子・・・伝子マンションの区切り隣の住人。栄養士。モールで料理教室を開いている。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。

 物部一朗太・・・伝子の同級生。喫茶店のマスター。翻訳部の副部長だったので、高遠達後輩は、未だに副部長と呼んでいる。

 中島勝男・・・空自二佐、MAITO隊長。
 中島秀勝・・・中島の父。元空自。
 高木琴絵・・・高木の母。
 井関[新町]あかり・・・元EITO隊員。丸髷署から出向していたが、井関五郎と結婚を機に引退した。
 井関権蔵・・・井関五郎の父。警視庁鑑識課課長。
 井関智子・・・五郎の妹。鑑識課員。
 井関民恵・・・権蔵の妻。元女性警察官。女性初の鑑識課課長になる筈だったが、周囲の反対が多く断念、権蔵と結婚した。
 久保田誠・・・警視庁警部補。あつこの夫。家はあつこの所有だが、一応戸籍上は世帯主。
 千葉・・・あつこの執事。あつこが幼少の頃から仕えている。
 白藤峯男・・・みちるの叔父。丸髷署署長。
 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
 中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
 泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。