＝＝＝＝＝＝＝＝ この物語はあくまでもフィクションです ＝＝＝＝＝＝＝＝＝
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子（だいもんじでんこ）・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
橘なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。ロバートと婚約してから、姓を戻している。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕[白藤]みちる・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。あつこと警察学校同期。警視庁丸髷署からのEITO出向。警部補。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。
橋爪警部補・・・『片づけ隊』を手伝っている。
西部警部補・・・『片づけ隊』を手伝っている。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO東京本部副司令官。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。
中島[増田]はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。見合いしたMAITOの中島と事実婚をしていたが結婚した。
馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。
高崎[馬越]友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音（しずね）・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
青山[江南]美由紀・・・､元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
伊知地満子一曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。
馬場力（ちから）3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁警部。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
柊安江・・・元マラソンランナー、元やり投げ選手。EITOに就職。
新庄珠恵・・・元結城たまき警部。結婚と、『身バレ』の可能性から、名字だけでなく、下の名前も改名。警視庁は退職して、EITOに再就職。
藤井康子・・・伝子マンションの区切り隣に住む。元料理教室経営者。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士。
市橋早苗・・・内閣総理代臣。
麻生島太郎・・・移民党副総裁。副総理。
守谷哲夫・・・SAT隊長。
天童晃・・・EITO東京本部師範。
西部[早乙女]藍・・・元白バイ隊。今はEITO非正規職員。
工藤由香・・・元白バイ隊。今はEITO非正規職員。
山並郁夫・・・闇サイトハンターと名乗っている。EITO協力者。
=================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前1時。Base Bookにパラ・リヴァイアサンから、挑戦状が届いた。
『和棕櫚 統計』
画面の下の方に、次の英文が見えた。
"hardworking people"
午前9時。EITO東京本部。会議室。
マルチディスプレイに、今朝のパラ・リヴァイアサンのメッセージが映っている。
「ふざけやがって！！！！！！！」と、稲森が言おうとすると、声に出して先に言ったのは、飯星だった。
「お前達、私より先に言うなよ、誰の指示だ。」と、なぎさが言うと、「私に決まってるだろ？一番目の妹。」と、伝子がなぎさの顎を撫でて言った。
「臭いなあ。芝居するんだったら、福本に習えよ、大文字。」と、横から筒井が言った。
目を白黒している柊に、奈良が「気にしなくていいよ。」と、そっと小声で言った。
「hardworking peopleって、勤勉民族って意味ですか？日本人を揶揄している？」と、青山が尋ねた。
「日本人のくせに、ね。それはまあ、私のカンだが。さて、アナグラムの『和棕櫚 統計（わしゅろ とうけい）』だが、ダーリンに寄ると、『敬老と手話』だそうだ。」
「おねえさま。手話の日ってのが9月23日にあるけど、敬老の日は9月15日だわ。」と、あつこが言った。
「厄介だな。何かトラップがあるのかな？外国人だったら、9月に祝日が2回あることは知らなくておかしくはないが。」と、夏目警視正が言った。
「敬老の日は過ぎている。田坂達からプレゼントを頂いた。ありがとう。手話の日であり、秋分の日である9月23日が本番で、9月15日に何か仕掛けたぞ、って自慢しているのではないですかね、大文字さん。」
入って来た天童が言った。
「よし。草薙。両日に関係あるイベントを調べてみろ。分からなければ、秋分の日の分だけでもいい。」と、理事官は言った。
「9月23日なら、後3日間猶予がある。各自で訓練しよう。」と、伝子は解散させた。
午後5時。伝子のマンション。
EITO専用のPCが起動し、ディスプレイが作動した。
慌てて、高遠は伝子を呼んだ。
「お待たせしました、アンバサダー。1つだけ共通するイベントがありました。『皇居周りのマラソン』です。詰まり、天童師範が言われた通り、9月15日のイベントの際に、何かどこかに仕掛けられた可能性があります。異例ですが、山並に情報提供を打診するように夏目警視正が警視庁から『目安箱』に投稿するそうです。」
「まだなら、一言足して下さい。『伝子のお願い』、と。」
伝子の言葉に草薙は苦笑して、「了解しました。」と応え、ディスプレイは消えた。
「悪い子ね。『惚れた弱み』に付け込むなんて。」と綾子が言い、「アンタの子だからな。」と、伝子は開き直った。
「何ですってえ？」
取っ組み合いになりそうな2人を藤井と高遠が引き離した。
そこへ、『時の氏神』山村編集長が現れた。
「何か・・・焦げてる。」
翌日。午前9時。EITO東京本部。会議室。
「先ほど、皇居警察から警視庁宛に返信があった。久保田管理官。」
マルチディスプレイに久保田管理官が映った。
「念の為、皇居マラソン関係者、白バイ隊などに9月15日に異変が無かったかを打診していた。驚くべきことに、その日、沿道で応援していたとみられる子供から、交通警察の警察官に手渡された封筒があった。中の紙片は、何かの地図のようだが、簡単すぎてよく分からない。子供が届けたことから、子供の悪戯書きと思っていたそうだ。そして、白バイ隊にも、同様のことが起きていた。」
「詰まり、子供が、紙片の入った封筒を届けた。中は何かの地図、ですか。」と伝子は尋ねた。
「うむ。2枚の紙片のコピーがこれだ。」
マルチディスプレイに2枚の紙片が映し出された。
「似ている。でも、微妙に違うな。」と、筒井は言った。
「その通りだ。今回の『ヒント』は、手が混んでいる。そこで、夏目リサーチに分析を依頼した。」
え？と皆、夏目を見た。
「あのマッチングシステムは、元々科捜研の分析の補助の為に開発された。筆跡鑑定も文書解析も出来る。『宝島』の場所は、案外簡単に割り出せるのかも知れない。」と、夏目警視正は言った。
その時、伝子のスマホに電話があった。
伝子は、すぐにスピーカーをオンにした。
「麻生島副総理は、昨夜、親族の法事に出掛けた後、行方を絶ったの。こんな時に・・・胸騒ぎがするわ。」
「了解しました。総理には、早乙女さん達がついているのですね。」
「ええ。」
「渡さん、麻生島さんのDDバッジは？」
「・・・ご自宅で点滅しています。」
「身に着けておられないのね。」
DDバッジは、元々は陸自バッジという『避難活動用』のバッジだったが、伝子の周囲の人物が度々危険な目に遭うことから、常時身に着けている。総理も都知事も、そして、麻生島も身に着けていた筈だが・・・。身に着けていないと、追跡は不可能だ。
翌日。午前7時。伝子のマンション。
EITO専用のPCが動いた。
「大文字君。敵のバトル指定は、北の丸公園だ。明日のマラソンは、既に中止を申請してある。そして、日比谷公園が・・・。」
9月23日。午前11時。北の丸公園。駐車場の案内看板の前。
黒装束忍者の集団の中に、白い装束の忍者がいた。
「お前がリーダーか。分かり易いな。」と、なぎさが言うと、「コスチュームの中は美人かな？」と、リーダーは応えた。
「案外、『マスク美人』で、ひんむくとガッカリかもな。」と、なぎさは言った。
「ひんむいて欲しいのか？」「出来るものならな。私は、粗品が嫌いだ。好みはウルサイ。」
敵は、二本差しの上に背中に刀を背負っている。こういう場合、最中の刀は『予備』に過ぎない。メインの刀と擦れ合うからだ。エマージェンシーガールズは、予め、バトルスティックとバトルロッドを用意していた。
周囲に散ると、田坂率いる弓矢隊が、矢の先に胡椒丸をつがえて発射した。
胡椒丸とは、胡椒や台所調味料を捏ねた丸薬で、命中した周囲に拡散、敵の目や鼻孔に入り込み、戦意を落す。
一方、筒井率いるEITOガーディアンズもホバーバイクで胡椒ガンで胡椒弾を撃った。
胡椒弾とは、胡椒丸の小型化したものである。
ホバーバイクとは、民間会社が開発、自衛隊か警察で活躍する予定だった『宙に浮く場バイク』だが、双方とも不採用となったので、EITOで採用、改造して運搬もしくは戦闘に使用している。陸送の代わりの空輸車両という名目だ。戦闘は「ついで」である。
今回の忍者は、那珂国人の軍隊経験者に違いなく、闇バイトの臨時採用の日本人とは違う。
忍者衣装と日本刀の購入は、闇サイトハンターこと山並が嗅ぎつけていた。
今回のバトルの場所や時間は、紙片の解析を夏目リサーチが見事にやってのけた。
正午。
忍者達は、秋空を地面から眺めていた。
新庄珠恵こと結城たまきが長波ホイッスルを吹いた。
長波ホイッスルとは、犬笛に似たサイレントホイッスルである。
主に『作戦終了』を、控えている『かたづけ隊』に報せる道具として使っている。
EITOは警察ではない。懲らしめたり、私人逮捕は出来ても公人逮捕や手錠などは出来ない。
伝子の指導で、逃亡の恐れのある者は、『指手錠』をすることになっている。
両手を後ろ手にし、親指同士に輪ゴムをかけるだけである。
間もなく、片づけ隊を率いた、愛宕警部、西部警部補、橋爪警部補がやってきた。
「副隊長。総理や秘書は無事です。あちらにも、くノ一が来たそうですが。」と、西部警部補が言い、「今朝、守谷隊長率いるSATが救出した麻生島副総理は、念の為、健診するそうです。」と、橋爪警部補が言った。
連行されようとする連中の中でリーダーが、「よく分かったな。時間も場所も作戦も。」と言った。
すると、オスプレイが近づいて来た。
「北の丸公園は、皇居から11時の方向。そして、バトルなら、午前11時開始。一方、日比谷公園は5時の方向。詰まり、監禁に移送するなら、午前5時。どうだ、参ったか。」と、伝子の声がオスプレイのスピーカーから聞こえた。
「聞こえた？じゃ、後は警察で、ね。」と、愛宕はリーダーを促した。
「さ、帰るぞ、あつこ、みちる。おねえさまが待ってる。」と、なぎさは、通信機でもあるイヤリングに囁いた。
午後7時。伝子のマンション。
「今夜は、棒々鶏だよ。どうしたの？伝子。」
「ああ。相手の『焦り』を感じてね。今回のバトル。ラストバトルは近いのかも知れない。」
久々の2人きりの夕食だったが、しんみりした。
―完―
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子（だいもんじでんこ）・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
橘なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。ロバートと婚約してから、姓を戻している。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕[白藤]みちる・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。あつこと警察学校同期。警視庁丸髷署からのEITO出向。警部補。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。
橋爪警部補・・・『片づけ隊』を手伝っている。
西部警部補・・・『片づけ隊』を手伝っている。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO東京本部副司令官。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。
中島[増田]はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。見合いしたMAITOの中島と事実婚をしていたが結婚した。
馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。
高崎[馬越]友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音（しずね）・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
青山[江南]美由紀・・・､元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
伊知地満子一曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。
馬場力（ちから）3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁警部。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
柊安江・・・元マラソンランナー、元やり投げ選手。EITOに就職。
新庄珠恵・・・元結城たまき警部。結婚と、『身バレ』の可能性から、名字だけでなく、下の名前も改名。警視庁は退職して、EITOに再就職。
藤井康子・・・伝子マンションの区切り隣に住む。元料理教室経営者。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士。
市橋早苗・・・内閣総理代臣。
麻生島太郎・・・移民党副総裁。副総理。
守谷哲夫・・・SAT隊長。
天童晃・・・EITO東京本部師範。
西部[早乙女]藍・・・元白バイ隊。今はEITO非正規職員。
工藤由香・・・元白バイ隊。今はEITO非正規職員。
山並郁夫・・・闇サイトハンターと名乗っている。EITO協力者。
=================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前1時。Base Bookにパラ・リヴァイアサンから、挑戦状が届いた。
『和棕櫚 統計』
画面の下の方に、次の英文が見えた。
"hardworking people"
午前9時。EITO東京本部。会議室。
マルチディスプレイに、今朝のパラ・リヴァイアサンのメッセージが映っている。
「ふざけやがって！！！！！！！」と、稲森が言おうとすると、声に出して先に言ったのは、飯星だった。
「お前達、私より先に言うなよ、誰の指示だ。」と、なぎさが言うと、「私に決まってるだろ？一番目の妹。」と、伝子がなぎさの顎を撫でて言った。
「臭いなあ。芝居するんだったら、福本に習えよ、大文字。」と、横から筒井が言った。
目を白黒している柊に、奈良が「気にしなくていいよ。」と、そっと小声で言った。
「hardworking peopleって、勤勉民族って意味ですか？日本人を揶揄している？」と、青山が尋ねた。
「日本人のくせに、ね。それはまあ、私のカンだが。さて、アナグラムの『和棕櫚 統計（わしゅろ とうけい）』だが、ダーリンに寄ると、『敬老と手話』だそうだ。」
「おねえさま。手話の日ってのが9月23日にあるけど、敬老の日は9月15日だわ。」と、あつこが言った。
「厄介だな。何かトラップがあるのかな？外国人だったら、9月に祝日が2回あることは知らなくておかしくはないが。」と、夏目警視正が言った。
「敬老の日は過ぎている。田坂達からプレゼントを頂いた。ありがとう。手話の日であり、秋分の日である9月23日が本番で、9月15日に何か仕掛けたぞ、って自慢しているのではないですかね、大文字さん。」
入って来た天童が言った。
「よし。草薙。両日に関係あるイベントを調べてみろ。分からなければ、秋分の日の分だけでもいい。」と、理事官は言った。
「9月23日なら、後3日間猶予がある。各自で訓練しよう。」と、伝子は解散させた。
午後5時。伝子のマンション。
EITO専用のPCが起動し、ディスプレイが作動した。
慌てて、高遠は伝子を呼んだ。
「お待たせしました、アンバサダー。1つだけ共通するイベントがありました。『皇居周りのマラソン』です。詰まり、天童師範が言われた通り、9月15日のイベントの際に、何かどこかに仕掛けられた可能性があります。異例ですが、山並に情報提供を打診するように夏目警視正が警視庁から『目安箱』に投稿するそうです。」
「まだなら、一言足して下さい。『伝子のお願い』、と。」
伝子の言葉に草薙は苦笑して、「了解しました。」と応え、ディスプレイは消えた。
「悪い子ね。『惚れた弱み』に付け込むなんて。」と綾子が言い、「アンタの子だからな。」と、伝子は開き直った。
「何ですってえ？」
取っ組み合いになりそうな2人を藤井と高遠が引き離した。
そこへ、『時の氏神』山村編集長が現れた。
「何か・・・焦げてる。」
翌日。午前9時。EITO東京本部。会議室。
「先ほど、皇居警察から警視庁宛に返信があった。久保田管理官。」
マルチディスプレイに久保田管理官が映った。
「念の為、皇居マラソン関係者、白バイ隊などに9月15日に異変が無かったかを打診していた。驚くべきことに、その日、沿道で応援していたとみられる子供から、交通警察の警察官に手渡された封筒があった。中の紙片は、何かの地図のようだが、簡単すぎてよく分からない。子供が届けたことから、子供の悪戯書きと思っていたそうだ。そして、白バイ隊にも、同様のことが起きていた。」
「詰まり、子供が、紙片の入った封筒を届けた。中は何かの地図、ですか。」と伝子は尋ねた。
「うむ。2枚の紙片のコピーがこれだ。」
マルチディスプレイに2枚の紙片が映し出された。
「似ている。でも、微妙に違うな。」と、筒井は言った。
「その通りだ。今回の『ヒント』は、手が混んでいる。そこで、夏目リサーチに分析を依頼した。」
え？と皆、夏目を見た。
「あのマッチングシステムは、元々科捜研の分析の補助の為に開発された。筆跡鑑定も文書解析も出来る。『宝島』の場所は、案外簡単に割り出せるのかも知れない。」と、夏目警視正は言った。
その時、伝子のスマホに電話があった。
伝子は、すぐにスピーカーをオンにした。
「麻生島副総理は、昨夜、親族の法事に出掛けた後、行方を絶ったの。こんな時に・・・胸騒ぎがするわ。」
「了解しました。総理には、早乙女さん達がついているのですね。」
「ええ。」
「渡さん、麻生島さんのDDバッジは？」
「・・・ご自宅で点滅しています。」
「身に着けておられないのね。」
DDバッジは、元々は陸自バッジという『避難活動用』のバッジだったが、伝子の周囲の人物が度々危険な目に遭うことから、常時身に着けている。総理も都知事も、そして、麻生島も身に着けていた筈だが・・・。身に着けていないと、追跡は不可能だ。
翌日。午前7時。伝子のマンション。
EITO専用のPCが動いた。
「大文字君。敵のバトル指定は、北の丸公園だ。明日のマラソンは、既に中止を申請してある。そして、日比谷公園が・・・。」
9月23日。午前11時。北の丸公園。駐車場の案内看板の前。
黒装束忍者の集団の中に、白い装束の忍者がいた。
「お前がリーダーか。分かり易いな。」と、なぎさが言うと、「コスチュームの中は美人かな？」と、リーダーは応えた。
「案外、『マスク美人』で、ひんむくとガッカリかもな。」と、なぎさは言った。
「ひんむいて欲しいのか？」「出来るものならな。私は、粗品が嫌いだ。好みはウルサイ。」
敵は、二本差しの上に背中に刀を背負っている。こういう場合、最中の刀は『予備』に過ぎない。メインの刀と擦れ合うからだ。エマージェンシーガールズは、予め、バトルスティックとバトルロッドを用意していた。
周囲に散ると、田坂率いる弓矢隊が、矢の先に胡椒丸をつがえて発射した。
胡椒丸とは、胡椒や台所調味料を捏ねた丸薬で、命中した周囲に拡散、敵の目や鼻孔に入り込み、戦意を落す。
一方、筒井率いるEITOガーディアンズもホバーバイクで胡椒ガンで胡椒弾を撃った。
胡椒弾とは、胡椒丸の小型化したものである。
ホバーバイクとは、民間会社が開発、自衛隊か警察で活躍する予定だった『宙に浮く場バイク』だが、双方とも不採用となったので、EITOで採用、改造して運搬もしくは戦闘に使用している。陸送の代わりの空輸車両という名目だ。戦闘は「ついで」である。
今回の忍者は、那珂国人の軍隊経験者に違いなく、闇バイトの臨時採用の日本人とは違う。
忍者衣装と日本刀の購入は、闇サイトハンターこと山並が嗅ぎつけていた。
今回のバトルの場所や時間は、紙片の解析を夏目リサーチが見事にやってのけた。
正午。
忍者達は、秋空を地面から眺めていた。
新庄珠恵こと結城たまきが長波ホイッスルを吹いた。
長波ホイッスルとは、犬笛に似たサイレントホイッスルである。
主に『作戦終了』を、控えている『かたづけ隊』に報せる道具として使っている。
EITOは警察ではない。懲らしめたり、私人逮捕は出来ても公人逮捕や手錠などは出来ない。
伝子の指導で、逃亡の恐れのある者は、『指手錠』をすることになっている。
両手を後ろ手にし、親指同士に輪ゴムをかけるだけである。
間もなく、片づけ隊を率いた、愛宕警部、西部警部補、橋爪警部補がやってきた。
「副隊長。総理や秘書は無事です。あちらにも、くノ一が来たそうですが。」と、西部警部補が言い、「今朝、守谷隊長率いるSATが救出した麻生島副総理は、念の為、健診するそうです。」と、橋爪警部補が言った。
連行されようとする連中の中でリーダーが、「よく分かったな。時間も場所も作戦も。」と言った。
すると、オスプレイが近づいて来た。
「北の丸公園は、皇居から11時の方向。そして、バトルなら、午前11時開始。一方、日比谷公園は5時の方向。詰まり、監禁に移送するなら、午前5時。どうだ、参ったか。」と、伝子の声がオスプレイのスピーカーから聞こえた。
「聞こえた？じゃ、後は警察で、ね。」と、愛宕はリーダーを促した。
「さ、帰るぞ、あつこ、みちる。おねえさまが待ってる。」と、なぎさは、通信機でもあるイヤリングに囁いた。
午後7時。伝子のマンション。
「今夜は、棒々鶏だよ。どうしたの？伝子。」
「ああ。相手の『焦り』を感じてね。今回のバトル。ラストバトルは近いのかも知れない。」
久々の2人きりの夕食だったが、しんみりした。
―完―
