======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
橘なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。ロバートと婚約してから、姓を戻している。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕[白藤]みちる・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。あつこと警察学校同期。警視庁丸髷署からのEITO出向。警部補。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。
橋爪警部補・・・『片づけ隊』を手伝っている。
西部警部補・・・『片づけ隊』を手伝っている。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO東京本部副司令官。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。
中島[増田]はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。見合いしたMAITOの中島と事実婚をしていたが結婚した。
馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。
高崎[馬越]友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
青山[江南]美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁警部。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
柊安江・・・元マラソンランナー、元やり投げ選手。
新庄猛士・・・ホルン奏者。結城の見合い相手。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル支配人。
井関民恵・・・警視庁鑑識課井関権蔵の妻。井関五郎の母。
井関[新町]あかり・・・五郎と結婚、EITOを離れた。みちるの後輩で仲良し。
=================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前1時。Base Bookにパラ・リヴァイアサンから、挑戦状が届いた。
『こころ子供亡い』
画面の下の方に、次の英文が見えた。
“Do you understand,courage?"
午前9時。EITO東京本部。会議室。
伝子が生あくびを殺している。
「おねえさま。幾ら闘いの後だからって、おにいさまと『子作り』に励みすぎでは?」と、なぎさが言った。
「なぎさっち。言い過ぎ。例え事実でも。」と、みちるが言った。
「事実なの?おねえさま。少し休んで・・・。」と、あつこが言いかけると、「コントはもういい。原稿書き上げて、ふと気になったんでBase book開いて見たら、パラ・リヴァイアサンのが出てた。メールチェックしたら、自動送信で、そのメッセージが届いていた。学をたたき起こして、解析させた。答が出たのは、なぎさが迎えに来る直前だった。ギリギリで済みません、理事官。」
「いや・・・それで高遠君の解析結果は?やはりアナグラムなのかね?」
「はい。『こころ子供亡い』の解は、『泥ない子もここ』だそうです。アナグラムには違い無いが、『暗喩』ではないかと。ギリギリまで粘って調べて分かったのは、『どろんこフェス』です。今年は7月27日です。」
伝子の言葉に素早く検索した草薙は、「2025年7月27日。場所は、長野県信濃町。えええ?」と応えた。
「長野県信濃町に『メッセージ』を取りに来い、ってことかな?」と、筒井が言った。
「どろんこフェスって、確か田んぼを開放して、大人も子供もどろんこ遊びをするってやつ。だよね。草薙さん。」「ええ。そう書いてあります。」
「博物館に呼び出して、大きな公園でバトルってパターンか。わざわざ遠い所を指名するのは、分断作戦かな?」と渡が言った。
「隊長。7月27日は明後日、確か・・・。」と金森が言いかけ、「何故、結城の結婚式をパラ・リヴァイアサンが知ってる?」と、伝子は独りごちた。
「我々の分断だけじゃない。” courage”は『勇気』、詰まり、結城隊員のことだ。」
「隊長。結婚式は、別にいいです。長野には私が行きます。」
「行ったら、メッセージを伝えて、すぐ帰ってこい。」
「はい。」
午前10時。伝子のマンション。
仮眠から、目を覚ました高遠は、ブランチの用意をしながら、ふと考えた。
「まてよ?」
午前10時。長野県信濃町。
エマージェンシーガールズが、「どろんこフェス2025」の主催者事務所に訪れた。
「あのー。」
「ああ。エマージェンシーガールズさん?」と、写真を見ながら、係員は言った。
「この衣装の人が来たら、この手紙を渡してくれって。フェスに5万円も寄付してくれて。これ、渡す位でねえ。」
エマージェンシーガールズは、少し離れた所に駐車しているワゴン車に戻った。
「名前、聞かれた?」「いいえ。ユニフォームで判断したみたいです。」
エマージェンシーガールズのユニフォームを脱いだ、あかりは、手紙を開封し、紙片を取り出した。あかりは義母の民恵に紙片を見せた。
" How many thousands of yen?"
「何円ですか?って意味かしら?大文字さんに見せなさい。」
「はい、お義母さま。」あかりは、スマホで伝子のスマホにテレビ電話をかけた。
「その紙片を見せろ。」「はい、おねえさま。」
「よくやった、あかり。口頭で伝えると間違えるところだった。それは、『何万円ですか?』という意味だ。その文字が ” How many thousand yen?” ならば、『何千円ですか?』になる。」
伝子が満足そうに言うと、あかりは、事務所は手数料として5万円の寄付を受け取ったそうです。」と報告を追加した。
午前10時半。EITO東京本部。司令室。
「理事官。夏目さん、やはり、バトルの場所は新宿区にある『信濃町』です。結城をおびき出した理由はまだ分からないが、場所は間違いない。慶應義塾大学だ。『万円』に関する人が創始者だ。」
「あ、アンバサダー。福沢諭吉ですか?」と、草薙が言う前に河野が言った。
「あ。済みません。合格しなかったけど、受験したので、つい。」
「いいよ、河野さん。何らかの『時間稼ぎ』をする為に、直接指示しなかったんだ。草薙さん、『どろんこフェス2025』が終了するのは何時でした?」
「13時。午後1時です。」
「オスプレイでまっすぐ帰っても、小一時間はかかるな。」と、夏目は言った。
「草薙。慶應義塾大学信濃町キャンパスで何かイベントは?」
「あ。アイドルの握手会があります。午前10時から午後3時。」
「バトルが、その後からだとして・・・何時に?ヒントあったかな?」
「ヒントはあったよ。」と言って本郷が入って来た。
「『こころ子供亡い』・・・アナグラムとは言え、何故子供が死んでいるんだろう、って思ったんだ。理事官。『誤字』ですよ。わざと『ありなし』の『無い』じゃなくて『死亡』の『ない』にしたんです。詰まり、決戦は午後5時。」
「あ。5万円置いて行ったって、言ってましたね。」と、渡が口を挟んだ。
「なぎさ、聞いたか。まだ時間はある。先手を打つんだ。」
スピーカーから、なぎさの声が聞こえた。
「了解しました。おねえさま。」
午後5時。慶應義塾大学信濃町キャンパス。正門前。
エマージェンシーガールズの前に、バギーに乗った軍団がやってきた。
何故か黒いサングラスをして、白いスーツを着ている。
武器は、機関銃、拳銃、日本刀、棍棒。
背後から、バギーの車輪にシュータが刺さった。
シュータとは、うろこ形の手裏剣である。先端に痺れ薬が塗ってある。
軍団のリーダーらしき男が言った。
「背後から来るとは、卑怯な『正義の味方』だな。」
「おまいう。時間が曖昧だったのは、アイドルサイン会だけでなく、『人質を確保』する為だった。民音博物館に捕らわれていた人物なら解放したよ。」
まぎさの不敵な態度に危機感を覚えたリーダーは戦闘開始の合図を送ったが、既に発煙筒が転がされ、胡椒弾がばら撒かれていた。
怯んだ敵に、背後から弓矢隊の弓が容赦無く跳んで来て、ブーメランが宙を舞い、メダルカッターは敵の肘や頬を切った。
メダルカッターとは、メダルの外側にプロペラ状の刃が付いている武器で、シュータ同様、痺れ薬が塗ってある。
そして、空中からホバーバイクに乗った、EITOガーディアンズのフリーズガンによる冷凍弾、飛び出すとグミ状になる水を吐き出す水流弾が撃ち込まれた。
ホバーバイクとは、民間が開発し、世評の圧力で自衛隊や警察に採用されなかった『宙に浮くバイク』である。
更に、新しいタイプのホバーバイクに乗った稲森と柊が鞭で敵の機関銃を叩き落とした。
敵は四散し、逃げ回ったが、フォード・マスタングに乗って来た本郷がパチンコ・ガトリング砲を拳銃使用の敵に見舞った。
とうとう、日本刀・木刀・棍棒の白兵戦になった。
みちる率いる小隊は、ここぞとばかりに三節棍とトンファーで闘った。
他の者は、バトルスティックとバトルロッドで闘った。
バトルスティックは戦闘用の棒で、バトルロッドは、バトルスティックと違い3段変形する棒だ。
敵のリーダー、いや、『枝』は、己の無力さを思い知った。
みちるの三節棍、あつこのトンファー、青山のフルーレがリーダーを留めた。
「降参か?BBBレディースの親衛隊長新川君。バイト代が足りなくて闇バイトに走ったか。」なぎさは冷然と言い放った。
「どうして、それを?」
「EITOを舐めんなよ。」と、金森が睨んだ。
財前が、長波ホイッスルを吹いた。
長波ホイッスルとは、簡易通信機で、主に『作戦終了』を報せるサイレント・ホイッスルである。
警察官有志による『お助け隊』が警察官を引き連れ、逮捕連行にやってきた。
民音博物館の方から、あかりが新庄を連れてやってきた。
物陰を見付け、結城は新庄を連れていき、マスクを脱いで熱いキスをした。
「先輩もオンナだったか。」と、あかりが言うと、「知らなかったのか。」と、なぎさはあかりを軽く小突いた。
そこへ、お助け隊から離れた愛宕がやってきて、なぎさに言った。
「依田さんに、2人が利用したホテルを教えて貰い、調べたところ、盗聴器が仕掛けられていたそうです。ダブルブッキングが出てしまい、依田さんが他のホテルを紹介したんです。多分、その時に結城さんの名前を知ったんでしょう、あの『枝』は。」
「メンバーの名前が敵に知れたとなると・・・。」
その時、なぎさのイヤリングに伝子からの通信が入った。
エマージェンシーガールズのイヤリングは、半一方通信の通信機だ。
「おねえさまに、何か策があるらしいわ。じゃ、後はお願いします。」
「了解。」愛宕は連行している隊に合流した。
「なぎさっち。あかり。結城隊員に『お仕置き』が必要ね。」と、みちるが明るく言った。
「なぎさ。遅くなるけど、一旦帰還してくれって、ジョーンズに伝言が来てたわ。帰りましょう。こら、お前、クビ!!」と、最後の方は結城に向けてあつこは怒鳴った。
午後8時。EITO東京本部。会議室。
「諸君に紹介しよう。警視庁の出向を終了退職した、結城たまき警部に代わって、EITO東京本部に就職した、新庄珠恵隊員だ。結婚式は延期だが、これから新婚旅行だ。」
皆、驚いていたが、マルチディスプレイの向こうの高遠と本郷は微笑んでいた。
「白藤。虐めるなよ。」と、筒井が揶揄い、皆は爆笑した。
―完―
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
橘なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。ロバートと婚約してから、姓を戻している。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕[白藤]みちる・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。あつこと警察学校同期。警視庁丸髷署からのEITO出向。警部補。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。
橋爪警部補・・・『片づけ隊』を手伝っている。
西部警部補・・・『片づけ隊』を手伝っている。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO東京本部副司令官。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。
中島[増田]はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。見合いしたMAITOの中島と事実婚をしていたが結婚した。
馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。
高崎[馬越]友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
青山[江南]美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁警部。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
柊安江・・・元マラソンランナー、元やり投げ選手。
新庄猛士・・・ホルン奏者。結城の見合い相手。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル支配人。
井関民恵・・・警視庁鑑識課井関権蔵の妻。井関五郎の母。
井関[新町]あかり・・・五郎と結婚、EITOを離れた。みちるの後輩で仲良し。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前1時。Base Bookにパラ・リヴァイアサンから、挑戦状が届いた。
『こころ子供亡い』
画面の下の方に、次の英文が見えた。
“Do you understand,courage?"
午前9時。EITO東京本部。会議室。
伝子が生あくびを殺している。
「おねえさま。幾ら闘いの後だからって、おにいさまと『子作り』に励みすぎでは?」と、なぎさが言った。
「なぎさっち。言い過ぎ。例え事実でも。」と、みちるが言った。
「事実なの?おねえさま。少し休んで・・・。」と、あつこが言いかけると、「コントはもういい。原稿書き上げて、ふと気になったんでBase book開いて見たら、パラ・リヴァイアサンのが出てた。メールチェックしたら、自動送信で、そのメッセージが届いていた。学をたたき起こして、解析させた。答が出たのは、なぎさが迎えに来る直前だった。ギリギリで済みません、理事官。」
「いや・・・それで高遠君の解析結果は?やはりアナグラムなのかね?」
「はい。『こころ子供亡い』の解は、『泥ない子もここ』だそうです。アナグラムには違い無いが、『暗喩』ではないかと。ギリギリまで粘って調べて分かったのは、『どろんこフェス』です。今年は7月27日です。」
伝子の言葉に素早く検索した草薙は、「2025年7月27日。場所は、長野県信濃町。えええ?」と応えた。
「長野県信濃町に『メッセージ』を取りに来い、ってことかな?」と、筒井が言った。
「どろんこフェスって、確か田んぼを開放して、大人も子供もどろんこ遊びをするってやつ。だよね。草薙さん。」「ええ。そう書いてあります。」
「博物館に呼び出して、大きな公園でバトルってパターンか。わざわざ遠い所を指名するのは、分断作戦かな?」と渡が言った。
「隊長。7月27日は明後日、確か・・・。」と金森が言いかけ、「何故、結城の結婚式をパラ・リヴァイアサンが知ってる?」と、伝子は独りごちた。
「我々の分断だけじゃない。” courage”は『勇気』、詰まり、結城隊員のことだ。」
「隊長。結婚式は、別にいいです。長野には私が行きます。」
「行ったら、メッセージを伝えて、すぐ帰ってこい。」
「はい。」
午前10時。伝子のマンション。
仮眠から、目を覚ました高遠は、ブランチの用意をしながら、ふと考えた。
「まてよ?」
午前10時。長野県信濃町。
エマージェンシーガールズが、「どろんこフェス2025」の主催者事務所に訪れた。
「あのー。」
「ああ。エマージェンシーガールズさん?」と、写真を見ながら、係員は言った。
「この衣装の人が来たら、この手紙を渡してくれって。フェスに5万円も寄付してくれて。これ、渡す位でねえ。」
エマージェンシーガールズは、少し離れた所に駐車しているワゴン車に戻った。
「名前、聞かれた?」「いいえ。ユニフォームで判断したみたいです。」
エマージェンシーガールズのユニフォームを脱いだ、あかりは、手紙を開封し、紙片を取り出した。あかりは義母の民恵に紙片を見せた。
" How many thousands of yen?"
「何円ですか?って意味かしら?大文字さんに見せなさい。」
「はい、お義母さま。」あかりは、スマホで伝子のスマホにテレビ電話をかけた。
「その紙片を見せろ。」「はい、おねえさま。」
「よくやった、あかり。口頭で伝えると間違えるところだった。それは、『何万円ですか?』という意味だ。その文字が ” How many thousand yen?” ならば、『何千円ですか?』になる。」
伝子が満足そうに言うと、あかりは、事務所は手数料として5万円の寄付を受け取ったそうです。」と報告を追加した。
午前10時半。EITO東京本部。司令室。
「理事官。夏目さん、やはり、バトルの場所は新宿区にある『信濃町』です。結城をおびき出した理由はまだ分からないが、場所は間違いない。慶應義塾大学だ。『万円』に関する人が創始者だ。」
「あ、アンバサダー。福沢諭吉ですか?」と、草薙が言う前に河野が言った。
「あ。済みません。合格しなかったけど、受験したので、つい。」
「いいよ、河野さん。何らかの『時間稼ぎ』をする為に、直接指示しなかったんだ。草薙さん、『どろんこフェス2025』が終了するのは何時でした?」
「13時。午後1時です。」
「オスプレイでまっすぐ帰っても、小一時間はかかるな。」と、夏目は言った。
「草薙。慶應義塾大学信濃町キャンパスで何かイベントは?」
「あ。アイドルの握手会があります。午前10時から午後3時。」
「バトルが、その後からだとして・・・何時に?ヒントあったかな?」
「ヒントはあったよ。」と言って本郷が入って来た。
「『こころ子供亡い』・・・アナグラムとは言え、何故子供が死んでいるんだろう、って思ったんだ。理事官。『誤字』ですよ。わざと『ありなし』の『無い』じゃなくて『死亡』の『ない』にしたんです。詰まり、決戦は午後5時。」
「あ。5万円置いて行ったって、言ってましたね。」と、渡が口を挟んだ。
「なぎさ、聞いたか。まだ時間はある。先手を打つんだ。」
スピーカーから、なぎさの声が聞こえた。
「了解しました。おねえさま。」
午後5時。慶應義塾大学信濃町キャンパス。正門前。
エマージェンシーガールズの前に、バギーに乗った軍団がやってきた。
何故か黒いサングラスをして、白いスーツを着ている。
武器は、機関銃、拳銃、日本刀、棍棒。
背後から、バギーの車輪にシュータが刺さった。
シュータとは、うろこ形の手裏剣である。先端に痺れ薬が塗ってある。
軍団のリーダーらしき男が言った。
「背後から来るとは、卑怯な『正義の味方』だな。」
「おまいう。時間が曖昧だったのは、アイドルサイン会だけでなく、『人質を確保』する為だった。民音博物館に捕らわれていた人物なら解放したよ。」
まぎさの不敵な態度に危機感を覚えたリーダーは戦闘開始の合図を送ったが、既に発煙筒が転がされ、胡椒弾がばら撒かれていた。
怯んだ敵に、背後から弓矢隊の弓が容赦無く跳んで来て、ブーメランが宙を舞い、メダルカッターは敵の肘や頬を切った。
メダルカッターとは、メダルの外側にプロペラ状の刃が付いている武器で、シュータ同様、痺れ薬が塗ってある。
そして、空中からホバーバイクに乗った、EITOガーディアンズのフリーズガンによる冷凍弾、飛び出すとグミ状になる水を吐き出す水流弾が撃ち込まれた。
ホバーバイクとは、民間が開発し、世評の圧力で自衛隊や警察に採用されなかった『宙に浮くバイク』である。
更に、新しいタイプのホバーバイクに乗った稲森と柊が鞭で敵の機関銃を叩き落とした。
敵は四散し、逃げ回ったが、フォード・マスタングに乗って来た本郷がパチンコ・ガトリング砲を拳銃使用の敵に見舞った。
とうとう、日本刀・木刀・棍棒の白兵戦になった。
みちる率いる小隊は、ここぞとばかりに三節棍とトンファーで闘った。
他の者は、バトルスティックとバトルロッドで闘った。
バトルスティックは戦闘用の棒で、バトルロッドは、バトルスティックと違い3段変形する棒だ。
敵のリーダー、いや、『枝』は、己の無力さを思い知った。
みちるの三節棍、あつこのトンファー、青山のフルーレがリーダーを留めた。
「降参か?BBBレディースの親衛隊長新川君。バイト代が足りなくて闇バイトに走ったか。」なぎさは冷然と言い放った。
「どうして、それを?」
「EITOを舐めんなよ。」と、金森が睨んだ。
財前が、長波ホイッスルを吹いた。
長波ホイッスルとは、簡易通信機で、主に『作戦終了』を報せるサイレント・ホイッスルである。
警察官有志による『お助け隊』が警察官を引き連れ、逮捕連行にやってきた。
民音博物館の方から、あかりが新庄を連れてやってきた。
物陰を見付け、結城は新庄を連れていき、マスクを脱いで熱いキスをした。
「先輩もオンナだったか。」と、あかりが言うと、「知らなかったのか。」と、なぎさはあかりを軽く小突いた。
そこへ、お助け隊から離れた愛宕がやってきて、なぎさに言った。
「依田さんに、2人が利用したホテルを教えて貰い、調べたところ、盗聴器が仕掛けられていたそうです。ダブルブッキングが出てしまい、依田さんが他のホテルを紹介したんです。多分、その時に結城さんの名前を知ったんでしょう、あの『枝』は。」
「メンバーの名前が敵に知れたとなると・・・。」
その時、なぎさのイヤリングに伝子からの通信が入った。
エマージェンシーガールズのイヤリングは、半一方通信の通信機だ。
「おねえさまに、何か策があるらしいわ。じゃ、後はお願いします。」
「了解。」愛宕は連行している隊に合流した。
「なぎさっち。あかり。結城隊員に『お仕置き』が必要ね。」と、みちるが明るく言った。
「なぎさ。遅くなるけど、一旦帰還してくれって、ジョーンズに伝言が来てたわ。帰りましょう。こら、お前、クビ!!」と、最後の方は結城に向けてあつこは怒鳴った。
午後8時。EITO東京本部。会議室。
「諸君に紹介しよう。警視庁の出向を終了退職した、結城たまき警部に代わって、EITO東京本部に就職した、新庄珠恵隊員だ。結婚式は延期だが、これから新婚旅行だ。」
皆、驚いていたが、マルチディスプレイの向こうの高遠と本郷は微笑んでいた。
「白藤。虐めるなよ。」と、筒井が揶揄い、皆は爆笑した。
―完―

