======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
橘なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田誠・・・警視庁警部補。あつこと結婚してから、警視庁の『雑用係』的な仕事をしながら、あつこの事務仕事もやっている。自分では「スーパー主夫」と言っている。
久保田嘉三・・・誠の叔父。警視庁管理官。交渉案件があれば「交渉人」の仕事もする。EITO初代指揮官。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO東京本部副司令官。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。
中島[増田]はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。見合いしたMAITOの中島と事実婚をしていたが結婚した。
馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。
高崎[馬越]友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
青山[江南]美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁警部。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
柊安江・・・元マラソンランナー、元やり投げ選手。
藤井康子・・・伝子のマンションの仕切り隣の住人。モールに料理教室を出している。EITO準隊員。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士。
河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。
原田正三・・・元新宿署刑事。警視庁警部。警視庁からEITO出向。
本郷隼人・・・EITOシステム部長。EITO秘密基地管理部長。
=================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
3月20日。午後1時5分前。東京ドーム。
三塁側から、グレート・グリフォン側からの集団が現れた。
みな、ナチス軍みたい軍服を着ているが、少し違う。コスプレ衣装だろう。
一塁側から、エマージェンシーガールズが登場した。EITOガーディアンズは、ドームの外側に待機している。
GG集団のリーダーは言った。何故、リーダーか?服の色が違うから一目瞭然だ。
「そちらのリーダーは隊長か?」「いや、副隊長だ。」「隊長はいつ来る?」
「来ない。ご執心だな。ラブレターなら預かるぞ。尤も、受け取る訳がないが。それより、今回は『人形芸』が無かったようだが。」
「ボスはインフルエンザだ。」「あれ?前にインフルエンザだったって言っていたが、治っていなかったのか?」「あれは冗談だ。今回は本物だ。俺も『代打』の『枝』だ。」
「そうか。お大事に、と言っておこう。」
前日。3月19日。午前9時。EITO東京本部。会議室。
マルチディスプレイに久保田管理官が映った。
「警視庁のホームページ宛てのメールが届いた。自称グレート・グリフォンだ。河野君、画面に出してくれ。」
画面の隅にメールの内容が映った。
「『3月20日。午後1時。東京ドームで待つ』。まんまじゃないか。本物のジジイなら珍しい。」と馬場が言い、「いつもならRedで人形使って、黒子がしゃべるのにね。」と金森が言った。
「アナグラムを作る余裕が無かったことは事実ですね。」と、画面の隅に映った高遠が言った。
会議の時は、高遠も大文字伝子のマンションから参加している。
「草薙。明日は、東京ドームはイベントが無かった日なのか?」と理事官が尋ねると、「いえ、阿寒国のA-POPのライブが予定されていましたが、昨日中止が発表されています。」と、草薙は応えた。
「どこかからの圧力ですかね?」と渡が言い、「ジジイの圧力ね。」と、あつこが言った。
「あそこを使うとなると、この前と違い、闇バイトで釣られた学生じゃなく、本格的にバトルする積もりかもしれんぞ、大文字。」
「うむ。爆発物があるかもしれん。あつこも井関も心得ておいてくれ。」
「了解しました。」「了解。」
翻って、3月20日。午後1時1分前。東京ドーム。
なぎさの回想は、瞬く間に消えた。
銃火器の集団に加え、火炎放射器を持った軍団がジープに乗って現れたからだ。
「10秒前、9,8,7,6,5,4,3,2,1。」
エマージェンシーガールズが陣形を組むのとジジイ軍団が襲撃するのが同時だった。
火炎放射隊には、田坂率いるエマージェンシーガールズの弓矢隊がマセラティ1号で応戦した。
また、本郷が運転するマセラティ2号には、柊と稲森が火炎放射隊をけん制した。
EITOガーディアンズもホバーバイクで駆けつけた。ホバーバイクとは、『宙に浮くバイク』のことで、民間会社が開発、EITOが採用、改造して戦闘または運搬に利用している。
あつこのチームは、片方の手でブーメラン、もう片方で胡椒弾を投げた。胡椒弾とは、胡椒や台所調味料を原料とした丸薬で、飛散すると、目や口の粘膜を刺激する。
胡椒弾の情報は伝わっていたのか、敵は毒ガスマスクをしている。
胡椒弾を応用した胡椒ガンというものがあるが、闘いながら、なぎさは使用不可のサインを出した。
大空と仁礼、七尾は、バギーに乗って登場して肩に背負っていたシューターガトリング砲でシューターを撃った。シューターとは、うろこ形の手裏剣で、先端にしびれ薬が塗ってある。
新町あかりがEITOを勇退したので、シューターの変化球を投げる者がいなくなり、代わりに開発されたのがシューターガトリング砲である。バギーは、ドローンが組み込まれ取り、草薙がリモートで操作する。
残りの者は、バトルスティックと呼ばれる戦闘棒や、バトルスティックが3段変形するバトルロッドを駆使して闘う。
今回は、MAITOという救援は到着しない。
被災地(岩手の山火事)に救援に行っている為だ。
その代わり、SATが応援に駆けつけた。SAT白兵戦が得意な部隊だ。
約1時間になろうとしていた頃、ドームに仕掛けたEITOのカメラの様子を見ていた伝子は叫んだ。
「みんな、現場から30メートル以上離れて伏せろ!!」
皆は、インカムとイヤリングからの伝子の指示に従った。
エマージェンシーガールズのユニフォームには、通信装置であるインカムが装備しているが、エマージェンシーガールズは戦闘時非戦闘時を問わずイヤリングを耳に着けており、これも超小型通信機になっている。
GPSを利用したDDバッジの動きを渡が監視していて、伝子に合図したから、被害は少なかった。
DDバッジとは、元は陸自バッジと言い、遭難者救出の際に二次遭難しないために開発された。
DDと呼ばれていた、大文字伝子の関係者には皆配られ、誘拐された時などに活躍するバッジだ。
敵の軍団とエマージェンシーガールズが同じ位置に固まりつつあることを確認した伝子は、『爆発物』の『におい』を嗅いだのだ。
敵のリーダーである枝は、四散し、白煙を吐いた。
同時に敵の攻撃が停まった。
なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。
長波ホイッスルとは、犬笛に似たサイレントホイッスルで、通常『作戦終了』の合図に使う。オスプレイでキャッチした音波は、その合図を警視庁に通達、待機している警官隊、通称『片づけ隊』に警察無線で指示が渡る。
片づけ隊が逮捕連行に来たのと同時に、ホバーバイクで一旦オスプレイに引き返し、道具を持った井関五郎が、四散したものを回収していった。
あつこも回収を手伝った。
「おねえさま。ロケットペンダントが見つかったわ。後で分析します。」
午前11時半。EITO東京本部。会議室。
「今、入った報告では、ロケットには写真と共にミニSDが入っていたそうだ。自爆した時に放り投げたのだろう。渡辺副隊長。時限装置は無かったのだな。」と、夏目は確認した。」「はい。時間はドームの大きな時計で確認していたのだと思います。」
「おねえさま。何で爆発するって分かったのですか?」
「DDバッジの範囲が狭まったからですよ、予測したアンバサダーのカンが冴えていた。」と、渡が、なぎさに説明した。
「ヒントは、あの軍服だ。訓練された兵士がやってきた。恐らく那珂国人ではない。ヨーロッパの傭兵だ。実は、傭兵が動いていたことは、親切な奴がチクってくれていた。」
伝子が説明を加えると、「餅は餅屋、という訳だな。」と、理事官が大きく息を吐いた。
午後3時。伝子のマンション。
藤井が、料理教室で作った『かき餅』を持って来て、伝子と高遠はコーヒータイムにして、3人で食べていた。
突然、EITO用のPCが起動したので、かき餅を持ったまま3人は移動した。
井関が映っている。「何です?かき餅!!いいなあ。あ、今、科捜研から戻ってきました。夏目リサーチはまだ始まっていないので、科捜研で指紋等を調べると同時に写真を拡大、幸い警視庁の前科者データにありました。ロケットの中の人物は、府中刑務所に服役していた星野真由子、37歳。」
「服役していたって・・・出所したの?」と高遠が問うと、「今年1月まで服役。但し、出所したと言っても死体です。」
「殺されたのか、井関?」高遠と井関に伝子が割って入った。
「はい。被疑者と目される元看守は行方不明。それで、あの写真の裏側に貼り付いていたのは、真由子の娘、江威子。獄中出産でした。真由子には元陸自の夫、あ、事実婚ですね、元陸自の夫高橋洋次がいました。今DNA鑑定中ですが、集団のリーダーは高橋だろうと推測されます。最後に、ミニSDですが、隠し撮りしたらしい映像のURLが書かれたファイルがありました。何と、エロ映像の投稿サイトの投稿画像でした。サイトも規約で保存期間は三日。今日が三日目です。全く意外な隠し場所です。ダウンロードはしましたが、警視庁から提供を求めました。まだ保存中のようです。これが、内容です。」
映し出された映像は、無理矢理継ぎ接ぎした映像だった。性器丸出しのセックスシーンの合間に、黒子が人形を使ってしゃべるシーンで、くぐもっていない、生のグレート・グリフォンの声も聞こえる。そして、瞬間、黒子の素顔が見えた。
「お宝だね。幾らかな?」と、高遠が言い、「3億円・・・2兆円?」と藤井が答えた。
「テレビのバラエティーじゃないんだから。で、面取りは?」
「今夜、夏目リサーチで調査するようです。それから、高遠さん。メモらしきファイルもミニSDにありました。死を覚悟した人間は何でも出来るんですね。高橋洋次は、2月まで、ある病院の『癌病棟』にいて、行方不明です。」
「何が出来たんだ、井関。」伝子は苛立って言った。
「いじいじはじじ、そう書いてありました。」
高遠は、スケッチブックを取りだし、5分間ほど解いていた。
「出来た。『いじいじはじじ』は、『ジジイはジジイ』だ。」
「何、それ?おじいさんはいじいじしている?おじいさんはおじいさん?」
藤井が不思議そうにいうので、伝子は吹き出した。
「違うよ。『アナグラム』の一つを披露したんだ。確かに、一瞬見えた絵は、高齢者っぽく見えた。『アナグラム』を作っていたのは、他ならぬ高橋だったんだ。『幹』抜きの『枝』で挑戦したが、文字通り命がけの挑戦だった。」
「その通りです。あのロケット、実はダイヤモンドで特殊なコーティングをしています。」
「今日は、最終決戦の前夜祭、いや、前昼祭だったんだ。」
藤井、高遠、そして、画面の向こうの井関、夏目が、溜息をついた。
伝子は、写真立ての、息子おさむの写真を眺めた。
―完―
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
橘なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田誠・・・警視庁警部補。あつこと結婚してから、警視庁の『雑用係』的な仕事をしながら、あつこの事務仕事もやっている。自分では「スーパー主夫」と言っている。
久保田嘉三・・・誠の叔父。警視庁管理官。交渉案件があれば「交渉人」の仕事もする。EITO初代指揮官。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO東京本部副司令官。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。
中島[増田]はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。見合いしたMAITOの中島と事実婚をしていたが結婚した。
馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。
高崎[馬越]友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
青山[江南]美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁警部。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
柊安江・・・元マラソンランナー、元やり投げ選手。
藤井康子・・・伝子のマンションの仕切り隣の住人。モールに料理教室を出している。EITO準隊員。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士。
河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。
原田正三・・・元新宿署刑事。警視庁警部。警視庁からEITO出向。
本郷隼人・・・EITOシステム部長。EITO秘密基地管理部長。
=================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
3月20日。午後1時5分前。東京ドーム。
三塁側から、グレート・グリフォン側からの集団が現れた。
みな、ナチス軍みたい軍服を着ているが、少し違う。コスプレ衣装だろう。
一塁側から、エマージェンシーガールズが登場した。EITOガーディアンズは、ドームの外側に待機している。
GG集団のリーダーは言った。何故、リーダーか?服の色が違うから一目瞭然だ。
「そちらのリーダーは隊長か?」「いや、副隊長だ。」「隊長はいつ来る?」
「来ない。ご執心だな。ラブレターなら預かるぞ。尤も、受け取る訳がないが。それより、今回は『人形芸』が無かったようだが。」
「ボスはインフルエンザだ。」「あれ?前にインフルエンザだったって言っていたが、治っていなかったのか?」「あれは冗談だ。今回は本物だ。俺も『代打』の『枝』だ。」
「そうか。お大事に、と言っておこう。」
前日。3月19日。午前9時。EITO東京本部。会議室。
マルチディスプレイに久保田管理官が映った。
「警視庁のホームページ宛てのメールが届いた。自称グレート・グリフォンだ。河野君、画面に出してくれ。」
画面の隅にメールの内容が映った。
「『3月20日。午後1時。東京ドームで待つ』。まんまじゃないか。本物のジジイなら珍しい。」と馬場が言い、「いつもならRedで人形使って、黒子がしゃべるのにね。」と金森が言った。
「アナグラムを作る余裕が無かったことは事実ですね。」と、画面の隅に映った高遠が言った。
会議の時は、高遠も大文字伝子のマンションから参加している。
「草薙。明日は、東京ドームはイベントが無かった日なのか?」と理事官が尋ねると、「いえ、阿寒国のA-POPのライブが予定されていましたが、昨日中止が発表されています。」と、草薙は応えた。
「どこかからの圧力ですかね?」と渡が言い、「ジジイの圧力ね。」と、あつこが言った。
「あそこを使うとなると、この前と違い、闇バイトで釣られた学生じゃなく、本格的にバトルする積もりかもしれんぞ、大文字。」
「うむ。爆発物があるかもしれん。あつこも井関も心得ておいてくれ。」
「了解しました。」「了解。」
翻って、3月20日。午後1時1分前。東京ドーム。
なぎさの回想は、瞬く間に消えた。
銃火器の集団に加え、火炎放射器を持った軍団がジープに乗って現れたからだ。
「10秒前、9,8,7,6,5,4,3,2,1。」
エマージェンシーガールズが陣形を組むのとジジイ軍団が襲撃するのが同時だった。
火炎放射隊には、田坂率いるエマージェンシーガールズの弓矢隊がマセラティ1号で応戦した。
また、本郷が運転するマセラティ2号には、柊と稲森が火炎放射隊をけん制した。
EITOガーディアンズもホバーバイクで駆けつけた。ホバーバイクとは、『宙に浮くバイク』のことで、民間会社が開発、EITOが採用、改造して戦闘または運搬に利用している。
あつこのチームは、片方の手でブーメラン、もう片方で胡椒弾を投げた。胡椒弾とは、胡椒や台所調味料を原料とした丸薬で、飛散すると、目や口の粘膜を刺激する。
胡椒弾の情報は伝わっていたのか、敵は毒ガスマスクをしている。
胡椒弾を応用した胡椒ガンというものがあるが、闘いながら、なぎさは使用不可のサインを出した。
大空と仁礼、七尾は、バギーに乗って登場して肩に背負っていたシューターガトリング砲でシューターを撃った。シューターとは、うろこ形の手裏剣で、先端にしびれ薬が塗ってある。
新町あかりがEITOを勇退したので、シューターの変化球を投げる者がいなくなり、代わりに開発されたのがシューターガトリング砲である。バギーは、ドローンが組み込まれ取り、草薙がリモートで操作する。
残りの者は、バトルスティックと呼ばれる戦闘棒や、バトルスティックが3段変形するバトルロッドを駆使して闘う。
今回は、MAITOという救援は到着しない。
被災地(岩手の山火事)に救援に行っている為だ。
その代わり、SATが応援に駆けつけた。SAT白兵戦が得意な部隊だ。
約1時間になろうとしていた頃、ドームに仕掛けたEITOのカメラの様子を見ていた伝子は叫んだ。
「みんな、現場から30メートル以上離れて伏せろ!!」
皆は、インカムとイヤリングからの伝子の指示に従った。
エマージェンシーガールズのユニフォームには、通信装置であるインカムが装備しているが、エマージェンシーガールズは戦闘時非戦闘時を問わずイヤリングを耳に着けており、これも超小型通信機になっている。
GPSを利用したDDバッジの動きを渡が監視していて、伝子に合図したから、被害は少なかった。
DDバッジとは、元は陸自バッジと言い、遭難者救出の際に二次遭難しないために開発された。
DDと呼ばれていた、大文字伝子の関係者には皆配られ、誘拐された時などに活躍するバッジだ。
敵の軍団とエマージェンシーガールズが同じ位置に固まりつつあることを確認した伝子は、『爆発物』の『におい』を嗅いだのだ。
敵のリーダーである枝は、四散し、白煙を吐いた。
同時に敵の攻撃が停まった。
なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。
長波ホイッスルとは、犬笛に似たサイレントホイッスルで、通常『作戦終了』の合図に使う。オスプレイでキャッチした音波は、その合図を警視庁に通達、待機している警官隊、通称『片づけ隊』に警察無線で指示が渡る。
片づけ隊が逮捕連行に来たのと同時に、ホバーバイクで一旦オスプレイに引き返し、道具を持った井関五郎が、四散したものを回収していった。
あつこも回収を手伝った。
「おねえさま。ロケットペンダントが見つかったわ。後で分析します。」
午前11時半。EITO東京本部。会議室。
「今、入った報告では、ロケットには写真と共にミニSDが入っていたそうだ。自爆した時に放り投げたのだろう。渡辺副隊長。時限装置は無かったのだな。」と、夏目は確認した。」「はい。時間はドームの大きな時計で確認していたのだと思います。」
「おねえさま。何で爆発するって分かったのですか?」
「DDバッジの範囲が狭まったからですよ、予測したアンバサダーのカンが冴えていた。」と、渡が、なぎさに説明した。
「ヒントは、あの軍服だ。訓練された兵士がやってきた。恐らく那珂国人ではない。ヨーロッパの傭兵だ。実は、傭兵が動いていたことは、親切な奴がチクってくれていた。」
伝子が説明を加えると、「餅は餅屋、という訳だな。」と、理事官が大きく息を吐いた。
午後3時。伝子のマンション。
藤井が、料理教室で作った『かき餅』を持って来て、伝子と高遠はコーヒータイムにして、3人で食べていた。
突然、EITO用のPCが起動したので、かき餅を持ったまま3人は移動した。
井関が映っている。「何です?かき餅!!いいなあ。あ、今、科捜研から戻ってきました。夏目リサーチはまだ始まっていないので、科捜研で指紋等を調べると同時に写真を拡大、幸い警視庁の前科者データにありました。ロケットの中の人物は、府中刑務所に服役していた星野真由子、37歳。」
「服役していたって・・・出所したの?」と高遠が問うと、「今年1月まで服役。但し、出所したと言っても死体です。」
「殺されたのか、井関?」高遠と井関に伝子が割って入った。
「はい。被疑者と目される元看守は行方不明。それで、あの写真の裏側に貼り付いていたのは、真由子の娘、江威子。獄中出産でした。真由子には元陸自の夫、あ、事実婚ですね、元陸自の夫高橋洋次がいました。今DNA鑑定中ですが、集団のリーダーは高橋だろうと推測されます。最後に、ミニSDですが、隠し撮りしたらしい映像のURLが書かれたファイルがありました。何と、エロ映像の投稿サイトの投稿画像でした。サイトも規約で保存期間は三日。今日が三日目です。全く意外な隠し場所です。ダウンロードはしましたが、警視庁から提供を求めました。まだ保存中のようです。これが、内容です。」
映し出された映像は、無理矢理継ぎ接ぎした映像だった。性器丸出しのセックスシーンの合間に、黒子が人形を使ってしゃべるシーンで、くぐもっていない、生のグレート・グリフォンの声も聞こえる。そして、瞬間、黒子の素顔が見えた。
「お宝だね。幾らかな?」と、高遠が言い、「3億円・・・2兆円?」と藤井が答えた。
「テレビのバラエティーじゃないんだから。で、面取りは?」
「今夜、夏目リサーチで調査するようです。それから、高遠さん。メモらしきファイルもミニSDにありました。死を覚悟した人間は何でも出来るんですね。高橋洋次は、2月まで、ある病院の『癌病棟』にいて、行方不明です。」
「何が出来たんだ、井関。」伝子は苛立って言った。
「いじいじはじじ、そう書いてありました。」
高遠は、スケッチブックを取りだし、5分間ほど解いていた。
「出来た。『いじいじはじじ』は、『ジジイはジジイ』だ。」
「何、それ?おじいさんはいじいじしている?おじいさんはおじいさん?」
藤井が不思議そうにいうので、伝子は吹き出した。
「違うよ。『アナグラム』の一つを披露したんだ。確かに、一瞬見えた絵は、高齢者っぽく見えた。『アナグラム』を作っていたのは、他ならぬ高橋だったんだ。『幹』抜きの『枝』で挑戦したが、文字通り命がけの挑戦だった。」
「その通りです。あのロケット、実はダイヤモンドで特殊なコーティングをしています。」
「今日は、最終決戦の前夜祭、いや、前昼祭だったんだ。」
藤井、高遠、そして、画面の向こうの井関、夏目が、溜息をついた。
伝子は、写真立ての、息子おさむの写真を眺めた。
―完―

