======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
久保田嘉三管理官・・・EITO前司令官。警察とEITOのパイプ役もするが、『交渉人』が必要な場合は、柴田管理官と交替で交渉人も行う。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。
河野事務官・・・警視庁から出向の事務官。警察、自衛隊、都庁などの連絡も受け持つ。
本郷隼人・・・EITOシステム部課長。大蔵の右腕として開発担当。普段はEITO秘密基地に勤務。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
江南(えなみ)美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。
西部(早乙女)愛・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向だったが退職。EITO準隊員。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。
筒井隆昭警部・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
原田正三警部・・・元新宿風俗担当刑事。戦闘の記録及び隠しカメラ検索を担当。
芦屋三美・・・芦屋グループ総帥。EITOオーナー。
みゆき出版社編集長山村美佐男・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。
藤井康子・・・大文字家と仕切り隣の住人。モールで料理教室を開いている。EITO準隊員。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。
真中瞳・・・池上病院看護師長。
真中志津子・・・池上病院総看護師長。
大文字おさむ・・・伝子と学の息子。
=================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
正午。伝子のマンション。
ニュースを見ながら食事をしていた高遠は、食べ物を吐き出した。
「どうしたの、婿殿。なにか当たった?食あたりの薬、あったわよね。」
驚いて、介抱しようとした綾子は、高遠の箸の先にテレビがあることを確認した。
ニュースのアナウンサーから画面が切り替わった。
Redに載せた『宣戦布告』が映っている。
[お見合いパーティー第二回
日時:明日午前11時。
場所:マルビル。
参加者:有限会社ドリフト・アイス有志の男性。
EITO東京本部。大文字伝子。
観覧者:EITO東京本部の男性及び女性。
来賓:麻生島副総理。
主宰:ドリフト・アイス
]
綾子は、失神した。藤井が、慌てて入って来た。
藤井と高遠は、急いで綾子を予備の部屋に運んだ。
高遠は、食事しないまま、EITO用のPCを起動した。
「今、呼びだそうとしていたところだ。かあさんは、どうしてる?」
伝子の問いに、「失神した。今、藤井さんが介抱している。」と、高遠が応えると、「・・・筒井が迎えに行く。池上病院に連れて行こう。」と、伝子は指示した。
午後1時。EITO東京本部。会議室。
今日は、午前と午後に分けて、シミュレーションを練りながら、ブレーンストーミングをしていた。
「正式な2回戦だ。やはり、今まで以上に『気の短い幹』のようだ、ドリフト・アイスは。」と、伝子は溜息をついた。
「君の名前をあからさまに出すとはな。以前、大文字伝子という名前の人が、人違いで亡くなった。確か東京には、アンバサダーの大文字伝子にはもう1人いた筈だが。」と、理事官が言うと、「改名して貰いました。仕事上で通称を使う場合はありますが、戸籍上は、東京では、おねえさま以外はいません。実は、久保田の伯父様の説諭が聞かないので、副総監の叔父に頼みました。命が大事だと。1年間すっと監視や護衛するのは、不可能なので、と。最終的に叔父は土下座をしてお願いしたそうです。」と、あつこが説明した。
「問題は、あからさまに名指ししたことで、マスコミが駆けつけるかも知れないことです。」と、なぎさは言った。
「一応、マルビル、詰まり、丸の内ビルのテナントの会社や店舗には、緊急事態ということで、待避をお願いしましたが、既に総理から手を回してくれたようです。今回は副総理も狙われているようだし、既にSP隊と、早乙女準隊員、工藤隊員を副総理周辺に配置しました。」と、夏目警視正は言った。
「後は、どう戦闘態勢を取るか、ですね。」と、なぎさが言おうしたら、高遠に先を越された。
「目眩ましを作りましょう。」今まで黙っていた本郷が口を開いた。
午後3時。池上病院。病室。
点滴が終わり、起き上がる綾子。
気がついた、筒井がナースコールをした。
看護師長の真中瞳がやって来た。
看護師に片付けを指示すると、真中は筒井と共に手術室に向かった。
真中が、『手術中』のランプを消し、秘密の通路を抜けると、廊下を渡って筒井と綾子は池上家に侵入?した。
そこには、総看護師長の真中志津子が待っていた。
「その子は、まさか・・・。」と、綾子は言った。
「また気絶しないでね、あなたの孫のおさむ君よ。」
驚いている綾子に、筒井は経緯を説明した。
「じゃ、筒井君。敵以外は、敵と世間以外は皆,知ったことになるのね、おさむのこと。」
「そうです。大文字は、それだけ、今回の闘争での覚悟を決めているんです。また、前線にも立つかも知れない。見て下さい。この顔を。まるでもう何もかも分かっているみたいな顔だ。」筒井が言うと、「おさむ君は、あまり泣かない赤ちゃんでした。ひょっとしたら、言葉を話せなくなる病気かと院長が疑った程です。」と志津子は言った。
「無駄な泣き方は迷惑だから、って、言葉を話せたら言いそうだ。」と、筒井が笑い、皆は笑った。
綾子は、泣きながら、皆に感謝の意を述べた。
「時期が来るまで、ここで保護して貰うしかないのね。神様と女神様の子供だから。」
翌日。午前11時。丸の内ビル。
敵集団が到着したとき、プロジェクションマップが、ビルの壁面に用意されていた。
プロジェクションマッピングとは、プロジェクタ等の映写機器を用いて、立体物にCGなどの映像を投影する技術である。
本郷は、東京駅にプロジェクションマッピングをした会社に依頼して、原田が用意した映像で表示映像を作成して貰っていた。原田は、草薙、渡、河野に助けられて徹夜の作業をした。
「大文字伝子は、どいつだ!」リーダー格の男が言った。
「私だ!」と日向が言った。
「私だ!」と伊地知が言った。
「私だ!」と大空が言った。
そして、壁面には映像が映し出された。
「エマージェンシーガール1号!」
「エマージェンシーガール2号!」
「エマージェンシーガール3号!」
「エマージェンシーガール4号!」
「エマージェンシーガール5号!」
「エマージェンシーガール6号!」
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人を呼ぶ。悪を倒せと我らを呼ぶ。我ら、EITOエンジェルズ!満を持して。」
「ええいい、もういい!やっちまえ!!」
集団は、完全に気迫負けしていた。
そして、禁を破って潜り込んだマスコミや一般人は、まるで『東栄』特撮映画を観るように魅入っていた。
エマージェンシーガールズは、機関銃や拳銃を持った相手に、胡椒弾を投げた。ペッパーガンで使用している弾よりはずっと大きい。胡椒弾とは、胡椒や台所用調味料を混ぜた丸薬で出来た弾で、鼻孔が猛烈に刺激され、まともに銃器を持てなくなった集団は、最早、何人いてもエマージェンシーガールズの敵では無かった。
エマージェンシーガールズは敵の拳銃や機関銃をバトルスティックで跳ね飛ばし、バトルスティックとバトルロッドで闘った。
バトルロッドは、単なるチタン製の棒だが、バトルスティックは、バトルロッドと違い、3段変形出来る仕様になっている。
敵の人数は、ざっと500人。だが、『今日の分』に違い無い。なぎさは、そう感じながら、曇り空を見上げて寝そべってる敵の集団を見ながら、長波ホイッスルを吹いた。
長波ホイッスルとは、犬笛に似た通信機で、通常の大人に聞こえない。
人間の可聴域は20~2万 Hzと言われ、対して犬の可聴域は40~6万5千 Hzと言われている。
『犬笛』とは、犬の可聴域の広さを応用した道具であり、人間には聞き取れない超音波を発することが出来る。
ペットの飼い主自身が聞き取りやすい『サイレント』でないペット用犬笛も市販されている。
その犬笛の様に、『特殊音波』を使った通信機が、通称『長波ホイッスル』。主に、待機している警官隊への連絡に使う。EITOは、対テロ組織だが、民間企業であり、例え警察や自衛隊の『OB』でも、拳銃等の携帯は許されていない。
特殊な武器と知恵で闘っている。
なぎさが長波ホイッスルを吹いたので、愛宕が率いる、通称『片づけ隊』と呼ばれる警官隊が逮捕連行しに来た。EITOは、逮捕は出来ても、そこまでで、連行も取り調べも出来ないのだ。
「なぎさ。麻生副総理は守った、と早乙女、工藤から連絡が入った。今日は直帰してくれ。」と、なぎさのインカムに伝子の指示が入った。
午後3時。伝子のマンション。
「私は、足手まといなのね。」と綾子が言った。
「その通りだ。」と、伝子が言い、「ストレート過ぎるよ、伝子。」と高遠は言った。
「それでも、敢えてバラしたのね。」と、仕切り隣の藤井と、芦屋三美と山村編集長が言った。
「高遠ちゃん。肩の荷、降りた?」と山村が言い、「いいPR映画が出来たよ。」と、三美が言った。
「鯛焼き、食べましょう。料理教室の余り物で悪いけど。」と、藤井が言うと、皆黙って口にした。
「上手い!」と言った山村は口がアンコだらけだった。
暫く笑い声は途絶えなかった。
―完―
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
久保田嘉三管理官・・・EITO前司令官。警察とEITOのパイプ役もするが、『交渉人』が必要な場合は、柴田管理官と交替で交渉人も行う。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。
河野事務官・・・警視庁から出向の事務官。警察、自衛隊、都庁などの連絡も受け持つ。
本郷隼人・・・EITOシステム部課長。大蔵の右腕として開発担当。普段はEITO秘密基地に勤務。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
江南(えなみ)美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。
西部(早乙女)愛・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向だったが退職。EITO準隊員。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。
筒井隆昭警部・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
原田正三警部・・・元新宿風俗担当刑事。戦闘の記録及び隠しカメラ検索を担当。
芦屋三美・・・芦屋グループ総帥。EITOオーナー。
みゆき出版社編集長山村美佐男・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。
藤井康子・・・大文字家と仕切り隣の住人。モールで料理教室を開いている。EITO準隊員。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。
真中瞳・・・池上病院看護師長。
真中志津子・・・池上病院総看護師長。
大文字おさむ・・・伝子と学の息子。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
正午。伝子のマンション。
ニュースを見ながら食事をしていた高遠は、食べ物を吐き出した。
「どうしたの、婿殿。なにか当たった?食あたりの薬、あったわよね。」
驚いて、介抱しようとした綾子は、高遠の箸の先にテレビがあることを確認した。
ニュースのアナウンサーから画面が切り替わった。
Redに載せた『宣戦布告』が映っている。
[お見合いパーティー第二回
日時:明日午前11時。
場所:マルビル。
参加者:有限会社ドリフト・アイス有志の男性。
EITO東京本部。大文字伝子。
観覧者:EITO東京本部の男性及び女性。
来賓:麻生島副総理。
主宰:ドリフト・アイス
]
綾子は、失神した。藤井が、慌てて入って来た。
藤井と高遠は、急いで綾子を予備の部屋に運んだ。
高遠は、食事しないまま、EITO用のPCを起動した。
「今、呼びだそうとしていたところだ。かあさんは、どうしてる?」
伝子の問いに、「失神した。今、藤井さんが介抱している。」と、高遠が応えると、「・・・筒井が迎えに行く。池上病院に連れて行こう。」と、伝子は指示した。
午後1時。EITO東京本部。会議室。
今日は、午前と午後に分けて、シミュレーションを練りながら、ブレーンストーミングをしていた。
「正式な2回戦だ。やはり、今まで以上に『気の短い幹』のようだ、ドリフト・アイスは。」と、伝子は溜息をついた。
「君の名前をあからさまに出すとはな。以前、大文字伝子という名前の人が、人違いで亡くなった。確か東京には、アンバサダーの大文字伝子にはもう1人いた筈だが。」と、理事官が言うと、「改名して貰いました。仕事上で通称を使う場合はありますが、戸籍上は、東京では、おねえさま以外はいません。実は、久保田の伯父様の説諭が聞かないので、副総監の叔父に頼みました。命が大事だと。1年間すっと監視や護衛するのは、不可能なので、と。最終的に叔父は土下座をしてお願いしたそうです。」と、あつこが説明した。
「問題は、あからさまに名指ししたことで、マスコミが駆けつけるかも知れないことです。」と、なぎさは言った。
「一応、マルビル、詰まり、丸の内ビルのテナントの会社や店舗には、緊急事態ということで、待避をお願いしましたが、既に総理から手を回してくれたようです。今回は副総理も狙われているようだし、既にSP隊と、早乙女準隊員、工藤隊員を副総理周辺に配置しました。」と、夏目警視正は言った。
「後は、どう戦闘態勢を取るか、ですね。」と、なぎさが言おうしたら、高遠に先を越された。
「目眩ましを作りましょう。」今まで黙っていた本郷が口を開いた。
午後3時。池上病院。病室。
点滴が終わり、起き上がる綾子。
気がついた、筒井がナースコールをした。
看護師長の真中瞳がやって来た。
看護師に片付けを指示すると、真中は筒井と共に手術室に向かった。
真中が、『手術中』のランプを消し、秘密の通路を抜けると、廊下を渡って筒井と綾子は池上家に侵入?した。
そこには、総看護師長の真中志津子が待っていた。
「その子は、まさか・・・。」と、綾子は言った。
「また気絶しないでね、あなたの孫のおさむ君よ。」
驚いている綾子に、筒井は経緯を説明した。
「じゃ、筒井君。敵以外は、敵と世間以外は皆,知ったことになるのね、おさむのこと。」
「そうです。大文字は、それだけ、今回の闘争での覚悟を決めているんです。また、前線にも立つかも知れない。見て下さい。この顔を。まるでもう何もかも分かっているみたいな顔だ。」筒井が言うと、「おさむ君は、あまり泣かない赤ちゃんでした。ひょっとしたら、言葉を話せなくなる病気かと院長が疑った程です。」と志津子は言った。
「無駄な泣き方は迷惑だから、って、言葉を話せたら言いそうだ。」と、筒井が笑い、皆は笑った。
綾子は、泣きながら、皆に感謝の意を述べた。
「時期が来るまで、ここで保護して貰うしかないのね。神様と女神様の子供だから。」
翌日。午前11時。丸の内ビル。
敵集団が到着したとき、プロジェクションマップが、ビルの壁面に用意されていた。
プロジェクションマッピングとは、プロジェクタ等の映写機器を用いて、立体物にCGなどの映像を投影する技術である。
本郷は、東京駅にプロジェクションマッピングをした会社に依頼して、原田が用意した映像で表示映像を作成して貰っていた。原田は、草薙、渡、河野に助けられて徹夜の作業をした。
「大文字伝子は、どいつだ!」リーダー格の男が言った。
「私だ!」と日向が言った。
「私だ!」と伊地知が言った。
「私だ!」と大空が言った。
そして、壁面には映像が映し出された。
「エマージェンシーガール1号!」
「エマージェンシーガール2号!」
「エマージェンシーガール3号!」
「エマージェンシーガール4号!」
「エマージェンシーガール5号!」
「エマージェンシーガール6号!」
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人を呼ぶ。悪を倒せと我らを呼ぶ。我ら、EITOエンジェルズ!満を持して。」
「ええいい、もういい!やっちまえ!!」
集団は、完全に気迫負けしていた。
そして、禁を破って潜り込んだマスコミや一般人は、まるで『東栄』特撮映画を観るように魅入っていた。
エマージェンシーガールズは、機関銃や拳銃を持った相手に、胡椒弾を投げた。ペッパーガンで使用している弾よりはずっと大きい。胡椒弾とは、胡椒や台所用調味料を混ぜた丸薬で出来た弾で、鼻孔が猛烈に刺激され、まともに銃器を持てなくなった集団は、最早、何人いてもエマージェンシーガールズの敵では無かった。
エマージェンシーガールズは敵の拳銃や機関銃をバトルスティックで跳ね飛ばし、バトルスティックとバトルロッドで闘った。
バトルロッドは、単なるチタン製の棒だが、バトルスティックは、バトルロッドと違い、3段変形出来る仕様になっている。
敵の人数は、ざっと500人。だが、『今日の分』に違い無い。なぎさは、そう感じながら、曇り空を見上げて寝そべってる敵の集団を見ながら、長波ホイッスルを吹いた。
長波ホイッスルとは、犬笛に似た通信機で、通常の大人に聞こえない。
人間の可聴域は20~2万 Hzと言われ、対して犬の可聴域は40~6万5千 Hzと言われている。
『犬笛』とは、犬の可聴域の広さを応用した道具であり、人間には聞き取れない超音波を発することが出来る。
ペットの飼い主自身が聞き取りやすい『サイレント』でないペット用犬笛も市販されている。
その犬笛の様に、『特殊音波』を使った通信機が、通称『長波ホイッスル』。主に、待機している警官隊への連絡に使う。EITOは、対テロ組織だが、民間企業であり、例え警察や自衛隊の『OB』でも、拳銃等の携帯は許されていない。
特殊な武器と知恵で闘っている。
なぎさが長波ホイッスルを吹いたので、愛宕が率いる、通称『片づけ隊』と呼ばれる警官隊が逮捕連行しに来た。EITOは、逮捕は出来ても、そこまでで、連行も取り調べも出来ないのだ。
「なぎさ。麻生副総理は守った、と早乙女、工藤から連絡が入った。今日は直帰してくれ。」と、なぎさのインカムに伝子の指示が入った。
午後3時。伝子のマンション。
「私は、足手まといなのね。」と綾子が言った。
「その通りだ。」と、伝子が言い、「ストレート過ぎるよ、伝子。」と高遠は言った。
「それでも、敢えてバラしたのね。」と、仕切り隣の藤井と、芦屋三美と山村編集長が言った。
「高遠ちゃん。肩の荷、降りた?」と山村が言い、「いいPR映画が出来たよ。」と、三美が言った。
「鯛焼き、食べましょう。料理教室の余り物で悪いけど。」と、藤井が言うと、皆黙って口にした。
「上手い!」と言った山村は口がアンコだらけだった。
暫く笑い声は途絶えなかった。
―完―