眠りにつくのが一時間遅くなっても、十六時に目が覚めるのは変わらなかった。
目覚めてスマホを確認するとグループメッセージが届いている。グループのメンバーは絵里と由奈とマイ。久しぶりの名前に少し身体がこわばる。
お昼頃にやり取りは始まっていて、由奈の『私のおじさんが焼肉屋開いたんだ。急だけど、明日の夜みんなで行かない?』というお誘いからスタートしていた。
絵里とマイが『行く!』『暇!行きたい』と返していて、『おじさんの焼肉屋ってことは安くなるの?』『おじさんがご馳走してくれるって』『え、すご』と話が盛り上がっていた。
『栞、既読つかないね。まだ体調悪い?』とマイが送って、そこでグループメッセージは途絶えていた。私の返事待ちだ。
正直篠村以外と会うのは怖い。だけど。昨日篠村と話したこのタイミングで、『夜』のお誘い。明日は篠村と会う日でもない。
なんだか神様が「少しだけ頑張ってきなさい」と言っているようにも思えて。
『ごめんね、寝てた。明日、私も行けるよ!』と送ってみた。
すぐに『久しぶりの栞!』『やったー』『明日楽しみ』『いっぱい食べよ』と返事が返ってきた。先程まで重かったスマホが急に軽く思える。
顔を洗おうと一階に降りると、お母さんがキッチンで夕食の準備をしている音が聞こえる。今日はお母さん休みだったのか。
――今なら、言えるかもしれない。
私は息を大きく吸ってから、ダイニングに向かう。
「お母さん。相談があるんだけど」
部屋に入るなり、硬い声が飛び出た。その声にお母さんは深刻な顔を伴ってすぐにキッチンから出てきた。
「何かあった!?」
その顔はすごく私を心配していて、私がとんでもないことを言い出すのだと思っているのかもしれない。昼夜逆転してから心配をかけてばかりだ。
「大したことじゃないんだ。その……これから夜ご飯、私の分まで作ってくれなくてもいいよって言いたくて……」
「え?」
「せっかく作ってくれてるのにごめん。でも、私にとっては夜ご飯というより朝ご飯みたいで、ちょっと中身が重くて。それに七時まで待ってるとお腹空くの。起きてすぐに軽くパンとか食べたいんだ」
お母さんは気を悪くしないだろうか。もしくは落ち込んだりしないだろうか。どんな表情をしているか気になる。
意を決してお母さんを見ると、お母さんはほっとしたように目元を緩ませていた。
「もうそんなことかあ。深刻そうな顔してたからびっくりしちゃった。わかった、四時だとお母さん帰ってないこともあるから、パンとか色々と食べられるもの用意しとく」
「お母さん大変だし、自分で用意するよ」
「そんなこと心配しなくていいよ。遠慮しないでいいから」
お母さんは私の背中を軽く叩いてまたキッチンに戻ると「今もおなかすいてる、よね? パンと……あ、目玉焼きでも焼こうか?」と聞いてくれる。
「スクランブルエッグの方が好きだな」
そんなワガママも言ってみる。
こんなちいさなワガママを言うにも、勇気がいったなんて。
私はどれだけ自分を許せなかったんだろう。
お母さんが作ってくれたふわふわのスクランブルエッグは優しくてあたたかだった。
眠りにつくのが一時間遅くなったこと。友達と約束をしたこと。要望を少しだけ言えたこと。
篠村はどれも大げさに一緒になって喜んでくれた。
嬉しいことがあったら、私、全部一番に篠村に伝えたいかもしれない。
・・
駅から焼肉屋まではマイと向かうことになった。マイと二人になるのは、あの気まずくなった時から初めてだった。
「栞、体調よさそうで良かった」
マイは私を見てすぐに笑顔をみせた。半月も休んでいたのだから、心配をかけてしまったんだろう。
「急に休んだからびっくりさせたよね、貧血がひどくて午前中がしんどくなっちゃって。夜行性になってた」
昼夜逆転症候群を説明すると驚かせてしまうかもしれない。そう思って用意しておいた症状を説明した。マイは特別に疑う様子はなかった。
「夏休みってこともあってだいぶ昼夜逆転しちゃってる」
「じゃあ夜なら体調いいかんじ?」
「そう。よかったらまた遊ぼう」
うん、大丈夫。うまく喋ることができてるはずだ。少し声が上擦って掠れているけど、そんなに変ではないはずだ。
「話すのも久々だね」
「うん」
「――私、彼氏と別れたんだ」
マイの突然の言葉に私は驚いてその場に立ち止まってしまった。
「え、もしかして私の……」
「ふふ、栞のせいじゃないよ。自分でもわかってたことだから」
立ち止まった私を見て、マイも足を止めて私に向かい合った。
「だ、だけど……あの時は変に正義ぶって、上から目線で、人の彼氏のことを最低とか言って、本当にごめん」
震えた声が飛び出す。ずっと後悔してた、言わなければ良かったと。ずっと謝りたかった。だけど勇気が出なかった。
「ううん。栞が心配してくれたことわかってたのに。私こそ嫌な態度取ってごめん」
マイは想像よりも柔らかい表情をしていた。
何度も想像の中でマイに謝った。何度も何度も謝った。だけど一度もこんな表情を予想できなかった。篠村の『一種の賭けだよ』という言葉が思い浮かぶ。
「傷つけちゃったし……腹も立ったよね」
「ううん。私、自分が恥ずかしくなっちゃって。栞に幻滅されたかもと思って、前ほどうまく栞と話せなくなっちゃって。自分のことが嫌になって」
マイは眉を下げて語った。マイもそんなことを考えて、悩んでいるだなんて予想もしていなかった。私が一方的に傷つけて怒らせてしまった。そう思っていたのだから。人の気持ちは、自分が思っていない方向にも動いていく。
「でも私の言葉のせいで、マイは自分を責めちゃったてことだよね」
「うーん、そうなのかな? でも私の反応で栞も悩ませちゃったんだね、ごめんね」
「そんな、こっちこそ……!」
「あははっ、私たち道の真ん中で何必死に謝りあってるんだろう」
マイが吹き出した。そして私の口からも笑い声が溢れてくる。ようやく身体の緊張がほどけた。
「ほんとにね」
「私たち、どっちも悪いわけじゃないのにね」
「うん」
「ね、お肉食べに行こ」
マイが先の道を指差して、私は大きく頷いた。絵里と由奈に会う、怖いよりも楽しみが上回ってきて。私の足はすんなりと動いた。
・・
二人も以前と変わらず私を迎えてくれた。
ただ美味しいものを食べて、どうでもいいことを話して。それだけで色んなところがほぐれていくみたいだ。
私は勝手にすべてを怖がって、すべてを気にしすぎていたのかもしれない。
「そういえば篠村くんさあ」
思い出したように絵里が切り出した。
篠村――その名前に胸が跳ねる。ううん、篠村の昼夜逆転の秘密を守らないといけないと思ったから緊張した、それだけ。名前を聞くだけで胸が甘く疼いた気がして、私は言い訳をした。
「こないだの練習試合すごいかっこよかった。一人で二点も決めて」
「絵里、自分の彼氏そっちのけで篠村くん見てたからね」
由奈がおかしそうに笑った。練習試合……? 絵里の言葉の意味を考える。
「あ、そっかあ。絵里の彼氏、サッカー部の先輩だもんね」
「そうそう。こないだ絵里と応援に行ったの。絵里、浮気者すぎる」
「いやいや、篠村くんはアイドルみたいなもんだから。恋愛とは別」
楽しそうな三人の会話がまるで理解できない。いや、理解することを拒んでいる。
「練習試合って? 何時くらいにやるもの?」
混乱した私の質問に、三人は不思議な表情を向ける。
「え? そこ気になる?」
絵里が笑った。そうだ、そんなこと気にする人なんていない。部活の練習試合の時間なんて。どう考えたって、普通は日中にやるものだ。
「普通に午前だったけど。十時くらい? なんで?」
おかしそうに由奈も笑った。
「ごめん、変なこと聞いた。篠村、本当に大活躍なんだねー」
私はへらりとした表情を作った。久しぶりにお腹がきゅうっと痛む。
「彼氏いわく篠村くんってすっごく真面目らしい。毎日誰よりも早く来てるみたいだしね」
篠村が、昼間の練習試合に出ていた。
昼夜逆転症候群が治ったんだろうか。ううん、絵里の話を聞いていると、篠村は長期に休んでいたようには思えない。
どういうこと? 騙されてた? 警告音のように心臓が鳴る。
三人はそのまま会話を続けて、私も相槌を打ったり笑ったりしながらも。警告音が鳴り続けて、先ほどまでのような楽しい気持ちにはもう戻れなかった。
二時。私は真夜中の中心にいた。家族はみんな寝静まっていてるし、先ほどまで楽しく話をしていた三人もきっともう寝ている。
――そして、篠村も。
音一つない夜。私は部屋の明かりも消して、布団に潜り込んでいた。部屋を暗くしてじっと息を潜めるようにしていると、泥のような闇に飲まれていく気がする。
明日は篠村と海に行こうと約束していた。夏休みらしいこと第四弾のはずだった。
「何が、夏休みらしいことよ……」
情けない愚痴がこぼれる。夏休み、篠村は普通に部活に打ち込んでるんじゃない。お昼を生きてるんじゃない。
なのに、かわいそうな私の相手までして。同情? バカにしていた?
私はスマホを取り出すと、「明日は行けない。もう私の夜に付き合ってくれなくていいよ」とメッセージを送って、眠れるわけもないのにぎゅっと目を閉じた。
目覚めてスマホを確認するとグループメッセージが届いている。グループのメンバーは絵里と由奈とマイ。久しぶりの名前に少し身体がこわばる。
お昼頃にやり取りは始まっていて、由奈の『私のおじさんが焼肉屋開いたんだ。急だけど、明日の夜みんなで行かない?』というお誘いからスタートしていた。
絵里とマイが『行く!』『暇!行きたい』と返していて、『おじさんの焼肉屋ってことは安くなるの?』『おじさんがご馳走してくれるって』『え、すご』と話が盛り上がっていた。
『栞、既読つかないね。まだ体調悪い?』とマイが送って、そこでグループメッセージは途絶えていた。私の返事待ちだ。
正直篠村以外と会うのは怖い。だけど。昨日篠村と話したこのタイミングで、『夜』のお誘い。明日は篠村と会う日でもない。
なんだか神様が「少しだけ頑張ってきなさい」と言っているようにも思えて。
『ごめんね、寝てた。明日、私も行けるよ!』と送ってみた。
すぐに『久しぶりの栞!』『やったー』『明日楽しみ』『いっぱい食べよ』と返事が返ってきた。先程まで重かったスマホが急に軽く思える。
顔を洗おうと一階に降りると、お母さんがキッチンで夕食の準備をしている音が聞こえる。今日はお母さん休みだったのか。
――今なら、言えるかもしれない。
私は息を大きく吸ってから、ダイニングに向かう。
「お母さん。相談があるんだけど」
部屋に入るなり、硬い声が飛び出た。その声にお母さんは深刻な顔を伴ってすぐにキッチンから出てきた。
「何かあった!?」
その顔はすごく私を心配していて、私がとんでもないことを言い出すのだと思っているのかもしれない。昼夜逆転してから心配をかけてばかりだ。
「大したことじゃないんだ。その……これから夜ご飯、私の分まで作ってくれなくてもいいよって言いたくて……」
「え?」
「せっかく作ってくれてるのにごめん。でも、私にとっては夜ご飯というより朝ご飯みたいで、ちょっと中身が重くて。それに七時まで待ってるとお腹空くの。起きてすぐに軽くパンとか食べたいんだ」
お母さんは気を悪くしないだろうか。もしくは落ち込んだりしないだろうか。どんな表情をしているか気になる。
意を決してお母さんを見ると、お母さんはほっとしたように目元を緩ませていた。
「もうそんなことかあ。深刻そうな顔してたからびっくりしちゃった。わかった、四時だとお母さん帰ってないこともあるから、パンとか色々と食べられるもの用意しとく」
「お母さん大変だし、自分で用意するよ」
「そんなこと心配しなくていいよ。遠慮しないでいいから」
お母さんは私の背中を軽く叩いてまたキッチンに戻ると「今もおなかすいてる、よね? パンと……あ、目玉焼きでも焼こうか?」と聞いてくれる。
「スクランブルエッグの方が好きだな」
そんなワガママも言ってみる。
こんなちいさなワガママを言うにも、勇気がいったなんて。
私はどれだけ自分を許せなかったんだろう。
お母さんが作ってくれたふわふわのスクランブルエッグは優しくてあたたかだった。
眠りにつくのが一時間遅くなったこと。友達と約束をしたこと。要望を少しだけ言えたこと。
篠村はどれも大げさに一緒になって喜んでくれた。
嬉しいことがあったら、私、全部一番に篠村に伝えたいかもしれない。
・・
駅から焼肉屋まではマイと向かうことになった。マイと二人になるのは、あの気まずくなった時から初めてだった。
「栞、体調よさそうで良かった」
マイは私を見てすぐに笑顔をみせた。半月も休んでいたのだから、心配をかけてしまったんだろう。
「急に休んだからびっくりさせたよね、貧血がひどくて午前中がしんどくなっちゃって。夜行性になってた」
昼夜逆転症候群を説明すると驚かせてしまうかもしれない。そう思って用意しておいた症状を説明した。マイは特別に疑う様子はなかった。
「夏休みってこともあってだいぶ昼夜逆転しちゃってる」
「じゃあ夜なら体調いいかんじ?」
「そう。よかったらまた遊ぼう」
うん、大丈夫。うまく喋ることができてるはずだ。少し声が上擦って掠れているけど、そんなに変ではないはずだ。
「話すのも久々だね」
「うん」
「――私、彼氏と別れたんだ」
マイの突然の言葉に私は驚いてその場に立ち止まってしまった。
「え、もしかして私の……」
「ふふ、栞のせいじゃないよ。自分でもわかってたことだから」
立ち止まった私を見て、マイも足を止めて私に向かい合った。
「だ、だけど……あの時は変に正義ぶって、上から目線で、人の彼氏のことを最低とか言って、本当にごめん」
震えた声が飛び出す。ずっと後悔してた、言わなければ良かったと。ずっと謝りたかった。だけど勇気が出なかった。
「ううん。栞が心配してくれたことわかってたのに。私こそ嫌な態度取ってごめん」
マイは想像よりも柔らかい表情をしていた。
何度も想像の中でマイに謝った。何度も何度も謝った。だけど一度もこんな表情を予想できなかった。篠村の『一種の賭けだよ』という言葉が思い浮かぶ。
「傷つけちゃったし……腹も立ったよね」
「ううん。私、自分が恥ずかしくなっちゃって。栞に幻滅されたかもと思って、前ほどうまく栞と話せなくなっちゃって。自分のことが嫌になって」
マイは眉を下げて語った。マイもそんなことを考えて、悩んでいるだなんて予想もしていなかった。私が一方的に傷つけて怒らせてしまった。そう思っていたのだから。人の気持ちは、自分が思っていない方向にも動いていく。
「でも私の言葉のせいで、マイは自分を責めちゃったてことだよね」
「うーん、そうなのかな? でも私の反応で栞も悩ませちゃったんだね、ごめんね」
「そんな、こっちこそ……!」
「あははっ、私たち道の真ん中で何必死に謝りあってるんだろう」
マイが吹き出した。そして私の口からも笑い声が溢れてくる。ようやく身体の緊張がほどけた。
「ほんとにね」
「私たち、どっちも悪いわけじゃないのにね」
「うん」
「ね、お肉食べに行こ」
マイが先の道を指差して、私は大きく頷いた。絵里と由奈に会う、怖いよりも楽しみが上回ってきて。私の足はすんなりと動いた。
・・
二人も以前と変わらず私を迎えてくれた。
ただ美味しいものを食べて、どうでもいいことを話して。それだけで色んなところがほぐれていくみたいだ。
私は勝手にすべてを怖がって、すべてを気にしすぎていたのかもしれない。
「そういえば篠村くんさあ」
思い出したように絵里が切り出した。
篠村――その名前に胸が跳ねる。ううん、篠村の昼夜逆転の秘密を守らないといけないと思ったから緊張した、それだけ。名前を聞くだけで胸が甘く疼いた気がして、私は言い訳をした。
「こないだの練習試合すごいかっこよかった。一人で二点も決めて」
「絵里、自分の彼氏そっちのけで篠村くん見てたからね」
由奈がおかしそうに笑った。練習試合……? 絵里の言葉の意味を考える。
「あ、そっかあ。絵里の彼氏、サッカー部の先輩だもんね」
「そうそう。こないだ絵里と応援に行ったの。絵里、浮気者すぎる」
「いやいや、篠村くんはアイドルみたいなもんだから。恋愛とは別」
楽しそうな三人の会話がまるで理解できない。いや、理解することを拒んでいる。
「練習試合って? 何時くらいにやるもの?」
混乱した私の質問に、三人は不思議な表情を向ける。
「え? そこ気になる?」
絵里が笑った。そうだ、そんなこと気にする人なんていない。部活の練習試合の時間なんて。どう考えたって、普通は日中にやるものだ。
「普通に午前だったけど。十時くらい? なんで?」
おかしそうに由奈も笑った。
「ごめん、変なこと聞いた。篠村、本当に大活躍なんだねー」
私はへらりとした表情を作った。久しぶりにお腹がきゅうっと痛む。
「彼氏いわく篠村くんってすっごく真面目らしい。毎日誰よりも早く来てるみたいだしね」
篠村が、昼間の練習試合に出ていた。
昼夜逆転症候群が治ったんだろうか。ううん、絵里の話を聞いていると、篠村は長期に休んでいたようには思えない。
どういうこと? 騙されてた? 警告音のように心臓が鳴る。
三人はそのまま会話を続けて、私も相槌を打ったり笑ったりしながらも。警告音が鳴り続けて、先ほどまでのような楽しい気持ちにはもう戻れなかった。
二時。私は真夜中の中心にいた。家族はみんな寝静まっていてるし、先ほどまで楽しく話をしていた三人もきっともう寝ている。
――そして、篠村も。
音一つない夜。私は部屋の明かりも消して、布団に潜り込んでいた。部屋を暗くしてじっと息を潜めるようにしていると、泥のような闇に飲まれていく気がする。
明日は篠村と海に行こうと約束していた。夏休みらしいこと第四弾のはずだった。
「何が、夏休みらしいことよ……」
情けない愚痴がこぼれる。夏休み、篠村は普通に部活に打ち込んでるんじゃない。お昼を生きてるんじゃない。
なのに、かわいそうな私の相手までして。同情? バカにしていた?
私はスマホを取り出すと、「明日は行けない。もう私の夜に付き合ってくれなくていいよ」とメッセージを送って、眠れるわけもないのにぎゅっと目を閉じた。