◯1話
主人公シリウスは子供の頃に女神の加護を受け、瞬時に回復させてしまう能力を持っていた。
通常の回復魔法は詠唱しながら患部に手をかざし、神々しい光とともに徐々に傷が塞がっていく。
ところが主人公は無詠唱で即時回復だったため、パーティは傷を負っていることにすら気がつかない。ほぼ無傷で戦うことができ、疲労も感じなかった。
一方で主人公は精神力を削るため、帰りは疲れてへとへとになっている。
「なんで、お前だけ疲れてんだよ」
「だらしねえな、俺たちを見習えよ」
パーティのメンバーはシリウスのおかげで活躍ができることに気がつかないでいた。
使えないと判断されてしまった主人公はパーティから追放されてしまうことになる。

◯2話
ある日、国を上げての聖獣退治が計画される。聖獣の持つ希少な部位が目的だった。
パーティを追放されたシリウスは討伐隊には参加できない。
聖獣を包囲し、逃げ道を塞ぎながら大勢で攻撃を繰り返す。
聖獣の巨体を考えて逃げ道を塞いでいたが、銀の聖獣グラネスは魔力が高く、小さい姿になることが可能だった。
大勢に攻撃された聖獣は瀕死になり、行方をくらます。

主人公は森の中でボロボロの姿をした女性に出会う。
傷を負っており、腕がいまにも千切れそうだった。
女性はシリウスをにらみつける。
剣を持ったシリウスを見て、殺されると思った女性は諦めたように木の根元に座り込み、そのまま意識を失った。

シリウスはなぜ女性が自分に殺されると思ったのかがわからなかった。
ただ、女性を助けたいと感じていた。

さすがのシリウスも一瞬では治せない。時間をかけて賢明に魔法をかけた。
過去の記憶が蘇る。
主人公が子供の頃、動物ばかりを癒やしていた姿を見た女神は彼に加護を与えた。
女神からは「将来、聖獣が困っていたら助けてあげてね」と言葉をかけられていた。
聖獣は人間に比べて、高い生命力を持っている。だから人間の回復よりもより多くの魔力消費が必要となる。
白魔法は自身の精神力を削る。シリウスは自分のすべてを捧げないと助けられないと予感していた。

身を挺して女性を助けた主人公は気を失っていた。気がつくと女性の姿は消えていた。

◯3話
国王の娘ラフィーアの誕生日。王都はお祝いムードだった。
ラフィーアに一目惚れしていたシリウスも王都に来ていた。

聖獣が襲われた場所と王都は離れていたが、聖獣が現れて王都を襲う。殺されそうになったことへの仕返しだった。
聖獣は暴れまくり、王都のあちこちで火の手が上がる。
聖獣グラネスは回復しただけではなく、肉体も若返っていた。グラネスはあまりにも強いために女神アレスフィアにより力を封じられていた部分もあった。だが、シリウスはそれを取り除いてしまっていた。
聖獣グラネスはこれまでの何倍も強くなっており、王都は陥落するはずだった。
だが、偶然にシリウスと遭遇する。彼の姿を目にした聖獣グラネスは去っていく。

聖獣グラネスは王都中に毒霧を吐いていた。
聖獣グラネスが吐いた毒霧により、多くの負傷者が出ていた。王女ラフィーアも息を引き取る寸前で、大神官であるメリアスですら治癒は不可能だった。その噂が主人公の耳にも届く。
(ラフィーア以外の被害者は回復できた。ラフィーアだけは国王の娘ということで、聖獣グラネスが特別な毒霧を吐いている)

森で女性と再会するシリウス。女性の話から、彼女が聖獣のグラネスであると聞かされる。
シリウスは、原因を作ったグラネスであればラフィーアを助けられると考える。

ラフィーアを助けたいと訴え、毒霧の解毒剤をもらうことができた。だが、解毒剤は口移しで、口から口へと渡すしかないものだった。
「あの娘を助けるには、口づけしかないねえ。どうする?」
真夜中、グラネスの手を借り、ラフィーアの寝室へと忍び込むことになるのだが……