白氷で覆われた大広間、そこはまるで芸術かのような景色だった。
そんな芸術を破壊するかのように、私達は闘っている。
「らああぁぁ!!」
「はああぁぁ!!」
闘気と闘気の激しいぶつかり合い。
滑る床や壁を自由に滑る状況を不利と考えた私は、床や壁や柱や天井を跳び回ることで、滑る地形でも何とか闘っていた。
しかし、【瞬歩】はうかつに使えない。
地面が滑り、相手の前で止まることができないからだ。
ブレアによって形成された一面白氷の地形は、当然展開したブレアに分がある。
いつの間にこんな魔技を……凄い厄介だ……!!
「ぅらああぁぁ!!」
自由に床を滑るブレアから渾身の金槌を喰らう。
義手と手甲の両方で防御するも、凍って床が滑るために堪えることができず、壁へと叩きつけられた。
あまりの威力に私は背中から壁へとめり込んでしまう。
「ぎっ……!」
追撃と言わんばかりに、ブレアは全力で闘気を纏って金槌を構えながら滑って来た。
【瞬歩】
私は【瞬歩】を使ってその場から脱し、金槌の攻撃を躱す。
だけど、【瞬歩】で止まった先の床で滑ってしまう。
「ほぇえ……!!」
ツルツル滑って止まらないってばぁ!!
「喰らいやがれ!! 【アイススパイク】!!」
私が床を滑りながら体制を立て直そうとしていると、ブレアがつららを複数打ち飛ばして来た。
つららを上半身の体制を整えつつも、いくつか両手で逸らすも、
「くっ!」
逸らし切れないつららが体に三つ程刺さった。
未だ滑る私は、止まるために両手を地面に付ける。
義手の指先が鉤爪のように鋭いため、何とか止まることが出来た。
「おいおいおい、こんなもんかよ。ヒメナさんよぉ。このままじゃ、エマみたいに死んじまうぜ?」
鼻で笑い、まるで人ごとのように語るブレア。
何でそんな風にいられるの……?
「エマを殺したのは……あんたでしょ!?」
細かいところに気がついて……いつも最後には手を差し伸べてくれる……そんな優しいエマを殺したのは、ブレアじゃない!?
「……あぁ、そうだったな。お節介で鬱陶しかったもんで、つい殺っちまったんだった! ぶははっ!!」
「ブレアァァ!!」
私は怒りから全力で闘気を纏う。
アッシュやカニバルやロランをも上回る闘気。
いくつもの激戦を越えた私の闘気は、以前より力強さを増していた。
「……ぶははっ!! ようやく、全力を出したかよ!!」
そんな私の闘気を見て、何が楽しいのかブレアは大きく笑う。
「そうでなきゃ意味がねぇ!! あたいがエマをぶっ殺して、お前らを裏切った意味がな!!」
ブレアの強さへの執着。
エマを殺して仲間を裏切ったその覚悟が、【氷結】の魔法をより強力なモノに変えたのかもしれない……。
だけどそんな強さ、認める訳にはいかないんだ。
だから私は、ブレアにだけは絶対負けられない!!
「やああぁぁ!!」
「おああぁぁ!!」
私とブレアは次第に感情を剥き出しにし、闘いを激化させていった。
*****
帝都外の荒野では、王国軍と帝国軍が激しくぶつかり続けていた。
鳴り響く金属音と雄叫び、漂う血の匂い、アリアの目が見えていなくとも、その激戦の凄まじさは伝わってきていた。
【狂戦士の歌】
そんな中でもアリアは歌い続ける。
それが自分の出来る唯一無二のことだからだ。
「「「うがああぁぁ!!」」」
狂戦士となった王国兵達は帝国兵を薙ぎ倒していく。
まるで、蟻の群れをスズメやツバメが襲うかのように蹂躙していく。
数で負けようとも、【狂戦士の歌】の効果で個の力にそれほどに差ができていた。
圧倒していく【狂戦士の歌】の効果を受けた王国の戦士達。
しかし突如――。
「噴っ!!」
黒炎が狂戦士達を呑み込む。
炎の熱は皮膚をただれさせ、肉を焼き、骨をも焦がした。
ただ一度の攻撃で、数百人が燃やされる。
「我に続け!! 道を切り開く!!」
狂戦士達を燃やした炎帝アッシュは、グロリアス国王とアリアの元へと向かうため、闘気を纏って王国軍を燃やし続けた。
三角型の魚鱗の陣にて自ら先頭を走り、王国軍の横陣の真ん中を切り裂こうとする。
「歌姫、歌を止めよ」
アリアは歌を歌うのをやめる。
正気を取り戻した兵士達は【狂戦士の歌】の反動はあるものの、まだまだ動ける状態だ。
「鶴翼の陣を敷けぃ!!」
大局的な見地で戦場を見たグロリアス国王は、横陣からVの字型の鶴翼の陣にするよう兵士達に指示を出す。
動ける兵士達はすぐさま動き出し、鶴翼の陣を敷き終えた。
「歌姫、歌え!!」
【狂戦士の歌】
陣を敷き終えた確認をした国王は、すかさずアリアが【狂戦士の歌】を歌わせ、兵士を狂戦士化させる。
「ぐ……ぬっ!!」
陣形を即座に変えられたアッシュ達帝国軍は、狂戦士と化した王国軍に挟撃された。
「小癪な……!!」
帝国兵は続々とその数を減らしていく。
王国軍の倍以上いた数は今やその数を半分の同数程に減らしていた。
「魔技【スピキュール】!!」
黒炎を纏わせたフランベルジュで狂戦士達を両断していく。
いくら一騎当千のアッシュとはいえ、今の状況にかなり追い込まれていた。
それ程までにアリアの【狂戦士の歌】は大局を揺るがす脅威的な魔技なのである。
「やはり、元を叩くしかあるまいな……!!」
アリアをどうにかするしか対抗する術はない。
そう考え、孤軍奮闘踏ん張るアッシュであった。
そんな芸術を破壊するかのように、私達は闘っている。
「らああぁぁ!!」
「はああぁぁ!!」
闘気と闘気の激しいぶつかり合い。
滑る床や壁を自由に滑る状況を不利と考えた私は、床や壁や柱や天井を跳び回ることで、滑る地形でも何とか闘っていた。
しかし、【瞬歩】はうかつに使えない。
地面が滑り、相手の前で止まることができないからだ。
ブレアによって形成された一面白氷の地形は、当然展開したブレアに分がある。
いつの間にこんな魔技を……凄い厄介だ……!!
「ぅらああぁぁ!!」
自由に床を滑るブレアから渾身の金槌を喰らう。
義手と手甲の両方で防御するも、凍って床が滑るために堪えることができず、壁へと叩きつけられた。
あまりの威力に私は背中から壁へとめり込んでしまう。
「ぎっ……!」
追撃と言わんばかりに、ブレアは全力で闘気を纏って金槌を構えながら滑って来た。
【瞬歩】
私は【瞬歩】を使ってその場から脱し、金槌の攻撃を躱す。
だけど、【瞬歩】で止まった先の床で滑ってしまう。
「ほぇえ……!!」
ツルツル滑って止まらないってばぁ!!
「喰らいやがれ!! 【アイススパイク】!!」
私が床を滑りながら体制を立て直そうとしていると、ブレアがつららを複数打ち飛ばして来た。
つららを上半身の体制を整えつつも、いくつか両手で逸らすも、
「くっ!」
逸らし切れないつららが体に三つ程刺さった。
未だ滑る私は、止まるために両手を地面に付ける。
義手の指先が鉤爪のように鋭いため、何とか止まることが出来た。
「おいおいおい、こんなもんかよ。ヒメナさんよぉ。このままじゃ、エマみたいに死んじまうぜ?」
鼻で笑い、まるで人ごとのように語るブレア。
何でそんな風にいられるの……?
「エマを殺したのは……あんたでしょ!?」
細かいところに気がついて……いつも最後には手を差し伸べてくれる……そんな優しいエマを殺したのは、ブレアじゃない!?
「……あぁ、そうだったな。お節介で鬱陶しかったもんで、つい殺っちまったんだった! ぶははっ!!」
「ブレアァァ!!」
私は怒りから全力で闘気を纏う。
アッシュやカニバルやロランをも上回る闘気。
いくつもの激戦を越えた私の闘気は、以前より力強さを増していた。
「……ぶははっ!! ようやく、全力を出したかよ!!」
そんな私の闘気を見て、何が楽しいのかブレアは大きく笑う。
「そうでなきゃ意味がねぇ!! あたいがエマをぶっ殺して、お前らを裏切った意味がな!!」
ブレアの強さへの執着。
エマを殺して仲間を裏切ったその覚悟が、【氷結】の魔法をより強力なモノに変えたのかもしれない……。
だけどそんな強さ、認める訳にはいかないんだ。
だから私は、ブレアにだけは絶対負けられない!!
「やああぁぁ!!」
「おああぁぁ!!」
私とブレアは次第に感情を剥き出しにし、闘いを激化させていった。
*****
帝都外の荒野では、王国軍と帝国軍が激しくぶつかり続けていた。
鳴り響く金属音と雄叫び、漂う血の匂い、アリアの目が見えていなくとも、その激戦の凄まじさは伝わってきていた。
【狂戦士の歌】
そんな中でもアリアは歌い続ける。
それが自分の出来る唯一無二のことだからだ。
「「「うがああぁぁ!!」」」
狂戦士となった王国兵達は帝国兵を薙ぎ倒していく。
まるで、蟻の群れをスズメやツバメが襲うかのように蹂躙していく。
数で負けようとも、【狂戦士の歌】の効果で個の力にそれほどに差ができていた。
圧倒していく【狂戦士の歌】の効果を受けた王国の戦士達。
しかし突如――。
「噴っ!!」
黒炎が狂戦士達を呑み込む。
炎の熱は皮膚をただれさせ、肉を焼き、骨をも焦がした。
ただ一度の攻撃で、数百人が燃やされる。
「我に続け!! 道を切り開く!!」
狂戦士達を燃やした炎帝アッシュは、グロリアス国王とアリアの元へと向かうため、闘気を纏って王国軍を燃やし続けた。
三角型の魚鱗の陣にて自ら先頭を走り、王国軍の横陣の真ん中を切り裂こうとする。
「歌姫、歌を止めよ」
アリアは歌を歌うのをやめる。
正気を取り戻した兵士達は【狂戦士の歌】の反動はあるものの、まだまだ動ける状態だ。
「鶴翼の陣を敷けぃ!!」
大局的な見地で戦場を見たグロリアス国王は、横陣からVの字型の鶴翼の陣にするよう兵士達に指示を出す。
動ける兵士達はすぐさま動き出し、鶴翼の陣を敷き終えた。
「歌姫、歌え!!」
【狂戦士の歌】
陣を敷き終えた確認をした国王は、すかさずアリアが【狂戦士の歌】を歌わせ、兵士を狂戦士化させる。
「ぐ……ぬっ!!」
陣形を即座に変えられたアッシュ達帝国軍は、狂戦士と化した王国軍に挟撃された。
「小癪な……!!」
帝国兵は続々とその数を減らしていく。
王国軍の倍以上いた数は今やその数を半分の同数程に減らしていた。
「魔技【スピキュール】!!」
黒炎を纏わせたフランベルジュで狂戦士達を両断していく。
いくら一騎当千のアッシュとはいえ、今の状況にかなり追い込まれていた。
それ程までにアリアの【狂戦士の歌】は大局を揺るがす脅威的な魔技なのである。
「やはり、元を叩くしかあるまいな……!!」
アリアをどうにかするしか対抗する術はない。
そう考え、孤軍奮闘踏ん張るアッシュであった。