ブレアとアリアの行方が分からなくなってから数日、残された冥土隊の私、ルーナ、ベラ、フローラは、モルデン砦地下の別々の牢屋へと入れられた。
乱魔石が埋め込まれた手錠をはめられているため、私はマナが乱され義手の右手も自由に動かせない。
フローラは闘気も纏えないし、攻撃系の魔法も持たないため、手錠を付けられていないみたいで何かを制作していた。
エマが殺された事実を私自身まだ受け入れられないのか、数日経っても涙すら流せずにいる。
隣の牢にいるベラは泣いていた。
エマの死を確信し、ずっとすすり泣きをしている。
ベラとエマは、私とアリアのような関係だった。
辛い時は寄り添い合い、楽しい時を共有し、まるで姉妹のように育ってきた。
そんな自分の体の一部のような存在を――まさか、仲間のブレアに奪われるなんて思ってもいなかっただろう。
ブレア……どうしてエマを……?
アリアは今どこへいるの……?
あの後【探魔】を使っても、ブレアとアリアは補足できなかった。
ロランの言う通り、ブレアはアリアを帝国軍の元へ連れて行ったのかもしれない。
私は私自身にアリアを守るって誓ったのに――。
苦悩していると、地下牢に誰か降りてくる音がしてくる。
「やぁ、元気にしてるかい?」
ロランだ。
奇しくもメラニーがロランに殺され、アリアが失明させられた状況に近い。
あの時の気持ちを思い出し、ロランに対して怒りが湧いてきた。
「さっさと出して、アリアを探したいの」
「当てもないのにどうやって探すんだい?」
ロランの言う通りだ。
ブレアとアリアの痕跡は私一人じゃ追えないだろう。
帝国軍にいるんだとしたらなおさらだ。
「実は帝国軍には僕の放った諜報員がいてね、諜報員の魔法【送受】で受け取った情報によると、歌姫は帝国のソリテュードにある生体研究所に連れて行かれているみたいだね」
「生体研究所……!? 何それ!?」
「魔物や人間の実験を行っている施設らしい。らしい、というのも死帝ルシェルシュが所有している施設で、研究者以外は基本的に立ち入れないからだ」
それって……アリアを何かの実験に使うっていう事……!?
そんなの……ありえない!!
「早く私達を出して!! アリアを助けないと!!」
「もちろん、そのつもりだよ」
ロランは見張りに指示を出し、私達の牢と手錠の鍵を開ける。
「フローラちゃんはフェデルタとここに残していく。行くのは僕、ルーナちゃん、ヒメナちゃん、ベラちゃんの四人だけだ。少数精鋭でアリアちゃんを奪取する。歌姫の歌が帝国軍に使われた場合、こちらの被害は計り知れないからね」
「そんなこと……させられない!! あんたがアリアを好き勝手扱ってるのも許せないのに!!」
「怖いなぁ、僕の方が飴がある分まだマシだと思うけど」
――スグに準備を済ませた私達はモルデン砦を出発し、帝国へと旅に出た。
*****
一方、アリアは馬車で運ばれていた。
中には、アッシュ、カニバル、そしてブレアの三人が同席している。
「ブレア……」
ブレアはアリアに声をかけられても答えない。
アリアの疑問は、何でこんなことしたか、だということをブレアは分かっていた。
その疑問に答えようが、理解されないことがわかっているからだ。
「歌姫よ。聞きたいことがある」
「……何でしょう」
アリアはアッシュの亡き妻、コレールと似ている。
瓜二つとまではいかないまでも、どこかアッシュは面影を感じていた。
「……いや、何でもない」
アッシュはアリアに声をかけるも、何を聞こうとしたのか自分でも分からない。
アリアはコレールと何かしらの関係があるのではないかと考えるも、あり得ないという結論に至った。
コレールの死体は間違いなくこの目で見たのだから。
「炎帝さーん。これからおじさん達、どうするの?」
「死帝ルシェルシュに歌姫を引き渡す。ヤツはどうしても欲しがっていてな」
「あーあ、歌姫ちゃん可哀想~。おじさんに食べられる方がまだマシかもね。ねぇ、食べていい?」
「ならん、我慢せよ」
アリアがどうしたらいいか分からず押し黙る中、馬車は進む――。
馬車を走らせ二週間。
帝国内の街を何度か経由し、帝国のソリテュードへとアリア達を乗せた馬車が辿り着く。
ソリテュードの街は巨大な風車が数多くあり、風力で発電するというこの時代では考えられない科学力を有していた。
暗闇のはずの夜――電灯で照らされる生体研究所の前では、アリア捕獲の報告を聞いていたルシェルシュが歓迎するように、うきうきしながら待っていた。
「いやー、最高ですー。さっすが、炎帝様と震帝様ですねー」
上機嫌のルシェルシュはくるくると回りながら、馬車から降りてきたアリアに近づく。
しかしアッシュはアリアの方を抱き、ルシェルシュと距離を離した。
「ルシェルシュ。聞いておくが、歌姫に危害を加えるような真似はしないだろうな?」
「しませんよー。痛いのとかはないでーす。さぁ、歌姫様。こちらへどぞどぞー」
アッシュは疑いつつも、ルシェルシュに引き渡す。
ルシェルシュはアリアの手を取り、スキップしながら生体研究所の中へと入っていた。
アッシュとカニバルとブレアも後に続き、入っていく。
いくつかの通路を通り、着いた大部屋。
そこでは――。
「あんだ……!? これ!?」
思わずブレアが驚いた景色。
数々の培養槽の中に人間や動物、魔物が入っていた。
特に一際目立つのは、ゾンビのような人間と魔物を混ぜられた生物が入った培養槽だ。
「何かここ……凄く気持ち悪い……」
視覚がないアリアもマナから何かを感じ取ったのだろう。
妙な気持ち悪さを感じていた。
「そんなこと言わないでよー。だってさー」
自分のお気に入りの場所を毛嫌いされたルシェルシュは残念そうに――。
「ここ、君が産まれた場所だよー?」
アリアに衝撃の事実を伝えた。
乱魔石が埋め込まれた手錠をはめられているため、私はマナが乱され義手の右手も自由に動かせない。
フローラは闘気も纏えないし、攻撃系の魔法も持たないため、手錠を付けられていないみたいで何かを制作していた。
エマが殺された事実を私自身まだ受け入れられないのか、数日経っても涙すら流せずにいる。
隣の牢にいるベラは泣いていた。
エマの死を確信し、ずっとすすり泣きをしている。
ベラとエマは、私とアリアのような関係だった。
辛い時は寄り添い合い、楽しい時を共有し、まるで姉妹のように育ってきた。
そんな自分の体の一部のような存在を――まさか、仲間のブレアに奪われるなんて思ってもいなかっただろう。
ブレア……どうしてエマを……?
アリアは今どこへいるの……?
あの後【探魔】を使っても、ブレアとアリアは補足できなかった。
ロランの言う通り、ブレアはアリアを帝国軍の元へ連れて行ったのかもしれない。
私は私自身にアリアを守るって誓ったのに――。
苦悩していると、地下牢に誰か降りてくる音がしてくる。
「やぁ、元気にしてるかい?」
ロランだ。
奇しくもメラニーがロランに殺され、アリアが失明させられた状況に近い。
あの時の気持ちを思い出し、ロランに対して怒りが湧いてきた。
「さっさと出して、アリアを探したいの」
「当てもないのにどうやって探すんだい?」
ロランの言う通りだ。
ブレアとアリアの痕跡は私一人じゃ追えないだろう。
帝国軍にいるんだとしたらなおさらだ。
「実は帝国軍には僕の放った諜報員がいてね、諜報員の魔法【送受】で受け取った情報によると、歌姫は帝国のソリテュードにある生体研究所に連れて行かれているみたいだね」
「生体研究所……!? 何それ!?」
「魔物や人間の実験を行っている施設らしい。らしい、というのも死帝ルシェルシュが所有している施設で、研究者以外は基本的に立ち入れないからだ」
それって……アリアを何かの実験に使うっていう事……!?
そんなの……ありえない!!
「早く私達を出して!! アリアを助けないと!!」
「もちろん、そのつもりだよ」
ロランは見張りに指示を出し、私達の牢と手錠の鍵を開ける。
「フローラちゃんはフェデルタとここに残していく。行くのは僕、ルーナちゃん、ヒメナちゃん、ベラちゃんの四人だけだ。少数精鋭でアリアちゃんを奪取する。歌姫の歌が帝国軍に使われた場合、こちらの被害は計り知れないからね」
「そんなこと……させられない!! あんたがアリアを好き勝手扱ってるのも許せないのに!!」
「怖いなぁ、僕の方が飴がある分まだマシだと思うけど」
――スグに準備を済ませた私達はモルデン砦を出発し、帝国へと旅に出た。
*****
一方、アリアは馬車で運ばれていた。
中には、アッシュ、カニバル、そしてブレアの三人が同席している。
「ブレア……」
ブレアはアリアに声をかけられても答えない。
アリアの疑問は、何でこんなことしたか、だということをブレアは分かっていた。
その疑問に答えようが、理解されないことがわかっているからだ。
「歌姫よ。聞きたいことがある」
「……何でしょう」
アリアはアッシュの亡き妻、コレールと似ている。
瓜二つとまではいかないまでも、どこかアッシュは面影を感じていた。
「……いや、何でもない」
アッシュはアリアに声をかけるも、何を聞こうとしたのか自分でも分からない。
アリアはコレールと何かしらの関係があるのではないかと考えるも、あり得ないという結論に至った。
コレールの死体は間違いなくこの目で見たのだから。
「炎帝さーん。これからおじさん達、どうするの?」
「死帝ルシェルシュに歌姫を引き渡す。ヤツはどうしても欲しがっていてな」
「あーあ、歌姫ちゃん可哀想~。おじさんに食べられる方がまだマシかもね。ねぇ、食べていい?」
「ならん、我慢せよ」
アリアがどうしたらいいか分からず押し黙る中、馬車は進む――。
馬車を走らせ二週間。
帝国内の街を何度か経由し、帝国のソリテュードへとアリア達を乗せた馬車が辿り着く。
ソリテュードの街は巨大な風車が数多くあり、風力で発電するというこの時代では考えられない科学力を有していた。
暗闇のはずの夜――電灯で照らされる生体研究所の前では、アリア捕獲の報告を聞いていたルシェルシュが歓迎するように、うきうきしながら待っていた。
「いやー、最高ですー。さっすが、炎帝様と震帝様ですねー」
上機嫌のルシェルシュはくるくると回りながら、馬車から降りてきたアリアに近づく。
しかしアッシュはアリアの方を抱き、ルシェルシュと距離を離した。
「ルシェルシュ。聞いておくが、歌姫に危害を加えるような真似はしないだろうな?」
「しませんよー。痛いのとかはないでーす。さぁ、歌姫様。こちらへどぞどぞー」
アッシュは疑いつつも、ルシェルシュに引き渡す。
ルシェルシュはアリアの手を取り、スキップしながら生体研究所の中へと入っていた。
アッシュとカニバルとブレアも後に続き、入っていく。
いくつかの通路を通り、着いた大部屋。
そこでは――。
「あんだ……!? これ!?」
思わずブレアが驚いた景色。
数々の培養槽の中に人間や動物、魔物が入っていた。
特に一際目立つのは、ゾンビのような人間と魔物を混ぜられた生物が入った培養槽だ。
「何かここ……凄く気持ち悪い……」
視覚がないアリアもマナから何かを感じ取ったのだろう。
妙な気持ち悪さを感じていた。
「そんなこと言わないでよー。だってさー」
自分のお気に入りの場所を毛嫌いされたルシェルシュは残念そうに――。
「ここ、君が産まれた場所だよー?」
アリアに衝撃の事実を伝えた。