私とアッシュは激しい打ち合いをしていた。
互いに一歩も引かぬ激戦。
私が一歩も引かない中、アッシュも引かなかった。
ブレアは私達の間に割って入ることすら出来ず、ただ見守っている。
いや、多分介入する余地がなかったんだと思う。
「一つ、聞きたい。ボースハイト王国の国王は生きているのか?」
「生きてるわよ! 残念だったわね!」
「やはり――な!!」
黒炎を纏ったフランベルジュを大振りするアッシュ。
ギリギリの間合いで躱したけど、熱い……!!
「あの程度で死んでいるはずがない……死なれては困る!! ヤツのモノ全てを地獄の黒炎で焼き尽くしてからでなければな!!」
アッシュの黒炎からは、怨念のようなマナが伝わってくる。
何でそんなに、国王様に拘ってるの……?
エミリー先生の時もそうだったような気がするし……。
「エミリー先生を殺して……王国の人を沢山殺して……それで、国王様を殺すってあんたは何のために闘ってるのよ!?」
「……復讐だ」
アッシュは自身の怒りや恨みといった気持ちを抑えきれないのか、黒炎が身体から溢れ出ている。
「我が妻コレールと、宿した我らの子を殺した国王と王国へのな!!」
*****
あれは今から十六年前――今は帝国の属国にある国と闘っていた頃だ。
我とコレールは元剣帝エミリーの近衛部隊に所属していた。
常に隣同士で闘う我とコレールが、恋仲になるまでさほど時間はかからなかった。
我らは戦時中にも関わらず結婚をし、子を宿した。
その頃、王国と帝国は小競り合いはあったとしても、まだ戦争には至っていなかったが、我ら帝国軍にとっては目の上のタンコブのような目障りな存在ではあった。
故に皇帝陛下から、当時剣帝だったエミリーが率いる我らの部隊へと、ボースハイト王国国王の暗殺命令が下る。
エミリーは人選を選ぶのに迷いはしなかった。
【殺害】の魔法を持つコレールは、音も殺し、触れた相手を殺すことができる、強力無非な暗殺向きの能力を持っていたからだ。
だが、我はそれに徹底的に反対した。
子を宿す妻を敵地のど真ん中にただ一人行かせれるはずがないと。
コレールを行かせるなら我も行くと。
しかし、エミリーは断固拒否した。
お前の魔法は暗殺向きでなくコレールの足を引っ張る、と。
コレールも言った。
大丈夫よ、アッシュ。任務だから仕方ない。一人でもきっと何とかなる、と。
そして二週間後――コレールは帰って来た。
首だけがない体で。
見せしめに国王から送りつけられてきた。
その時、失意と怒りが湧き溢れ、我の髪の色は金髪から白髪へと変わったのだ――。
*****
過去を話し、アッシュの身体を包む黒炎は勢いを増す。
「断固として譲らなかった元剣帝エミリーを……!! そして、コレールを殺したグロリアス国王を……断じて許せるはずがあるまい!!」
「……っ……!!」
アッシュがエミリー先生を……王国や国王様を恨むのは無理もないかもしれない。
だって、私だってエミリー先生を殺したアッシュを憎んでいる気持ちがあるんだから。
「……でも、だからって……!! だからって、あんたのやってきたことだって許されるモノじゃない!!」
アッシュだって私の……私達の大切なモノを奪ったんだから!!
「ならば、来い!! 我が怨念の黒炎を止められるのであればな!!」
私とアッシュが互いに全力で闘気を纏って、飛び込んだ……その時――。
モルデン砦の塔から光り輝く光線が発射された。
太い光線は帝国軍の真ん中へと直撃し、大爆発を起こす。
「何!?」
「ぬ!?」
とんでもない余波に私とアッシュも吹き飛ばされそうになった。
何とか余波を堪える私とアッシュ。
何今の……?
まさか……【闘気砲】……?
【闘気砲】と思われる光線は、帝国兵数千人を巻き込んで、殺した。
私もアッシュも……いや、戦場全てが余りの威力に動きを止める。
「何だ……今のは……!?」
アッシュは【闘気砲】を見て驚愕していた。
だけど、それは私も同じだ。
発射されたモルデン砦に高い塔を見ると、魔法具の巨大な大砲が見えていた。
隣にはフローラが立っている。
もしかして、フローラがずっと王都の研究所で作ってたのは……巨大な闘気砲!?
「……ふっ……はははは! 笑わせてくれる。我のやったことが許されないが、貴様らが今やったことは許されるのか!? 殺戮ではないか!!」
「……っ……!?」
でも……そんなの……私知らなかったんだもん……。
フローラが作ってた魔法具が……あんなモノだったなんて……。
「この次相まみえた時こそは、貴様を必ず殺す」
そう言うと、アッシュは上空に黒炎を花火のように打ち上げる。
そして、生き残った帝国軍と共に撤退していった。
私だってこんなつもりじゃなかったのに……。
私は……アリアを守りたくて、大切なモノを守りたくて闘ってるだけなのに……。
モルデン砦防衛戦に勝利したものの、後味の悪さのような心のわだかまりが残ったんだ――。
互いに一歩も引かぬ激戦。
私が一歩も引かない中、アッシュも引かなかった。
ブレアは私達の間に割って入ることすら出来ず、ただ見守っている。
いや、多分介入する余地がなかったんだと思う。
「一つ、聞きたい。ボースハイト王国の国王は生きているのか?」
「生きてるわよ! 残念だったわね!」
「やはり――な!!」
黒炎を纏ったフランベルジュを大振りするアッシュ。
ギリギリの間合いで躱したけど、熱い……!!
「あの程度で死んでいるはずがない……死なれては困る!! ヤツのモノ全てを地獄の黒炎で焼き尽くしてからでなければな!!」
アッシュの黒炎からは、怨念のようなマナが伝わってくる。
何でそんなに、国王様に拘ってるの……?
エミリー先生の時もそうだったような気がするし……。
「エミリー先生を殺して……王国の人を沢山殺して……それで、国王様を殺すってあんたは何のために闘ってるのよ!?」
「……復讐だ」
アッシュは自身の怒りや恨みといった気持ちを抑えきれないのか、黒炎が身体から溢れ出ている。
「我が妻コレールと、宿した我らの子を殺した国王と王国へのな!!」
*****
あれは今から十六年前――今は帝国の属国にある国と闘っていた頃だ。
我とコレールは元剣帝エミリーの近衛部隊に所属していた。
常に隣同士で闘う我とコレールが、恋仲になるまでさほど時間はかからなかった。
我らは戦時中にも関わらず結婚をし、子を宿した。
その頃、王国と帝国は小競り合いはあったとしても、まだ戦争には至っていなかったが、我ら帝国軍にとっては目の上のタンコブのような目障りな存在ではあった。
故に皇帝陛下から、当時剣帝だったエミリーが率いる我らの部隊へと、ボースハイト王国国王の暗殺命令が下る。
エミリーは人選を選ぶのに迷いはしなかった。
【殺害】の魔法を持つコレールは、音も殺し、触れた相手を殺すことができる、強力無非な暗殺向きの能力を持っていたからだ。
だが、我はそれに徹底的に反対した。
子を宿す妻を敵地のど真ん中にただ一人行かせれるはずがないと。
コレールを行かせるなら我も行くと。
しかし、エミリーは断固拒否した。
お前の魔法は暗殺向きでなくコレールの足を引っ張る、と。
コレールも言った。
大丈夫よ、アッシュ。任務だから仕方ない。一人でもきっと何とかなる、と。
そして二週間後――コレールは帰って来た。
首だけがない体で。
見せしめに国王から送りつけられてきた。
その時、失意と怒りが湧き溢れ、我の髪の色は金髪から白髪へと変わったのだ――。
*****
過去を話し、アッシュの身体を包む黒炎は勢いを増す。
「断固として譲らなかった元剣帝エミリーを……!! そして、コレールを殺したグロリアス国王を……断じて許せるはずがあるまい!!」
「……っ……!!」
アッシュがエミリー先生を……王国や国王様を恨むのは無理もないかもしれない。
だって、私だってエミリー先生を殺したアッシュを憎んでいる気持ちがあるんだから。
「……でも、だからって……!! だからって、あんたのやってきたことだって許されるモノじゃない!!」
アッシュだって私の……私達の大切なモノを奪ったんだから!!
「ならば、来い!! 我が怨念の黒炎を止められるのであればな!!」
私とアッシュが互いに全力で闘気を纏って、飛び込んだ……その時――。
モルデン砦の塔から光り輝く光線が発射された。
太い光線は帝国軍の真ん中へと直撃し、大爆発を起こす。
「何!?」
「ぬ!?」
とんでもない余波に私とアッシュも吹き飛ばされそうになった。
何とか余波を堪える私とアッシュ。
何今の……?
まさか……【闘気砲】……?
【闘気砲】と思われる光線は、帝国兵数千人を巻き込んで、殺した。
私もアッシュも……いや、戦場全てが余りの威力に動きを止める。
「何だ……今のは……!?」
アッシュは【闘気砲】を見て驚愕していた。
だけど、それは私も同じだ。
発射されたモルデン砦に高い塔を見ると、魔法具の巨大な大砲が見えていた。
隣にはフローラが立っている。
もしかして、フローラがずっと王都の研究所で作ってたのは……巨大な闘気砲!?
「……ふっ……はははは! 笑わせてくれる。我のやったことが許されないが、貴様らが今やったことは許されるのか!? 殺戮ではないか!!」
「……っ……!?」
でも……そんなの……私知らなかったんだもん……。
フローラが作ってた魔法具が……あんなモノだったなんて……。
「この次相まみえた時こそは、貴様を必ず殺す」
そう言うと、アッシュは上空に黒炎を花火のように打ち上げる。
そして、生き残った帝国軍と共に撤退していった。
私だってこんなつもりじゃなかったのに……。
私は……アリアを守りたくて、大切なモノを守りたくて闘ってるだけなのに……。
モルデン砦防衛戦に勝利したものの、後味の悪さのような心のわだかまりが残ったんだ――。