ルーナの怪我も全快し、私達冥土隊……というより紫狼騎士団には新たな任務を与えられた。
フローラが作った巨大な魔法具の輸送の警護だ。
今前線の拠点となっている、モルデン砦ってとこまで運ぶみたい。
リフデ王子はベラを連れてくなってうるさかったけど、ベラが何とか鎮めて一緒に来ている。
バラバラにした部品を運んでるんだけど、それにしてもすっごい大きさだ。
部品を運ぶ馬車と護衛が長い列を作ってるや。
何なんだろ、この魔法具。
極秘とか何とかでフローラも教えてくれないしさ。
「フローラ、モデルン砦ってとこまで行ってアリアと私達はどうするの?」
「んーっ、簡単に言えばボクが魔法具を組み上げるまで、砦を守ることだねっ!!」
今回はフローラが作った巨大魔法具が今回の作戦の要になるってことかな。
難しいことは良く分からないけど、モルデン砦を守れば良いんだよね。
また……アッシュやカニバルが来るのかな?
アッシュと対等に闘えたあの時の私なら、簡単には負けないはず。
次こそは――必ず倒す。
*****
モルデン砦に着くと、疲弊した白犬騎士団の騎士や傭兵達が何千人といた。
私達が到着したことに気づいたのか、白犬騎士団団長のアールさんが近づいて来る。
そして、ロランと話し合いを始めた。
「ロラン殿! そして、紫狼騎士団の皆様! 良く来てくれたのであーる!!」
「アールさん、首尾はいかがですか?」
「どうもこうも、この通りであーる! 休戦協定が反故されてから、こちらも士気が高いであーるが、帝国軍の士気も高く、前線は激戦であーる!!」
二人が話してる間、私が周囲を見渡していると、はるか昔にお世話になった人を見つけた。
スキンヘッドで顔に傷があって、目つきが悪くて傍目からでもわかるあの不愛想さ……。
「ほぇ!? あの人ってまさか……ゼルトナさん!? 傭兵の!」
「え?」
アリアは目が見えないから誰か思い出せないようだ。
「ほらっ! 私達がスラム街に住む前、王都に入る時に護衛に付いてくれてた人だよ!!」
「近くにいらっしゃるの!?」
「うん! 挨拶しに行こうよ!! 連れてってあげるからさ!」
ロランとアールさんとフローラが魔法具を運ぶために、ややこしい段取りを進める中、私はアリアの手を引いてゼルトナさんの元へと向かった。
「ゼルトナさん!」
「……誰だ?」
ゼルトナさんは私達のこと憶えてないみたい。
そりゃ会った時ちっちゃい頃だったし、無理もないか。
「私がヒメナでこっちがアリアだよ! ほらっ、何年も前にゼルトナさんがゴルドの護衛をしていた時の!」
「……ああ、あの時の子供か。大きくなったな」
久しぶりに会ったというのに、ゼルトナさんは相変わらず無愛想だ。
けど、無愛想というより余裕と元気が無いような……。
「ほぇ? もしかして、ゼルトナさん怪我してる?」
よく見るとゼルトナさんは脇腹の辺りを押さえていた。
「大したことはない。少し痛むだけだ」
【快癒の歌】
アリアはゼルトナさんの強がりを聞いて歌い始める。
そこに集う騎士や兵士達の傷は全快にまでは至らないけど、歌声が聴こえる範囲で癒えていった。
「これは……!?」
「傷が……」
「まさか噂の……歌姫様!?」
ゼルトナさんを始めとした、怪我をした皆が驚いている。
アリアの歌魔法を見るのが初めての人が多いんだろうな。
「そうか、確かアリアと言ったか? お前が噂の歌姫だったか。随分と出世したな」
「はい、眼は見えなくなりましたが」
「そうか」
アリアが歌い、怪我が多少回復してもやっぱり無愛想なゼルトナさん。
「大丈夫? ゼルトナさん」
「ヒメナ……だったな。他人と出来るだけ関わらずに、自分のことだけを考えろと教えたはずだ。他人と関わろうとすれば、いずれ自分が死ぬと言ったこと、忘れたか?」
ゼルトナさんは立ち上がって、私に昔言ったことをもう一度言う。
「確かに……言われたけど、大人の鉄則だったっけ?」
「そうだ。もう無関係の俺とは関わるな」
もう大人っちゃ大人だけど、ゼルトナさんが言ってることが未だに良く分かんないや。
「傷を癒してくれたことは、感謝する」
アリアに礼を言ったゼルトナさんは、踵を返して私達の元から離れて行った。
「アリア、ゼルトナさんが言ってたこと……わかる?」
「ううん、わからない……だけど、あの人なりの人生の答えなんじゃないかな?」
他人に関わらない。
自分のことだけを考える。
それがゼルトナさんの人生の答えなんだとしたら、何だか凄く寂しいな。
私はそんなことを考えながら、何処かへと行くゼルトナさんの背中を見送った。
*****
魔法具の部品が輸送される中、モルデン砦に何かの兵器が運ばれているとの情報を得ていた帝国軍。
モルデン砦を睨む帝国軍の一万人の所には――。
「王国が何を運んだかは知らんが、重要な物であろう」
「おじさん、張り切っちゃお」
炎帝アッシュと震帝カニバルが到着した。
フローラが作った巨大な魔法具の輸送の警護だ。
今前線の拠点となっている、モルデン砦ってとこまで運ぶみたい。
リフデ王子はベラを連れてくなってうるさかったけど、ベラが何とか鎮めて一緒に来ている。
バラバラにした部品を運んでるんだけど、それにしてもすっごい大きさだ。
部品を運ぶ馬車と護衛が長い列を作ってるや。
何なんだろ、この魔法具。
極秘とか何とかでフローラも教えてくれないしさ。
「フローラ、モデルン砦ってとこまで行ってアリアと私達はどうするの?」
「んーっ、簡単に言えばボクが魔法具を組み上げるまで、砦を守ることだねっ!!」
今回はフローラが作った巨大魔法具が今回の作戦の要になるってことかな。
難しいことは良く分からないけど、モルデン砦を守れば良いんだよね。
また……アッシュやカニバルが来るのかな?
アッシュと対等に闘えたあの時の私なら、簡単には負けないはず。
次こそは――必ず倒す。
*****
モルデン砦に着くと、疲弊した白犬騎士団の騎士や傭兵達が何千人といた。
私達が到着したことに気づいたのか、白犬騎士団団長のアールさんが近づいて来る。
そして、ロランと話し合いを始めた。
「ロラン殿! そして、紫狼騎士団の皆様! 良く来てくれたのであーる!!」
「アールさん、首尾はいかがですか?」
「どうもこうも、この通りであーる! 休戦協定が反故されてから、こちらも士気が高いであーるが、帝国軍の士気も高く、前線は激戦であーる!!」
二人が話してる間、私が周囲を見渡していると、はるか昔にお世話になった人を見つけた。
スキンヘッドで顔に傷があって、目つきが悪くて傍目からでもわかるあの不愛想さ……。
「ほぇ!? あの人ってまさか……ゼルトナさん!? 傭兵の!」
「え?」
アリアは目が見えないから誰か思い出せないようだ。
「ほらっ! 私達がスラム街に住む前、王都に入る時に護衛に付いてくれてた人だよ!!」
「近くにいらっしゃるの!?」
「うん! 挨拶しに行こうよ!! 連れてってあげるからさ!」
ロランとアールさんとフローラが魔法具を運ぶために、ややこしい段取りを進める中、私はアリアの手を引いてゼルトナさんの元へと向かった。
「ゼルトナさん!」
「……誰だ?」
ゼルトナさんは私達のこと憶えてないみたい。
そりゃ会った時ちっちゃい頃だったし、無理もないか。
「私がヒメナでこっちがアリアだよ! ほらっ、何年も前にゼルトナさんがゴルドの護衛をしていた時の!」
「……ああ、あの時の子供か。大きくなったな」
久しぶりに会ったというのに、ゼルトナさんは相変わらず無愛想だ。
けど、無愛想というより余裕と元気が無いような……。
「ほぇ? もしかして、ゼルトナさん怪我してる?」
よく見るとゼルトナさんは脇腹の辺りを押さえていた。
「大したことはない。少し痛むだけだ」
【快癒の歌】
アリアはゼルトナさんの強がりを聞いて歌い始める。
そこに集う騎士や兵士達の傷は全快にまでは至らないけど、歌声が聴こえる範囲で癒えていった。
「これは……!?」
「傷が……」
「まさか噂の……歌姫様!?」
ゼルトナさんを始めとした、怪我をした皆が驚いている。
アリアの歌魔法を見るのが初めての人が多いんだろうな。
「そうか、確かアリアと言ったか? お前が噂の歌姫だったか。随分と出世したな」
「はい、眼は見えなくなりましたが」
「そうか」
アリアが歌い、怪我が多少回復してもやっぱり無愛想なゼルトナさん。
「大丈夫? ゼルトナさん」
「ヒメナ……だったな。他人と出来るだけ関わらずに、自分のことだけを考えろと教えたはずだ。他人と関わろうとすれば、いずれ自分が死ぬと言ったこと、忘れたか?」
ゼルトナさんは立ち上がって、私に昔言ったことをもう一度言う。
「確かに……言われたけど、大人の鉄則だったっけ?」
「そうだ。もう無関係の俺とは関わるな」
もう大人っちゃ大人だけど、ゼルトナさんが言ってることが未だに良く分かんないや。
「傷を癒してくれたことは、感謝する」
アリアに礼を言ったゼルトナさんは、踵を返して私達の元から離れて行った。
「アリア、ゼルトナさんが言ってたこと……わかる?」
「ううん、わからない……だけど、あの人なりの人生の答えなんじゃないかな?」
他人に関わらない。
自分のことだけを考える。
それがゼルトナさんの人生の答えなんだとしたら、何だか凄く寂しいな。
私はそんなことを考えながら、何処かへと行くゼルトナさんの背中を見送った。
*****
魔法具の部品が輸送される中、モルデン砦に何かの兵器が運ばれているとの情報を得ていた帝国軍。
モルデン砦を睨む帝国軍の一万人の所には――。
「王国が何を運んだかは知らんが、重要な物であろう」
「おじさん、張り切っちゃお」
炎帝アッシュと震帝カニバルが到着した。