私が王都に戻り、王城に住んでから一か月が経った。
ブレアが壊した魔法具を直し終えたフローラが、私の義手の製作に取り掛かってくれている。
フローラ曰く、もっと早く出来る予定だったらしかったけど、何だか変な機能を付けたいらしく時間がかかってるみたい。
私の右手をどんなのにする気……?
普通の義手で良かったのに……。
かく言う私は、戦争の前線が少し落ち着いていて暇を持て余すモルテさんに、毎日のように訓練所に拉致されている。
アリアと一緒にいたいから、アリアのお世話とかもしたいのにぃ〜。
「おらおらぁ!!」
「はああぁぁ!!」
という訳で、絶賛訓練中。
最近はモルテさんを十回位は殺せるようにはなった。
それでも結局モルテさんのマナ量が多過ぎて倒すには程遠いんだけどね。
――模擬戦を終え、モルテさんと一息つく。
「ぎゃははは!! 今日もまた俺の勝ちだな!!」
今日も結局モルテさんを倒しきれないで負けてしまった。
うーん、どうやったらモルテさんを倒せるんだろう。
「にしても、お前ほど骨のあるやつは久しぶりだわ。お前、正式に赤鳥騎士団に来いや」
「ほぇ?」
私が悩んでいると、モルテさんが勧誘してきた。
そんなに、私のこと気に入ってくれたんだ。
この人は裏表がないから、私も好きだ。
もちろん、恋愛感情は皆無だけど。
「赤鳥騎士団に来たらいいぞぉ〜。なんせ、俺は突撃の命令以外出さねぇからな!! ロランみたいにまどろっこしくねぇ!!」
「ほぇ!?」
赤鳥騎士団は前線に行かされることが多くて死傷者が尋常じゃないって聞いたけど、この人のせいじゃないのかな!?
「どうだ? お前もあんな腹黒野郎に着いてくのは嫌だろ!?」
それはもちろん嫌だしモルテさんのことは好きだけど……赤鳥騎士団にはなくて、紫狼騎士団にはあるモノがあるから。
「私、アリア……歌姫とは親友なんです。だから……ごめんなさい」
「……ったく、振られちまったかーっ。お前ならシャルジュみたいに簡単にゃ死なないと思ったのによーっ。皆死にやがるから今赤鳥騎士団、正式にゃ三人だぜ、三人。後は傭兵と兵士で補填してるだけだから、雑魚しかいやしねぇ」
か……簡単に死ぬような命令出さないようにしたらいいんじゃないかな?
逆に赤鳥騎士団が闘う所を見てみたくなって来るよ。
「まぁお前が決めてんだったら、しゃーねぇか。気が変わったらいつでも言えや!」
そういって私の背中をバシバシと叩いて来るモルテさん。
本当に豪快で面白い人だなぁ。
「モルテ団長ーっ!!」
「あぁ?」
「ほぇ?」
私達が談笑していると、甲高い女性の叫び声が聞こえてくる。
眼鏡をかけ、紫色のカールした髪の女性が巨乳を揺らしながら走ってきていた。
いや、走ってるけど……遅っ!!
「ぶぇ!?」
そして何もない所で転んだ。
おでこを打ったのかおでこを抑えてうずくまっている。
私達が近付いた方が早そうなので、うずくまってるナーエさんの元へとモルテさんと私は歩いた。
「おい、ナーラ。大丈夫か?」
「ナーラじゃない! ナーエです、ナーエ!! 何回言ったら覚えるんですか!? 鳥頭団長!!」
ズレた眼鏡を直し、こけた際についた砂埃を払うナーエさん。
しっかりしているように装っているけど、多分この人……天然だ。
「ぎゃははは!! まぁ、何でもいーじゃねーか。名前なんてよ。んで、どうした?」
「はっ! そうでした!! これを見て下さい!!」
ナーエはモルテさんと私に、持っている本を見せる。
「「何だこりゃ?」」
ナーエさんの本に書かれていた内容はこうだった。
---------------------
ななな、何てことよー!?
王都に突然魔物の大群が攻めてくるなんて!!
それも飛竜ばっかり!!
やっぱり赤鳥騎士団みたいな馬鹿の集団に入らないで、実家に帰るべきだったんだ!!
王都はみんな焼かれちゃうし、人は大勢死んでるし、私ももう殺されちゃうよー!!
---------------------
妄想日記かよ……。
「おい。妄想働かすくらいなら闘気くらい扱えるようにしろっつーの」
「何回説明すれば良いんですか!?私の魔法は【予知】だって言ったでしょ!? もうすぐ起こるんですよ!! ここに書かれたことが!!」
もうすぐここに書かれたことが起こる?
ってことは――これは妄想じゃなくて現実に起こるってこと!?
「【予知】ってことは……王都が魔物の群れに襲われる!?」
「だから、さっきからそう言ってるじゃないですか!?」
「ぎゃははは!! だったら最高じゃねーか!! 飛竜の大群か、ワクワクすんぜ!!」
戦闘馬鹿のモルテさんは笑ってるけど、冗談じゃ済まないよ!?
「ナーエさん、ちょっと飛ばすよ!!」
「へ? ええええ!?」
私はナーエさんを左手で抱え、急いで嫌いなロランの元へと向かった――。
*****
王城の廊下でロランを見つけた私は、ナーエさんの【予知】の魔法の話をした。
いの一番にロランに話をしたのは、ロランなら状況を理解するのも早く、迅速に行動すると思ったからだ。
大大大っ大嫌いだけど!
「【予知】ねぇ……どれくらい確かな情報なんだい? これは」
「えっと……魔法を使うと私の身に起こる一時間以内の出来事を自動書記します」
「で、これを書いたのはいつだい?」
「多分、一時間くらい前です。そこからモルテ団長を探してて……」
ほぇ? 一時間前ってことは……もう……。
嫌な予感がよぎった私が、ふと窓から外を見ると――飛んだ飛竜が大口を開けていた。
ブレアが壊した魔法具を直し終えたフローラが、私の義手の製作に取り掛かってくれている。
フローラ曰く、もっと早く出来る予定だったらしかったけど、何だか変な機能を付けたいらしく時間がかかってるみたい。
私の右手をどんなのにする気……?
普通の義手で良かったのに……。
かく言う私は、戦争の前線が少し落ち着いていて暇を持て余すモルテさんに、毎日のように訓練所に拉致されている。
アリアと一緒にいたいから、アリアのお世話とかもしたいのにぃ〜。
「おらおらぁ!!」
「はああぁぁ!!」
という訳で、絶賛訓練中。
最近はモルテさんを十回位は殺せるようにはなった。
それでも結局モルテさんのマナ量が多過ぎて倒すには程遠いんだけどね。
――模擬戦を終え、モルテさんと一息つく。
「ぎゃははは!! 今日もまた俺の勝ちだな!!」
今日も結局モルテさんを倒しきれないで負けてしまった。
うーん、どうやったらモルテさんを倒せるんだろう。
「にしても、お前ほど骨のあるやつは久しぶりだわ。お前、正式に赤鳥騎士団に来いや」
「ほぇ?」
私が悩んでいると、モルテさんが勧誘してきた。
そんなに、私のこと気に入ってくれたんだ。
この人は裏表がないから、私も好きだ。
もちろん、恋愛感情は皆無だけど。
「赤鳥騎士団に来たらいいぞぉ〜。なんせ、俺は突撃の命令以外出さねぇからな!! ロランみたいにまどろっこしくねぇ!!」
「ほぇ!?」
赤鳥騎士団は前線に行かされることが多くて死傷者が尋常じゃないって聞いたけど、この人のせいじゃないのかな!?
「どうだ? お前もあんな腹黒野郎に着いてくのは嫌だろ!?」
それはもちろん嫌だしモルテさんのことは好きだけど……赤鳥騎士団にはなくて、紫狼騎士団にはあるモノがあるから。
「私、アリア……歌姫とは親友なんです。だから……ごめんなさい」
「……ったく、振られちまったかーっ。お前ならシャルジュみたいに簡単にゃ死なないと思ったのによーっ。皆死にやがるから今赤鳥騎士団、正式にゃ三人だぜ、三人。後は傭兵と兵士で補填してるだけだから、雑魚しかいやしねぇ」
か……簡単に死ぬような命令出さないようにしたらいいんじゃないかな?
逆に赤鳥騎士団が闘う所を見てみたくなって来るよ。
「まぁお前が決めてんだったら、しゃーねぇか。気が変わったらいつでも言えや!」
そういって私の背中をバシバシと叩いて来るモルテさん。
本当に豪快で面白い人だなぁ。
「モルテ団長ーっ!!」
「あぁ?」
「ほぇ?」
私達が談笑していると、甲高い女性の叫び声が聞こえてくる。
眼鏡をかけ、紫色のカールした髪の女性が巨乳を揺らしながら走ってきていた。
いや、走ってるけど……遅っ!!
「ぶぇ!?」
そして何もない所で転んだ。
おでこを打ったのかおでこを抑えてうずくまっている。
私達が近付いた方が早そうなので、うずくまってるナーエさんの元へとモルテさんと私は歩いた。
「おい、ナーラ。大丈夫か?」
「ナーラじゃない! ナーエです、ナーエ!! 何回言ったら覚えるんですか!? 鳥頭団長!!」
ズレた眼鏡を直し、こけた際についた砂埃を払うナーエさん。
しっかりしているように装っているけど、多分この人……天然だ。
「ぎゃははは!! まぁ、何でもいーじゃねーか。名前なんてよ。んで、どうした?」
「はっ! そうでした!! これを見て下さい!!」
ナーエはモルテさんと私に、持っている本を見せる。
「「何だこりゃ?」」
ナーエさんの本に書かれていた内容はこうだった。
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ななな、何てことよー!?
王都に突然魔物の大群が攻めてくるなんて!!
それも飛竜ばっかり!!
やっぱり赤鳥騎士団みたいな馬鹿の集団に入らないで、実家に帰るべきだったんだ!!
王都はみんな焼かれちゃうし、人は大勢死んでるし、私ももう殺されちゃうよー!!
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妄想日記かよ……。
「おい。妄想働かすくらいなら闘気くらい扱えるようにしろっつーの」
「何回説明すれば良いんですか!?私の魔法は【予知】だって言ったでしょ!? もうすぐ起こるんですよ!! ここに書かれたことが!!」
もうすぐここに書かれたことが起こる?
ってことは――これは妄想じゃなくて現実に起こるってこと!?
「【予知】ってことは……王都が魔物の群れに襲われる!?」
「だから、さっきからそう言ってるじゃないですか!?」
「ぎゃははは!! だったら最高じゃねーか!! 飛竜の大群か、ワクワクすんぜ!!」
戦闘馬鹿のモルテさんは笑ってるけど、冗談じゃ済まないよ!?
「ナーエさん、ちょっと飛ばすよ!!」
「へ? ええええ!?」
私はナーエさんを左手で抱え、急いで嫌いなロランの元へと向かった――。
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王城の廊下でロランを見つけた私は、ナーエさんの【予知】の魔法の話をした。
いの一番にロランに話をしたのは、ロランなら状況を理解するのも早く、迅速に行動すると思ったからだ。
大大大っ大嫌いだけど!
「【予知】ねぇ……どれくらい確かな情報なんだい? これは」
「えっと……魔法を使うと私の身に起こる一時間以内の出来事を自動書記します」
「で、これを書いたのはいつだい?」
「多分、一時間くらい前です。そこからモルテ団長を探してて……」
ほぇ? 一時間前ってことは……もう……。
嫌な予感がよぎった私が、ふと窓から外を見ると――飛んだ飛竜が大口を開けていた。