森の地帯をようやく越えると、そこは打って変わって建物が立ち並ぶ都市部になった。当然、地方から出たことのない幼い二羽はこの場所に来るのは初めてであった。
「わぁ!すごいね。ここが街か」
「見てみてフォルン。全部石の木が立ってるみたい!」
「違うよハニエ。あそこは天使たちが住みかにしてるところなんだよ」
「じゃあ木じゃん」
二羽が興奮を抑えきれずにペチャクチャと喋っている間に、”目的地”はどんどん彼らのもとに近づいていた。
「あともうすぐ!楽しみね」
「大樹からだとあんなに小さかったのに、近くで見るとこんなに大きいんだね」
すると突然、二羽を抱えていたウリルは翼をはためかせるのをやめ、一気に下降して地面に着地した。驚いたフォルンとハニエは、どうしたのかと聞くような目でウリルの顔を覗き見た。
「どうしたのウリル?まだ着いてないよね?」
ハニエが心配そうに聞く。目的地は目に見えているものの、まだ前方数百メートルと、下ろすには少し遠すぎる場所だった。ウリルは難しい顔をしながら二羽に語り掛ける。
「わしが送れるのはここまでじゃ。あとはふたりの足で行きなさい」
あまりに唐突なウリルの言葉に二羽は困惑の表情を隠せなかった。
「そんな!最後まで送っていってよ」
「すまんの。この体じゃ、やはり長く飛ぶのは難しいようじゃ」
真剣だった表情を無理やり笑顔にして言う。それでもウリルに抱き着いて駄々をこねるフォルンの背後で、ハニエは落ち着きを取り戻して口を開いた。
「...まあ、遅れそうになってたのは元はといえばフォルンのせいだしね。こんなに早く来れたのもウリルのおかげだし、あとは自分たちで歩きましょ!」
「えー、そんなぁ」
「はっはっは、ハニエはしっかりものになったな。まあそういうことじゃ、焦らず気を付けて行きなさい。とはいっても、早く行かんと時間に遅れるぞい。ほら、走った走った」
するとハニエはフォルンの手を持つなり、彼を引っ張りながら道を走り始めた。「ちょ、待ってよハニエ!」と騒ぎながら幼馴染に連れていかれる様子を、ウリルはただその場でほほ笑んで手を振りながら見届けるだけだった。しかし突然、フォルンが手を振りほどくなり、彼は急ぎ足でウリルのもとへと駆け寄って来た。
「まって!!」
老天使のそばまで来ると、息が上がったのを抑えながらこう口を開いたのだった。
「あのさ......森に戻ったら、またあの話をするって約束して!」
放たれた言葉以上に、その潤いきった目は、幼い少年の心情を語っていた。そんなかわいらしくもまっすぐな様子に、老天使は笑みがこぼれながら、しかし少年の言ったこととは裏腹に、その笑みはまるで永遠の別れかのような色をしていた。
「ああ、絶対じゃ。体に気を付けるんじゃぞ、フォルン」
「うん!行ってきます」
しかし幸いか、そんな意図を読み取れてしまうほど彼は大人ではなかったのか、体の向きを変えると、振り返ることなくハニエのもとへと走っていった。
「じゃあね、ウリル。またいつかねー!!」
遠くで待っていたハニエも老天使にしばしの別れの言葉を送った。二羽はそのまま、飛べないながらも小さな翼をばたつかせながら走っていった。その光景は、いつも二羽が丘で遊んでいたときとまるで変わりないように見えたそうだ。
「わしだって、最後まで送ってやりたかったわい...」
「わぁ!すごいね。ここが街か」
「見てみてフォルン。全部石の木が立ってるみたい!」
「違うよハニエ。あそこは天使たちが住みかにしてるところなんだよ」
「じゃあ木じゃん」
二羽が興奮を抑えきれずにペチャクチャと喋っている間に、”目的地”はどんどん彼らのもとに近づいていた。
「あともうすぐ!楽しみね」
「大樹からだとあんなに小さかったのに、近くで見るとこんなに大きいんだね」
すると突然、二羽を抱えていたウリルは翼をはためかせるのをやめ、一気に下降して地面に着地した。驚いたフォルンとハニエは、どうしたのかと聞くような目でウリルの顔を覗き見た。
「どうしたのウリル?まだ着いてないよね?」
ハニエが心配そうに聞く。目的地は目に見えているものの、まだ前方数百メートルと、下ろすには少し遠すぎる場所だった。ウリルは難しい顔をしながら二羽に語り掛ける。
「わしが送れるのはここまでじゃ。あとはふたりの足で行きなさい」
あまりに唐突なウリルの言葉に二羽は困惑の表情を隠せなかった。
「そんな!最後まで送っていってよ」
「すまんの。この体じゃ、やはり長く飛ぶのは難しいようじゃ」
真剣だった表情を無理やり笑顔にして言う。それでもウリルに抱き着いて駄々をこねるフォルンの背後で、ハニエは落ち着きを取り戻して口を開いた。
「...まあ、遅れそうになってたのは元はといえばフォルンのせいだしね。こんなに早く来れたのもウリルのおかげだし、あとは自分たちで歩きましょ!」
「えー、そんなぁ」
「はっはっは、ハニエはしっかりものになったな。まあそういうことじゃ、焦らず気を付けて行きなさい。とはいっても、早く行かんと時間に遅れるぞい。ほら、走った走った」
するとハニエはフォルンの手を持つなり、彼を引っ張りながら道を走り始めた。「ちょ、待ってよハニエ!」と騒ぎながら幼馴染に連れていかれる様子を、ウリルはただその場でほほ笑んで手を振りながら見届けるだけだった。しかし突然、フォルンが手を振りほどくなり、彼は急ぎ足でウリルのもとへと駆け寄って来た。
「まって!!」
老天使のそばまで来ると、息が上がったのを抑えながらこう口を開いたのだった。
「あのさ......森に戻ったら、またあの話をするって約束して!」
放たれた言葉以上に、その潤いきった目は、幼い少年の心情を語っていた。そんなかわいらしくもまっすぐな様子に、老天使は笑みがこぼれながら、しかし少年の言ったこととは裏腹に、その笑みはまるで永遠の別れかのような色をしていた。
「ああ、絶対じゃ。体に気を付けるんじゃぞ、フォルン」
「うん!行ってきます」
しかし幸いか、そんな意図を読み取れてしまうほど彼は大人ではなかったのか、体の向きを変えると、振り返ることなくハニエのもとへと走っていった。
「じゃあね、ウリル。またいつかねー!!」
遠くで待っていたハニエも老天使にしばしの別れの言葉を送った。二羽はそのまま、飛べないながらも小さな翼をばたつかせながら走っていった。その光景は、いつも二羽が丘で遊んでいたときとまるで変わりないように見えたそうだ。
「わしだって、最後まで送ってやりたかったわい...」