◯一話
 誰からも愛されているように見えた勇者アースが暗殺された。そこで、勇者アースが伝えた方法で次期勇者を決定することに。それは、推薦された五十人の勇者候補者が勇者学校に集まり、一年間共に学んで競い合うなかで一人を選ぶというものだ。
 全員がライバルとなるためピリついた空気が流れる中、初めて学校というものに通い、歳の近い者たちと出会ったバルサは浮かれていた。人と対面するたびに笑顔で挨拶をして仲良くなろうと試みる。しかしうまくはいかなかった。その理由は単に皆が気を張っているからというだけではない。バルサが勇者アースの息子であることを知っていたからだ。いい気になるなと冷たくあしらわれて落ち込んでいると、一人の少女エリアナに声をかけられる。喜んでいたのも束の間、彼女はバルサの秘密を知っていた。
「バルサ、ずっと会いたかったの。貧困街の勇者様」

◯二話
 過去シーン。実はバルサは勇者アースの子供ではなかった。暗殺者に狙われていたアースの息子が殺される前にと具現化したスキルを運良く手にし、そのことを知ったアースに息子の代わりを頼まれ育てられたのだった。勇者の子供が殺された、などというのはあまりにも不名誉であるからだ。それまで貧困街で生きていたバルサの生活は一変。勇者アースのため、そして自分の力でこの国をより良くするために努力してきた。
 当時、バルサが勇者アースに拾われたという噂は貧困街の一部にのみ広まった。そしてそのことを知った一人がエリアナであった。変わるきっかけをくれたバルサに感謝するエリアナは、バルサが勇者になれるよう援助すると言う。しかしバルサは援助は断り、対等に支え合おうと同盟を組む。

◯三話
 入学試験として二人一組で戦うことに。バルサとエリアナはすぐにペアを組む。対戦相手はチームワークのかけらもなく、さらに一人は一切攻撃せず、もう一人も力を押さえているようだった。相手を伺いながら戦うバルサ。戦いの中でエリアナにスキルがないことに気づき、それをも覆す剣術に圧倒される。最終的に相手が何か仕掛けてくることもなくあっさりと勝利したが、快感はない。
 対戦後、相手の一人、カインが他の候補者に馬鹿にされていた。精霊貴族の有望者なのにそんなものか、といった内容だ。しかしカインはヘラヘラと笑っている。さらに、カインのペアであったサジが気にしたように俯いたのを見逃さず、「次は勝とうな」と微笑んだ。それに対してサジは自分の手を見つめるだけ。
 カインに好感を抱き、サジに興味を持ったバルサは二人のことも同盟に入れる。

◯三話以降
 他の候補者たちも同盟を組むことの有利さを感じ、次第に五十人が細分化されていく。一番大きな組は十五人。バルサたちの四人という数は多くはなかったが、互いの強みや弱みを理解して補っていくことで力を高める。
 サジはエリアナ同様スキルがないのだと伝えたため、エリアナと対になるよう防護術を固めることに。
 四人の強さは他の組にも一目置かれるとともに敵視される存在となる。その分演習で狙われやすくなったり卑劣な方法を使われたりすることも。それでも四人は協力して乗り越える。
 しばらくすると、学校側が候補者を半分に減らして少数精鋭での教育を目指すと言い出しより空気がピリつく。中には相手を陥れて自分をあげようとする者も。そこでエリアナやカインの過去が明らかになっていく。それを理由にカインが学校をやめようとするなどの事態も起こるがバルサの対応により免れ、カインがスキルを解放する契機となる。エリアナは気にする素振りを見せなかったが、実は苦しんでいると気づいたバルサの行動が彼女の傷を癒す。候補者の選抜は五十人が一斉に個人で戦うという方法が取られたが、やはり皆同盟の中で作戦を立てる。バルサたちはお互いの強みを引き出すことでなんとか勝利を掴んだ。
 その直後、暗殺者が勇者学校の候補者を狙い始める。遭遇してしまったバルサだが、人を愛することを知らないバルサには暗殺者ディナーのスキルが効かなかった。ディナーはバルサを気に入り、その後もしばしば対面するように。
 次第に実際に魔物と戦う機会も出てくる。そこでようやくサジは本当のスキルを伝えた。それにより四人の戦いの幅が広がる。また、実践経験豊富なエリアナの知識が活かされる。魔物との戦いでバルサは初めて直接国民に感謝され、今後のさらなる努力に繋がった。
 九ヶ月ほど経つと、学校側がチームを組んだ戦闘を求め出した。今までは候補者が自由にやっていたことだったが、ここからは学校側の指示により決められた五人一組のチームで協力することに。今までの同盟相手と戦うことに躊躇いを感じながらも四人はそれぞれ進んでいく。
 そんな中で再び人数を減らされることに。十人のみにすると言うのだ。しかも戦闘は決められた組ごと。多くても四人のうち二人しか残れないと思ったが、実際は勝ったチームが残るわけではなく良い働きをした十人が抜粋されたため、四人ともが選ばれた。
 十人きりになり、勇者決定まで残り一ヶ月。改めて誰か一人が勇者になるのだという意識が芽生え始める。四人は協力しながらもライバルであることを再認識し、一人きりで世界と向き合う覚悟を固める。
 最後の決戦ののち、バルサが勇者として選ばれた。学んだことを活かして奮闘するうちに新しい勇者として国民に慕われていく。そんな彼の横には三人の仲間がいた。