家を出て15分ほど歩いたところで、うっすらと海が見えてくる。
辺りに街灯はなく、薄暗いが微かに聞こえてくる波の音と潮の香り。
ザザーッと波が浜辺に流れては、すぐさま引いていくのが感じ取れる。
たったそれだけのことなのに、感傷的な気分に陥ってしまっている私。
隣を歩く彼もそうだったらいいのになと思ってしまう。
私たちの青春の日々を思い出してくれたらと。
「隆ちゃん!」
「ん?」
薄暗い海を背景に、消えてしまいそうな彼。ポツポツと道路に設置された街灯が時折、彼の顔を明るく照らすもその様子はどこか冴えない。
「ここ覚えてる?」
私は絶対に忘れない思い出の場所。
「もちろん、覚えているよ。僕が陽菜に告白した場所だからね」
2年前ここで、私は片想いだと思っていた隆ちゃんに告白された。
当時、私たちには何の繋がりもなかった。話したことさえなければ、クラスが同じだったわけではない。
学校の人気者である隆太は、誰からも好かれており、男女問わず友達も多かった。
そんな彼に恋をしたのは、ロマンチックな出来事や危機的状況を助けてもらったからではない。
純粋に彼の容姿に一目惚れだった。
自分でもわかってはいた。この恋が実ることは絶対にあり得ないことだと。
例え、天地がひっくり返ろうとも彼が私を好きになることなんて。
それなのに、あの日。大雨によって、海が荒れていた日。
私は今歩いている海岸沿いで彼に告白をされた。
「君のことが好きなんだ」と単刀直入に。これが、初めて彼が私に向けて話した言葉だった。
なぜ、隆ちゃんが学年でも目立っているわけでもなく、とびきり容姿が優れているわけでもない私を好きになったのか。
今でもその答えは聞けていない。
正直、付き合っていた当初は答えを聞くのが怖かった。
人気者の彼が私に告白してきたのは、何かしらの罰ゲームだったのではないかと。
しかし、次第にその考えはあっけなく打ち消されてしまった。
疑っていた自分がひどく恥ずかしくなるくらい、彼の目には私しか映っていなかったんだ。
「何でさ、私を好きになったの・・・」
「えっ」
「え、あ! ごめん!」
頭で考えていたはずが、自然と言葉にしてしまっていた。
こんな形で聞くつもりはなかったのに、私の間抜け。
チラッと横目で彼を見ると、恥ずかしそうに俯いたまま歩いていた。
暗くてはっきりとはわからないが、頬がほんのりと赤みがかっているのは気のせいだろうか。
そんなことでさえ、愛おしく感じる。彼がまだ私のことを好きでいてくれているのが、伝わってくるたびに胸が締め付けられてしまうが...
「ずっと見てたんだ」
ボソッと呟かれた彼の言葉を私は聞き逃さなかった。
「陽菜のことは、入学式の日から気になってた。嘘だと思われるかもしれないけど、一目惚れだったんだ。うまく言葉では言えないけれど、桜の持つ魅力みたいにさ、自然と目が惹かれたんだよ。僕もなんで好きになったかはわからない。ただ、他の誰よりも陽菜が綺麗で、僕には輝いて見えた。まるで、僕を照らしてくれる光のようにね」
スーッと言葉が胸の奥底へと落ちていくと同時に、罪悪感がメラメラと浮上してくる。
私は彼の「光」などではない。私は...
「お、見てよ陽菜!」
私たちを包む空気を切り裂くように、発せられた彼の声に俯いていた顔を上げる。
彼が指差す方向へと視線を流すと、そこには満天の星空が広がっていた。
今の私たちを照らしてくれる道標のように煌々と光る星々。
手を伸ばせば届きそうに見えるも、実際の距離はとてつもなく遠い。
まるで、私と隆ちゃんのように。
触れられそうで、触れられないたった数センチ。
あぁ、苦しいよ。辛いよ。触れたいよ、隆ちゃん。
私の願いは叶わない。空を自由に流れていく星に願ったところで、私はこれから先も孤独なんだ。
その瞬間、一つの星が左上空から右へとたった数秒で流れていった。
辺りに街灯はなく、薄暗いが微かに聞こえてくる波の音と潮の香り。
ザザーッと波が浜辺に流れては、すぐさま引いていくのが感じ取れる。
たったそれだけのことなのに、感傷的な気分に陥ってしまっている私。
隣を歩く彼もそうだったらいいのになと思ってしまう。
私たちの青春の日々を思い出してくれたらと。
「隆ちゃん!」
「ん?」
薄暗い海を背景に、消えてしまいそうな彼。ポツポツと道路に設置された街灯が時折、彼の顔を明るく照らすもその様子はどこか冴えない。
「ここ覚えてる?」
私は絶対に忘れない思い出の場所。
「もちろん、覚えているよ。僕が陽菜に告白した場所だからね」
2年前ここで、私は片想いだと思っていた隆ちゃんに告白された。
当時、私たちには何の繋がりもなかった。話したことさえなければ、クラスが同じだったわけではない。
学校の人気者である隆太は、誰からも好かれており、男女問わず友達も多かった。
そんな彼に恋をしたのは、ロマンチックな出来事や危機的状況を助けてもらったからではない。
純粋に彼の容姿に一目惚れだった。
自分でもわかってはいた。この恋が実ることは絶対にあり得ないことだと。
例え、天地がひっくり返ろうとも彼が私を好きになることなんて。
それなのに、あの日。大雨によって、海が荒れていた日。
私は今歩いている海岸沿いで彼に告白をされた。
「君のことが好きなんだ」と単刀直入に。これが、初めて彼が私に向けて話した言葉だった。
なぜ、隆ちゃんが学年でも目立っているわけでもなく、とびきり容姿が優れているわけでもない私を好きになったのか。
今でもその答えは聞けていない。
正直、付き合っていた当初は答えを聞くのが怖かった。
人気者の彼が私に告白してきたのは、何かしらの罰ゲームだったのではないかと。
しかし、次第にその考えはあっけなく打ち消されてしまった。
疑っていた自分がひどく恥ずかしくなるくらい、彼の目には私しか映っていなかったんだ。
「何でさ、私を好きになったの・・・」
「えっ」
「え、あ! ごめん!」
頭で考えていたはずが、自然と言葉にしてしまっていた。
こんな形で聞くつもりはなかったのに、私の間抜け。
チラッと横目で彼を見ると、恥ずかしそうに俯いたまま歩いていた。
暗くてはっきりとはわからないが、頬がほんのりと赤みがかっているのは気のせいだろうか。
そんなことでさえ、愛おしく感じる。彼がまだ私のことを好きでいてくれているのが、伝わってくるたびに胸が締め付けられてしまうが...
「ずっと見てたんだ」
ボソッと呟かれた彼の言葉を私は聞き逃さなかった。
「陽菜のことは、入学式の日から気になってた。嘘だと思われるかもしれないけど、一目惚れだったんだ。うまく言葉では言えないけれど、桜の持つ魅力みたいにさ、自然と目が惹かれたんだよ。僕もなんで好きになったかはわからない。ただ、他の誰よりも陽菜が綺麗で、僕には輝いて見えた。まるで、僕を照らしてくれる光のようにね」
スーッと言葉が胸の奥底へと落ちていくと同時に、罪悪感がメラメラと浮上してくる。
私は彼の「光」などではない。私は...
「お、見てよ陽菜!」
私たちを包む空気を切り裂くように、発せられた彼の声に俯いていた顔を上げる。
彼が指差す方向へと視線を流すと、そこには満天の星空が広がっていた。
今の私たちを照らしてくれる道標のように煌々と光る星々。
手を伸ばせば届きそうに見えるも、実際の距離はとてつもなく遠い。
まるで、私と隆ちゃんのように。
触れられそうで、触れられないたった数センチ。
あぁ、苦しいよ。辛いよ。触れたいよ、隆ちゃん。
私の願いは叶わない。空を自由に流れていく星に願ったところで、私はこれから先も孤独なんだ。
その瞬間、一つの星が左上空から右へとたった数秒で流れていった。