(そら)。ご飯置いておくから食べてね」


朝、仕事に行く前に朝食を部屋の前に置いていく母。
きっと今日も昼食は冷蔵庫に用意してくれているのだろう。


「じゃあお母さんは仕事行ってくるから」


母の言葉に返事をする訳でもなく、玄関の扉が閉まる音を聞く。

それを聞いて部屋の扉を開けると、まさに理想の朝食というような和食と、母の手書きメモがのったお盆が置かれている。

“今日は空の好きなものづくしにしてみたよ。
昼ご飯にはカレーを作ってあるから食べてね。”

学校に関する話題とかではなく、食べ物の話とか、夜ご飯だとその日あったことを書いて、食事とともに届けてくれる。


「ずいぶん増えたなぁ……」


メモをしまってある箱を開けると、メモが溢れ出てくる。

これは僕が両親と食事を共にしていない回数であり、母が僕を想ってくれている証拠だ。


ここから出ようと思ったことはある。

両親は喜んでくれるだろうし、両親があの学校の奴らと同じだとは思っていない。

けど、自分がいるのにいないように思えてしまったあれを体験してしまってからは、誰かと同じ空間で生活するのが怖くなってしまった。