「んぐぁぁぁ~…」
どうしてか、今日はよく眠れた。昨日はトラウマを思い返させるような悪夢だったのに、今日は何の夢を見たかすらも覚えていない。
お母さんを見送って、朝食を食べて、電車に一人揺られて。いつも通りの生活だけれど、少しだけ、生き生きとしている自分がいる。
昨日の夜、少し変化があったからだろうか。
「おはようございます原先生ー」
「おはよう、小野さん。昨日に比べたら、なんかいい感じじゃない」
やっぱり、そうなのかな。私、今日いい感じなのかな。
けれど、うれしい気持ちの中に、ほんのひとさじの、恐怖。
こうやって浮ついた気持ちになると、またあの日みたいな事が起きるのではないかと、心配に思ってしまう自分がいる。
そんな本体の弱い気持ちが出てくると、仮の自分が崩れてきそうな気がしてならない。
なんで、いつもそう考えてしまう思考回路なのだろう。
気持ち悪い感情をこらえて、なんとかいつもと同じ生活をした。
「…昨日、『また』とか言ってたけど」
…いないでしょ。
学校から帰ってきて、ベランダの扉に手を掛けたら、思い出してしまった。
昨晩のことを。
いや、私の癒しのルーティーンを壊されるわけにはいかない。あれは、ただ普通に口癖かなんかで言っちゃったとか。
…第一、人と関わりたくない。ストレス。めんどくさい。
そんなことを考えてしまうようになったのも全て、あの日から。
「…行くしかない、よなぁ」
思い切ってベランダに出て右を向くと、まだ夕矢さんはいなかった。
おっし。今夜こそは。
と思ったら。
「あ…」
「こんばんは」
出てきた。…いや、おかしい。本当におかしい!なんで、なんで同じ時間にベランダに出てくるんだよ!!
「…今夜もベランダで過ごすんですか?」
いやいや、訊いてくることおかしいって!
「え、まぁ、今夜もっていうか、いつも出てるんで…」
「え?夜更かし、体に良くないですよ?まだ高校生なのに」
なんで、まだ出会って少ししか経ってない相手に、理由を伝えないといけないのだろうか。
「…そういうのは、気にしないで下さい」
私はそう言って、少し俯いた。
夕矢さんは、ただ黙っていた。
でも、ここで話さなければ、夕矢さんのモヤモヤがずっと残るかもしれない。
そう思って、私は口を開いた。
どうしてか、今日はよく眠れた。昨日はトラウマを思い返させるような悪夢だったのに、今日は何の夢を見たかすらも覚えていない。
お母さんを見送って、朝食を食べて、電車に一人揺られて。いつも通りの生活だけれど、少しだけ、生き生きとしている自分がいる。
昨日の夜、少し変化があったからだろうか。
「おはようございます原先生ー」
「おはよう、小野さん。昨日に比べたら、なんかいい感じじゃない」
やっぱり、そうなのかな。私、今日いい感じなのかな。
けれど、うれしい気持ちの中に、ほんのひとさじの、恐怖。
こうやって浮ついた気持ちになると、またあの日みたいな事が起きるのではないかと、心配に思ってしまう自分がいる。
そんな本体の弱い気持ちが出てくると、仮の自分が崩れてきそうな気がしてならない。
なんで、いつもそう考えてしまう思考回路なのだろう。
気持ち悪い感情をこらえて、なんとかいつもと同じ生活をした。
「…昨日、『また』とか言ってたけど」
…いないでしょ。
学校から帰ってきて、ベランダの扉に手を掛けたら、思い出してしまった。
昨晩のことを。
いや、私の癒しのルーティーンを壊されるわけにはいかない。あれは、ただ普通に口癖かなんかで言っちゃったとか。
…第一、人と関わりたくない。ストレス。めんどくさい。
そんなことを考えてしまうようになったのも全て、あの日から。
「…行くしかない、よなぁ」
思い切ってベランダに出て右を向くと、まだ夕矢さんはいなかった。
おっし。今夜こそは。
と思ったら。
「あ…」
「こんばんは」
出てきた。…いや、おかしい。本当におかしい!なんで、なんで同じ時間にベランダに出てくるんだよ!!
「…今夜もベランダで過ごすんですか?」
いやいや、訊いてくることおかしいって!
「え、まぁ、今夜もっていうか、いつも出てるんで…」
「え?夜更かし、体に良くないですよ?まだ高校生なのに」
なんで、まだ出会って少ししか経ってない相手に、理由を伝えないといけないのだろうか。
「…そういうのは、気にしないで下さい」
私はそう言って、少し俯いた。
夕矢さんは、ただ黙っていた。
でも、ここで話さなければ、夕矢さんのモヤモヤがずっと残るかもしれない。
そう思って、私は口を開いた。