「…私も、急に不登校になって驚かせちゃったよね。本のことなんて全然忘れて、突然いなくなったから。ごめんなさい」
そんなことないです、と涙を浮かべた細川さんの目が、ギュッと閉じられる。目に溜まっていた涙がじわりとはみ出す。
「…でも細川さんは、きっと私をただ一人気にかけてくれてた。今気づいたとか、もう遅すぎるけど。…悪いのは全部みんなだと思ってたけど、細川さんみたいな優しい気持ちに、あの時は気付けなかった。気付く余裕がなかった。…そんな気持ちを無視して、ごめんね」
言い訳みたいになってしまう私の文章力の無さ。けれど、細川さんは、ずっと首を左右に振っていた。そんなことない、と。
私はその時、言いたいことが言えていない気がして、言葉に何かが足りない、と思った。
一番言わなければいけないことを、言えていなかったんだ。
「…ありがとう、細川さん」
私も、瞳が潤ってくる感覚がした。
二人で、感謝や後悔が混じった、濃い味がする涙を流した。
少し落ち着いて、細川さんと喋っていると、やっぱり細川さんは話しやすいな、と思った。
私がリモート授業を受けていることを知り、すぐに駆けつけてくれたらしい。
今は生徒会に所属しているため、まずはクラスのことから、お手伝いできることはしたいのだそうだ。
真面目に、でも柔らかく話す細川さんは、とても優しくて、芯がある人だなぁと実感した。
…細川さんと、友達になりたい。
「…あの、細川さん」
私はそう言った。
「なんですか?」
「…私と、お友達になってくれませんか」
え、と細川さんはとても驚いた表情をして、ほんのり頬を赤くした。
「よ、喜んで!いいんですか…?嬉しいです」
じゃあ敬語外さなきゃ、と、細川さんは笑った。
久しぶりなこの「友達」という感覚に、胸がワクワクしたりドキドキしたり、私は嬉しさが止まらずにいた。
小学生の時は特に「親友」といった特定で仲のいい人はいなかったし、何より久しぶりの感覚で懐かしかった。
自分のペースで頑張ります、と細川さんに言うと、何かのプロフィールの自己紹介文にありそうな文ですねと言われた。
昼休みが終わり、保健室に自分一人になると、やっぱり二人もいいかも、と感じた。
「ゆ、夕矢」
「…えっ!?藍詩、え?い、今、夕矢って」
「頑張ったんだよ!これでいいでしょ!」
「わ~っ!やばい、呼び捨ての感覚が懐かしすぎる…」
その夜。ついに、夕矢に呼び捨てをしてしまった。罪悪感と少し恥ずかしい思いの自分にあきれてしまった。
でも、今日は報告したい嬉しい出来事がある。
「私、友達できた」
そう言って今日のことを話すと、夕矢はぱっと笑顔になった。
「よかったじゃん、藍詩!仲良くね。藍詩の友達どんな人なのかなぁ…」
私は、そんな夕矢にこう言った。けれど、この発言が、後になってどれだけ後悔するかなんて、知らなかった。
「めっちゃ優しくて真面目で可愛い子」
「それって藍詩じゃん」
「…は?」
ふざけてるのか、本気なのか、無意識なのか。私がそんな完璧女子高生なわけないじゃん。
「…いや、冗談でしょ?」
「え、何が?」
「夕矢!!」
「え…?なんで怒ってんの」
もういっか、と、私は諦めた。夕矢、優しすぎてどうせ人のことが良く見えちゃう奴なんだ。
それにしても、私の心の奥にある何かが、さっきのやりとりを繰り返し呟いている。
この気持ち、なんて言う名前なんだっけ。
初めて感じたその気持ちが、今夜はずっと頭の片隅で発光していた。
そんなことないです、と涙を浮かべた細川さんの目が、ギュッと閉じられる。目に溜まっていた涙がじわりとはみ出す。
「…でも細川さんは、きっと私をただ一人気にかけてくれてた。今気づいたとか、もう遅すぎるけど。…悪いのは全部みんなだと思ってたけど、細川さんみたいな優しい気持ちに、あの時は気付けなかった。気付く余裕がなかった。…そんな気持ちを無視して、ごめんね」
言い訳みたいになってしまう私の文章力の無さ。けれど、細川さんは、ずっと首を左右に振っていた。そんなことない、と。
私はその時、言いたいことが言えていない気がして、言葉に何かが足りない、と思った。
一番言わなければいけないことを、言えていなかったんだ。
「…ありがとう、細川さん」
私も、瞳が潤ってくる感覚がした。
二人で、感謝や後悔が混じった、濃い味がする涙を流した。
少し落ち着いて、細川さんと喋っていると、やっぱり細川さんは話しやすいな、と思った。
私がリモート授業を受けていることを知り、すぐに駆けつけてくれたらしい。
今は生徒会に所属しているため、まずはクラスのことから、お手伝いできることはしたいのだそうだ。
真面目に、でも柔らかく話す細川さんは、とても優しくて、芯がある人だなぁと実感した。
…細川さんと、友達になりたい。
「…あの、細川さん」
私はそう言った。
「なんですか?」
「…私と、お友達になってくれませんか」
え、と細川さんはとても驚いた表情をして、ほんのり頬を赤くした。
「よ、喜んで!いいんですか…?嬉しいです」
じゃあ敬語外さなきゃ、と、細川さんは笑った。
久しぶりなこの「友達」という感覚に、胸がワクワクしたりドキドキしたり、私は嬉しさが止まらずにいた。
小学生の時は特に「親友」といった特定で仲のいい人はいなかったし、何より久しぶりの感覚で懐かしかった。
自分のペースで頑張ります、と細川さんに言うと、何かのプロフィールの自己紹介文にありそうな文ですねと言われた。
昼休みが終わり、保健室に自分一人になると、やっぱり二人もいいかも、と感じた。
「ゆ、夕矢」
「…えっ!?藍詩、え?い、今、夕矢って」
「頑張ったんだよ!これでいいでしょ!」
「わ~っ!やばい、呼び捨ての感覚が懐かしすぎる…」
その夜。ついに、夕矢に呼び捨てをしてしまった。罪悪感と少し恥ずかしい思いの自分にあきれてしまった。
でも、今日は報告したい嬉しい出来事がある。
「私、友達できた」
そう言って今日のことを話すと、夕矢はぱっと笑顔になった。
「よかったじゃん、藍詩!仲良くね。藍詩の友達どんな人なのかなぁ…」
私は、そんな夕矢にこう言った。けれど、この発言が、後になってどれだけ後悔するかなんて、知らなかった。
「めっちゃ優しくて真面目で可愛い子」
「それって藍詩じゃん」
「…は?」
ふざけてるのか、本気なのか、無意識なのか。私がそんな完璧女子高生なわけないじゃん。
「…いや、冗談でしょ?」
「え、何が?」
「夕矢!!」
「え…?なんで怒ってんの」
もういっか、と、私は諦めた。夕矢、優しすぎてどうせ人のことが良く見えちゃう奴なんだ。
それにしても、私の心の奥にある何かが、さっきのやりとりを繰り返し呟いている。
この気持ち、なんて言う名前なんだっけ。
初めて感じたその気持ちが、今夜はずっと頭の片隅で発光していた。