君という夢を描いて

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 元々、涼平は『ブルーヘヴンの彼方に』を執筆していたときの、いわばモブキャラでした。
 梨歩がエディと再会するエピソードを考えている中で、彼女が昏睡状態に陥るほどのショッキングな出来事とは何だろう――と模索した結果、ふと「涼平を故人にする」という案が浮かび、そのまま採用することになりました。
 梨歩にとっては、あまりにも残酷な展開だったかもしれません。
 けれど、大切な人を失った悲しみを抱えながら、それでも未来のステージに立ち、歌う梨歩の姿がとても鮮明に浮かんだため、その展開も物語の一部として描くことにしました。

 皮肉なことに、涼平が亡くなったことで物語は一気に動き出し、驚くほど自然な流れで、梨歩を夢のステージへと導いていくことになりました。
 梨歩の悲しみや葛藤を梨歩自身の視点から描くのは、ある意味では王道だと思います。
 けれど、あるときふと考えました。
 ――もし、これが涼平の視点だったら?

 そう考えた瞬間、彼が何を思い、何を残そうとして、限られた時間をどう生きたのか。
 その生き様を、もっとリアルに描いてみたいと思うようになりました。
 そうして生まれたのが、本作です。

 限りある命の中で、大切な人に何ができるのか。
 そして、自分は本当は何をしたいのか。

 それはきっと、誰にとっても簡単には答えの出ない、壮大な人生のテーマなのだと思います。
 だからこそ、涼平の人生の最後を「青春」で飾りました。

 夢を持って生きる人々を描いた『ブルーヘヴンの彼方に』の世界とリンクさせながら、たとえ志半ばで人生を終えることになったとしても、その人が遺した想いや生きた証は、残された誰かの夢や希望になっていく。
 涼平もまた、そんな存在であってほしいと思いました。
 それが、筆者である私から涼平への敬意であり――この物語そのものが、彼の「存在証明」になったような気がしています。
 よろしければ、本作の元となった『ブルーヘヴンの彼方に』とあわせてお読みいただき、彼らの物語をシリーズとしてお楽しみいただけましたら幸いです。
 最後まで涼平の人生を見届けてくださり、本当にありがとうございました。

【新作のお知らせ】

『Embrace it all―夢の続きを描いて―』を公開しました。

 涼平の指輪ごと梨歩を受け入れた亞紗斗が、梨歩にプロポーズした日の晩。
 亞紗斗は、梨歩の亡くなった恋人・涼平と対面します。
 彼はなぜ、亞紗斗の前に現れたのか。 そして、その時に涼平から渡された一枚の絵とは――。
 本作で描くのは、「Embrace it all」の中核でもある亞紗斗の愛。
 梨歩の過去も、涼平への想いも、そのすべてを受け入れた愛の先に待っていたのは――涼平からの祝福でした。

 実は涼平、七年後に亞紗斗にも会ってました。というお話です。こちらも『Embrace it all―すべてを抱いて、生きていく―』と、併せて読んでいただけると嬉しいです。