君という夢を描いて

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 元々、涼平は『ブルーヘヴンの彼方に』を執筆していたときの、いわばモブキャラでした。
 梨歩がエディと再会するエピソードを考えている中で、彼女が昏睡状態に陥るほどのショッキングな出来事とは何だろう――と模索した結果、ふと「涼平を故人にする」という案が浮かび、そのまま採用することになりました。
 梨歩にとっては、あまりにも残酷な展開だったかもしれません。
 けれど、大切な人を失った悲しみを抱えながら、それでも未来のステージに立ち、歌う梨歩の姿がとても鮮明に浮かんだため、その展開も物語の一部として描くことにしました。

 皮肉なことに、涼平が亡くなったことで物語は一気に動き出し、驚くほど自然な流れで、梨歩を夢のステージへと導いていくことになりました。
 梨歩の悲しみや葛藤を梨歩自身の視点から描くのは、ある意味では王道だと思います。
 けれど、あるときふと考えました。
 ――もし、これが涼平の視点だったら?

 そう考えた瞬間、彼が何を思い、何を残そうとして、限られた時間をどう生きたのか。
 その生き様を、もっとリアルに描いてみたいと思うようになりました。
 そうして生まれたのが、本作です。

 限りある命の中で、大切な人に何ができるのか。
 そして、自分は本当は何をしたいのか。

 それはきっと、誰にとっても簡単には答えの出ない、壮大な人生のテーマなのだと思います。
 だからこそ、涼平の人生の最後を「青春」で飾りました。

 夢を持って生きる人々を描いた『ブルーヘヴンの彼方に』の世界とリンクさせながら、たとえ志半ばで人生を終えることになったとしても、その人が遺した想いや生きた証は、残された誰かの夢や希望になっていく。
 涼平もまた、そんな存在であってほしいと思いました。
 それが、筆者である私から涼平への敬意であり――この物語そのものが、彼の「存在証明」になったような気がしています。
 よろしければ、本作の元となった『ブルーヘヴンの彼方に』とあわせてお読みいただき、彼らの物語をシリーズとしてお楽しみいただけましたら幸いです。
 最後まで涼平の人生を見届けてくださり、本当にありがとうございました。

【新作のお知らせ】

①『君という夢を描いて The after story―Embrace it all―』を公開しました。
これまで『Embrace it all』シリーズとして展開していた物語を、『君という夢を描いて』の続編として加筆・修正し、改稿した作品です。
今回の改稿では、新たなエピソードも追加しました。
追加エピソードによって、これまでとは少し違った亞紗斗の一面も垣間見える内容になっています。
そして今回は、少々コミカルな場面も加わりました。
物語の大きな流れはそのままに、より深くなった人物像や、新しく加わった場面など、既存作品との違いも楽しんでいただければ幸いです。

②『初恋、のちパパになる―憧れのあなたは母になっていた―』を公開しました。
 恋を知らずに生きてきた新米弁護士・神城玲が、再会したのは、かつて憧れていた年上の女性――そして、彼女の腕に抱かれていた小さな赤ちゃんでした。
 これは、玲にとって最初で最後の恋の物語です。
 戸惑いながら恋を知り、大切な人とその子どもを守りたいと願い、少しずつ絆を育みながら、やがて本当の「家族」になっていくまでを描いています。
『リーガルウェポン』から広がった、神城玲の恋愛編。
 恋に不器用な玲が、愛する人と子どもとともに歩んでいく姿を、ぜひ温かく見守っていただけたら嬉しいです。

③『夢の続きは、旋律の彼方に』を公開しました。
 梨歩が歌手デビューを果たした直後のお話です。
 エディが梨歩に「デビュー祝い」と言って、一枚の音源を手渡すところから始まります。
 エディからの楽曲提供かと思いきや、その曲に込められていたのは、亡くなった恋人・涼平が生前に語りきれなかった思い。
 最初はキラキラした旋律にわくわくしていた梨歩が、次第にその中に涼平の存在を感じ始め――最後には涙腺崩壊。
 卑怯なくらい相手の心に入り込んでくる、エディなりの優しさを描いたお話です。