君という夢を描いて

「涼平! 涼平!」

 もう、何も見えない。

 姉貴の嗚咽混じりの声が聞こえてくる。


「涼平……マジかよ」
 成瀬。
「ついこの間までは、元気だったのに。何でこんなことに……」
 織原。
 来てくれたのか。

 でも、どうせ会うならもっと元気なうちに会いたかったな。
 また一緒に飲みたかったな。

「涼平、嘘だろ? 退院したら飲み行こうって言ったやん」
「柴田……」
 泣くな。泣くなよ、お前ら。


 こっちまで泣けてくるやろ。

(ああ、戻りたい)


 俺が余命宣告されてから、どれくらいの時が経ったのだろう。

 どうやら、一ヶ月はもったらしい。気力だけで描いた絵もあるし。


 そういえば、梨歩へのプレゼント。
 姉貴は届けてくれるだろうか。

 せめて最後くらいは、直接会って俺から渡したかった。
 こんな回りくどいことまでしたくなかった。


 それでも、梨歩には生きていてほしい。

 俺のせいで、心臓に負担をかけたくない。


 本当はどうすればよかったのかなんて、わからない。

 傍(はた)から見れば、俺のやってることはただの独りよがりだろう。

 それでも。


 それでも俺は。

 梨歩を死なせたくなかった。


 梨歩には、生きていてほしい。


 たとえ、この先俺がいなくなっても。


 何度も微睡むように、ぼんやりとした最期の景色が俺の僅かな視界に映る。
 音だけは鮮明に聞こえるのに、意識は次第に遠ざかる。

 うるさいくらいの心臓の鼓動でさえ、徐々に遠ざかっていく。
 俺の人生(じかん)の終りが近いことを告げるように。


「おい、柴ヤン!」
 森嶋。

「シバ! 聴こえるか!?」
 松岡。

 お前らも、来てくれたのか。


「アホが! 事故った言うから見舞い来たら今度は末期の癌て! ふざけるのも大概にせえよ! お前まだあの子に会いに行ってへんやろ! 這ってでも今すぐ会いに行けや! 何が危篤やねん! ホンマしばくぞ! なあーー 」
「おい森嶋、落ち着けって」

 森嶋のやつ、荒れに荒れてるな。
 確かあいつには話していたんだよな、梨歩のこと。
 あの日の記憶が蘇る。