君という夢を描いて

 たとえ高額な治療費をつぎ込んだとしても、助かる見込みは限りなく低い。これ以上、姉貴にも負担をかけるわけにはいかないし、どうしたものか。

 まさか、事実上の余命宣告を食らうとは……。数日後には退院するつもりでいたが故に、青天の霹靂だった。

 こうなってしまっては、もう俺が腹をくくればいい話だ。変に期待を持ってさらなる絶望を味わうくらいなら……。

 でも、このまま死ぬのも嫌だ。

 どうすれば。

 どうすればいい?


 最適解がわからない。


 俺に残された時間は、限られている。


「もし、このまま治療をしなかった場合だと……あと、どれくらい生きられるんですか?」

まさか、この俺が人生の終焉を迎えようとしているなんて。
信じられなかった。

信じたくなかった。



「何もしなければ、もって……1~2ヶ月あるかないか、です」

梨歩の誕生日は四月。
それまで俺は生きられない。


どうせ生きられないのなら、せめて彼女に最後のメッセージを。

「…………」

でも、彼女も病気を抱えている。
下手をすれば、命に関わる病だ。
だから、俺の病については彼女には伏せることにした。

嘘はつきたくない。
でも、俺のせいで悲しい思いをさせたくない。

「どうしたら……どうすれば……」

溢れ出す感情が、涙となって頬を伝う。

「とにかく、今は今できることをしましょう。抗がん剤治療を行いながら、痛みや症状を和らげる緩和ケアを並行して行うこともできます。我々も可能な限り最善は尽くします。最善は尽くしますが、万が一のこともありますので……残された時間をどう過ごしたいか、を基準に考えられたほうが良いかもしれません。大変辛いかもしれませんが――」

 俺にとっての最善。
 梨歩にとっての最善。

 考えれば考えるほどわからなくなる。

「本当に……もう無理なんですか?」

受け入れられるはずがなかった。
さすがに余命宣告はないだろうと。

 近々退院したら、梨歩の見舞いにでも行こうと思っていたのに。

梨歩に会いたい。でも、もうすぐ会えなくなる。
もう二度と。

最後に会ったのはいつだろうか。
もし、俺が事故らなければ……病に気づくことはなかったかもしれない。そう思い込むことで、多少なりとも気休めくらいにはなっただろうか。

「とにかく、このことは一刻も早くご家族に伝えないといけません。ですから――」
「わかりました。あの……それなら……姉に」
「お姉さん?」
「両親は、他界してもういないので」
「わかりました。ではお姉さんに連絡をしましょう」