一人暮らしも一年過ぎると、人目を気にすることがなくなる。そして、無防備な姿が日常化すると、そのことに違和感を覚えなくなる。
よって、これが俺の“ありのまま”スタイルであることが、本日梨歩にバレた。
いつぞやの懸賞生活を送っていた某タレントのようなスタイルだ。
「ねえ、そこに落ちてるの違う?」
梨歩が指差す方向に、それはあった。
「あ、あった」
「ちょっと、大丈夫? パンツどこで脱いだか忘れるって、どんだけテンパってたのよ」
そして、再び大笑い。
「いや、別にテンパってたわけじゃない……のかな」
「あたしに聞かれても困るんだけど。ああ、面白すぎてムードも何もないわ」
「う……」
格好悪すぎる。穴があったら入りたい。なるべく大きめの深い穴に入って、しばらく地上には出て行きたくないくらいだ。
「まあ、これはこれでありだけどね」
いや、無しだろ。あり得なさ過ぎだろ。
できることなら記憶から抹消したい。
これは、いわゆる黒歴史というやつか。こうやって俺がやらかす度に刻まれていく、痛い歴史のことをいうんだ。
「ねえ、また来てもいい?」
「え?」
「楽しかった。やっぱりあたし、涼ちゃんともっと一緒にいたい」
真っ直ぐな瞳。嘘偽りのない素直な彼女の言動に、俺はいつも救われた。俺がこうして彼女を抱きしめることができるのも、不器用過ぎる俺を受け入れてくれた彼女だったから。
そう思うだけで、俺はもっと彼女を好きになった。
たとえ黒歴史だと俺が思うことですら、彼女の中では楽しい思い出として映るのだろう。それがありがたかったし、俺にとってもその方が都合がいい。無駄に自己嫌悪に陥るくらいなら、いっそのこと彼女を思い切り笑わせて、“二人だけの楽しい思い出”を増やしていったほうが心の経済的にも良いだろう。ウィン・ウィンというやつだ。知らんけど。
「ああ、もちろん」
「やったあ! ありがとう、涼ちゃん」
無邪気に俺に抱きつく梨歩。
「そうだ。今度あたし路上ライブやろうと思ってて。新しく歌作ってるの。ギター持ってきていい? 練習したいから」
「いいよ。ただ、うちは防音じゃないから」
「わかった。なるべく静かに歌うね」
「あ、それなら……この近くにある河川敷の方がいいかも」
俺はスランプに陥ると、いつも訪れる場所があった。そこから眺める景色が絶景で、去年越してきたばかりの頃に見た桜が忘れられないほど秀麗過ぎて。今はもう桜の時期ではないが、四季の移ろいすらも一本のドラマを観ているようで趣深い。風景画を専攻する俺にとっては、同じ場所から毎度違う景色を描くうえでも打ってつけの場所だった。
「へえ、そこなら思い切り歌っても大丈夫?」
「ああ。人も遠目にしかいないし、練習場所にはちょうどいいと思う。じゃあ、俺も画材持っていこうかな」
「いいね、それ。あたし賛成! 行こ行こ!」
「よし、じゃあ今度はそれで」
よって、これが俺の“ありのまま”スタイルであることが、本日梨歩にバレた。
いつぞやの懸賞生活を送っていた某タレントのようなスタイルだ。
「ねえ、そこに落ちてるの違う?」
梨歩が指差す方向に、それはあった。
「あ、あった」
「ちょっと、大丈夫? パンツどこで脱いだか忘れるって、どんだけテンパってたのよ」
そして、再び大笑い。
「いや、別にテンパってたわけじゃない……のかな」
「あたしに聞かれても困るんだけど。ああ、面白すぎてムードも何もないわ」
「う……」
格好悪すぎる。穴があったら入りたい。なるべく大きめの深い穴に入って、しばらく地上には出て行きたくないくらいだ。
「まあ、これはこれでありだけどね」
いや、無しだろ。あり得なさ過ぎだろ。
できることなら記憶から抹消したい。
これは、いわゆる黒歴史というやつか。こうやって俺がやらかす度に刻まれていく、痛い歴史のことをいうんだ。
「ねえ、また来てもいい?」
「え?」
「楽しかった。やっぱりあたし、涼ちゃんともっと一緒にいたい」
真っ直ぐな瞳。嘘偽りのない素直な彼女の言動に、俺はいつも救われた。俺がこうして彼女を抱きしめることができるのも、不器用過ぎる俺を受け入れてくれた彼女だったから。
そう思うだけで、俺はもっと彼女を好きになった。
たとえ黒歴史だと俺が思うことですら、彼女の中では楽しい思い出として映るのだろう。それがありがたかったし、俺にとってもその方が都合がいい。無駄に自己嫌悪に陥るくらいなら、いっそのこと彼女を思い切り笑わせて、“二人だけの楽しい思い出”を増やしていったほうが心の経済的にも良いだろう。ウィン・ウィンというやつだ。知らんけど。
「ああ、もちろん」
「やったあ! ありがとう、涼ちゃん」
無邪気に俺に抱きつく梨歩。
「そうだ。今度あたし路上ライブやろうと思ってて。新しく歌作ってるの。ギター持ってきていい? 練習したいから」
「いいよ。ただ、うちは防音じゃないから」
「わかった。なるべく静かに歌うね」
「あ、それなら……この近くにある河川敷の方がいいかも」
俺はスランプに陥ると、いつも訪れる場所があった。そこから眺める景色が絶景で、去年越してきたばかりの頃に見た桜が忘れられないほど秀麗過ぎて。今はもう桜の時期ではないが、四季の移ろいすらも一本のドラマを観ているようで趣深い。風景画を専攻する俺にとっては、同じ場所から毎度違う景色を描くうえでも打ってつけの場所だった。
「へえ、そこなら思い切り歌っても大丈夫?」
「ああ。人も遠目にしかいないし、練習場所にはちょうどいいと思う。じゃあ、俺も画材持っていこうかな」
「いいね、それ。あたし賛成! 行こ行こ!」
「よし、じゃあ今度はそれで」



