ふわりとした浮遊感を感じて意識を取り戻せば、知らない部屋の天井が見えた。
(あれ?私…何して、、)
体を動かそうとすれば酷い倦怠感でなかなかスムーズにいかない。
なんとか上半身だけ起こせば、そこは知らない部屋の中、自分はベットの上で眠っていたようだ。見渡せばそこは至って普通の洋室で天井にはシャンデリア、中央に置かれたテーブルとイス、ソファーもあってシンプルだけど綺麗な内装をしていた。
「や、気が付いたかい」
「!!」
ドアをノックする音がすれば、入ってきたのはこの間の男性。
金髪の髪に袴姿…ではなく、今回はスーツに身を包めば相変わらず感情の読めない優しい笑顔でやって来る。
「ごめんごめん。ちょっと手荒にしちゃったから。体、辛いだろ?」
まだ横になってた方がいい、と男性は時雨をベットに寝かせた。
仰向けの状態で彼を見て考える。
確かさっきまで図書館にいて、そこで談話室みたいなとこで変な妖に声をかけられて…それから、、、
「ここは何処ですか?私、確かにさっきまで妖都の図書館にいて」
「ああ、ここは藤家の本邸だよ」
「藤家?」
「そ、君が来たのは初めてだったかな。僕が連れて来たんだよ。あの後、君は半日ほど眠っていた」
半日…ということは、白夜様はもう妖都の会議に出席したのかな?
「私!帰らないと!!」
白夜様!!
あれから会えてない。
今、彼は何をしてるんだろう。
半日ってことは血眼になって自分を探しているかもしれない。
図書館に行くとはお薫さんにも伝えておらず、ただの観光としか言ってない。グプス君…あれから待ち合わせしていたのにどうなったんだろう。時雨は様々な思考を巡らせれば顔を真っ青にさせる。急いで帰ろうと起き上がるも彼がその肩を掴んだ。
「まあまあ、少し落ち着いて。君はもう帰れないよ」
「…え、、どういうこと?」
「ここは現世。京都の一角に拠点を構え、五摂家の一つとして帝家を守る藤家。同時にこれからの君の住まいともなる場所だ」
「私の住まい?…失礼ですが、貴方は一体」
「あ、そっか。自己紹介まだだったね」
彼は律儀に一歩下がれば、時雨を見てお辞儀する。
「僕は藤壱都。ここ藤家の当主であり、藤宮の総括代理も務める」
「藤…壱都さん、、そんなにも偉い方が私に何のご用で」
「君は久野時雨さんだよね。君のお母上、つまり久野美椿の実家こそがここ、藤家だと言えば分かるかな?」
「お母さんの⁈」
あれだけ望んでいた母の実家がいま自分のいる、正にこの場所であると。
時雨はビックリしてしまった。
母はこの藤家と呼ばれる場所で暮らしていたの?
今まで知ることさえできなかった事実が目の前に広がっている。もう一度、部屋を見渡す。窓から見えるのは山に囲まれた自然豊かな景色に広い庭園だった。
「では当主様は…」
「壱都でいいよ」
「い、壱都さんは母に会ったことは?」
「勿論あるよ…って言っても数回だけど。なんせ彼女と僕はいとこだし」
「え、、」
聞けば壱都さんと母は年の離れたいとこにあたり、壱都さんは自分が本格的にここに住むようになったのと同時に母は久野家に嫁いでしまったという。
「僕は元々、先代が養子として迎い入れた身なんだよ。本家には美椿さんを除いて他にも多くの子宝に恵まれてはいたが、その誰もが異能を持てないか、もしくは当主の器としては役不足。そこで先代は藤家の異能を濃く受け継いだ僕を養子として引き取った」
「異能…ですか。ですが異能は御三家のみが所持するものとばかり、、、」
「間違っていないよ。だが異能そのものを上で統括し、御三家をまとめているのが藤家なんだ。この家にも異能であって異能ではない不思議な力がある」
チラリと時計を見ればちょうど昼に差し掛かる時間帯。コンコンとノックされたドアからは給仕が数人、食事の置かれた台を押して入ってくる。
「さてと。まだまだ話さなくちゃならないことはあるけど。今は君の体が第一優先。お腹が空いただろう?ご飯を持ってきたから食べるといい」
壱都はゆっくりと時雨を起こせばそのままテーブルの方に案内する。
目の前に置かれた湯気の立つ食事を前に時雨は気分が好かなかった。
お腹はハッキリ言って空いてはいない。
食欲が湧かなかったのだ。
一刻も早く、白夜様のいる隠世に戻らなければならないのに。だけどどうやって戻ればいいのか分からなく、ここが母親の実家であるという話が本当であれば、少なくとも目の前にいるこの男は自分に何かしらの目的があっての誘拐。時雨はテーブルの下、膝上に乗せた手を警戒と共にギュッと握った。
「さ、食べて!」
「私…帰らないと、、白夜様が待ってるんです」
ポツリと帰りたい意をこぼすも向こうは笑っていた。
「今日から君の家はここ。もう隠世に帰る必要はないんだ。君は御神の血を流した美椿さんの次なる後継者。もうあんな穢れた世界にいなくていい。やっと連れ戻すことができた。ここでは誰も君を傷つけたりはしない。今度は僕が貴方を守ります」
「…」
だからもう忘れなさい。
あの鬼のことも。
全部、、、ね。
そんな壱都の言葉に時雨は何も言えなくなってしまった。
(あれ?私…何して、、)
体を動かそうとすれば酷い倦怠感でなかなかスムーズにいかない。
なんとか上半身だけ起こせば、そこは知らない部屋の中、自分はベットの上で眠っていたようだ。見渡せばそこは至って普通の洋室で天井にはシャンデリア、中央に置かれたテーブルとイス、ソファーもあってシンプルだけど綺麗な内装をしていた。
「や、気が付いたかい」
「!!」
ドアをノックする音がすれば、入ってきたのはこの間の男性。
金髪の髪に袴姿…ではなく、今回はスーツに身を包めば相変わらず感情の読めない優しい笑顔でやって来る。
「ごめんごめん。ちょっと手荒にしちゃったから。体、辛いだろ?」
まだ横になってた方がいい、と男性は時雨をベットに寝かせた。
仰向けの状態で彼を見て考える。
確かさっきまで図書館にいて、そこで談話室みたいなとこで変な妖に声をかけられて…それから、、、
「ここは何処ですか?私、確かにさっきまで妖都の図書館にいて」
「ああ、ここは藤家の本邸だよ」
「藤家?」
「そ、君が来たのは初めてだったかな。僕が連れて来たんだよ。あの後、君は半日ほど眠っていた」
半日…ということは、白夜様はもう妖都の会議に出席したのかな?
「私!帰らないと!!」
白夜様!!
あれから会えてない。
今、彼は何をしてるんだろう。
半日ってことは血眼になって自分を探しているかもしれない。
図書館に行くとはお薫さんにも伝えておらず、ただの観光としか言ってない。グプス君…あれから待ち合わせしていたのにどうなったんだろう。時雨は様々な思考を巡らせれば顔を真っ青にさせる。急いで帰ろうと起き上がるも彼がその肩を掴んだ。
「まあまあ、少し落ち着いて。君はもう帰れないよ」
「…え、、どういうこと?」
「ここは現世。京都の一角に拠点を構え、五摂家の一つとして帝家を守る藤家。同時にこれからの君の住まいともなる場所だ」
「私の住まい?…失礼ですが、貴方は一体」
「あ、そっか。自己紹介まだだったね」
彼は律儀に一歩下がれば、時雨を見てお辞儀する。
「僕は藤壱都。ここ藤家の当主であり、藤宮の総括代理も務める」
「藤…壱都さん、、そんなにも偉い方が私に何のご用で」
「君は久野時雨さんだよね。君のお母上、つまり久野美椿の実家こそがここ、藤家だと言えば分かるかな?」
「お母さんの⁈」
あれだけ望んでいた母の実家がいま自分のいる、正にこの場所であると。
時雨はビックリしてしまった。
母はこの藤家と呼ばれる場所で暮らしていたの?
今まで知ることさえできなかった事実が目の前に広がっている。もう一度、部屋を見渡す。窓から見えるのは山に囲まれた自然豊かな景色に広い庭園だった。
「では当主様は…」
「壱都でいいよ」
「い、壱都さんは母に会ったことは?」
「勿論あるよ…って言っても数回だけど。なんせ彼女と僕はいとこだし」
「え、、」
聞けば壱都さんと母は年の離れたいとこにあたり、壱都さんは自分が本格的にここに住むようになったのと同時に母は久野家に嫁いでしまったという。
「僕は元々、先代が養子として迎い入れた身なんだよ。本家には美椿さんを除いて他にも多くの子宝に恵まれてはいたが、その誰もが異能を持てないか、もしくは当主の器としては役不足。そこで先代は藤家の異能を濃く受け継いだ僕を養子として引き取った」
「異能…ですか。ですが異能は御三家のみが所持するものとばかり、、、」
「間違っていないよ。だが異能そのものを上で統括し、御三家をまとめているのが藤家なんだ。この家にも異能であって異能ではない不思議な力がある」
チラリと時計を見ればちょうど昼に差し掛かる時間帯。コンコンとノックされたドアからは給仕が数人、食事の置かれた台を押して入ってくる。
「さてと。まだまだ話さなくちゃならないことはあるけど。今は君の体が第一優先。お腹が空いただろう?ご飯を持ってきたから食べるといい」
壱都はゆっくりと時雨を起こせばそのままテーブルの方に案内する。
目の前に置かれた湯気の立つ食事を前に時雨は気分が好かなかった。
お腹はハッキリ言って空いてはいない。
食欲が湧かなかったのだ。
一刻も早く、白夜様のいる隠世に戻らなければならないのに。だけどどうやって戻ればいいのか分からなく、ここが母親の実家であるという話が本当であれば、少なくとも目の前にいるこの男は自分に何かしらの目的があっての誘拐。時雨はテーブルの下、膝上に乗せた手を警戒と共にギュッと握った。
「さ、食べて!」
「私…帰らないと、、白夜様が待ってるんです」
ポツリと帰りたい意をこぼすも向こうは笑っていた。
「今日から君の家はここ。もう隠世に帰る必要はないんだ。君は御神の血を流した美椿さんの次なる後継者。もうあんな穢れた世界にいなくていい。やっと連れ戻すことができた。ここでは誰も君を傷つけたりはしない。今度は僕が貴方を守ります」
「…」
だからもう忘れなさい。
あの鬼のことも。
全部、、、ね。
そんな壱都の言葉に時雨は何も言えなくなってしまった。



