白鬼の封印師 二

それから数分後。

「来ないで下さい!」

一体何がどうしてこうなったのか。
若干怒った顔で時雨が睨みつける先には満面の笑みで佇む白夜。

「おいおい、そんな逃げなくても」
「なら白夜様が止まって下さい!」
「いや~だね」

二人になった途端、鬼ごっこやろうぜ~の白夜の言葉で半ば半強制的に始まった鬼ごっこ。負けたら勝った方の言うことを聞けるという条件を付けて始まったはいいが、ニヤニヤしながら追いかけてくる白夜が考えていることといったら絶対にまともじゃないことぐらい嫌でも分かった。

「俺が勝ったら俺とイイコト…ど?♡」
「イヤ~!勘弁して下さい!!」

仮にも胸を掴まれたあの日の衝撃を思い返せば絶叫。
半泣きで部屋の隅から隅まで小走りで走る姿を笑いながら永遠と付いてくる白夜。いい歳して鬼ごっこなんて…傍から見れば思わずツッコミたくもなるが追いかける追いかけられるの話ではない。
もはや喰うか喰われるか。
もう捕食者と被食者でしかなかった。

「…もうダメかも」
「なんだよ追いかけっこは終わりか?んじゃ遠慮なく~」
「いや~!痴漢!変態!強制わいせつ!!」
「おいおい(笑)仮にも愛しの婚約者相手になんつーこと言ってんだよ」

白夜はスマートに近づけば手を伸ばしてくるので時雨は顔を真っ赤にして目を瞑る。だが代わりに違う匂いが鼻をかすめれば目の前には白夜ではない別の誰かが立つ。

「テメェ…主に近づくな」
「…青龍」

青いオーラを漏らして白夜を威嚇する青龍。
時雨を守るように前に出れば目の前の白夜を真っ正面から睨みつけていた。

「ま~たオマエか…蛇は黙っておねんねしてろよな~?」
「黙れ鬼。我が主に手を出すことは許さない。そういうことしたければ店に行け」
「は?俺が他の女で欲を晴らすほど欲情魔とでもいいたいのかよ」
「実際そうだろ。テメェの面はクソほどムカつく。時雨殿にとって害でしかない。時雨殿は俺が守る」
「ひで~言われようだな。まあ腐ってもお前は神獣だし?俺がいない間、時雨を護衛して貰うわけだけど、、、」

苦笑いをする白夜だったが、ふいに真剣な顔をすればこそっと青龍に耳打ちする。

「気を付けろよ?ここは妖都。嫌でも噂は立つ。後は言わなくても分かると思うが…」
「…」

二人の話はここからだと聞こえない。
そんな時雨に気づいた白夜と目が合えば、パッと青龍から離れて今度はこちらにやってくる。

「時雨」
「嫌です」
「おい、まだ何も言ってねぇだろ(笑)」
「鬼ごっこならやりませんよ?」
「しねーよ。この部屋は好きに使ってくれて構わない。取り敢えず今日はもう遅いし、夜は危険だから何処かに行くなら明日にしてくれ。俺がいない間、くれぐれもコイツから離れるなよ?」
「え、白夜様、これからお仕事ですか?」
「悪いな…親父の代理ともあってか回らないといけない場所が多い。徹夜も待たしてるからこれで行く」
「そう…ですか、、、」

なんだ…もっと一緒にいられると思ったのに。
でもそうだよね、元々ここには仕事で来ているわけだし、自分は無理言ってそこに着いてきてる身だから我儘は言えない。

「分かりました。お気を付けて」

笑って白夜様を見送ろうと部屋の外に出ればそこには既に徹夜さんが待機していた。

「そんじゃ行って来る」
「はい」
「…寂しい?」
「…はい」
「ははっ、えらく素直だな」
「だって…」

そこまで言って口ごもる。

「…時雨」

名前を呼ばれてハッと顔を上げる。
白夜は時雨の顔をすくうと優しくキスをする。
突然のことに時雨は驚くも顔をあげた白夜は優しく頭を撫でてくる。

「直ぐ帰るから。良い子にしてろよ?」
「はい…」
「好きだよ。お前は俺のもんだ」
「!!////////はい、いってらっしゃいませ」

そういって去っていく後ろ姿にポ~っとしていれば顔は真っ赤になっていた。やっぱり何度しても慣れない。白夜様のあの美しい顔に見つめられ名前を呼ばれるたび、心臓の鼓動がドキドキするのだった。部屋に戻れば青龍は神聖力温存のために龍の姿に戻れば眠り込んでしまうので完全に一人きりになってしまう。
人の形を維持し続けるにはまだまだ時間がかかりそうだ。