でも、陽は本当の醜い私を知らない。
だから、勘違いされているなら正したい。
大切な人から幻滅されるなんて誰も望まない。
私だって例外ではない。
けれど、きっと陽なら受け止めてくれる。

「多分、私は陽の思っている、ような人じゃない、と思う」

皆に大好きという言葉に収まらないくらい依存していて。
そういう自分を曝け出したら嫌われる。
それも怖くて、でもずっとそばにいてほしい。

矛盾を抱え、怖い怖いと言って逃げて生きてきた。
臆病者の私。

「槭、落ち着いて。ゆっくり話せばいいから」

無意識に話し方が戻り、息が荒くなっていることに気がついて深呼吸をする。

「夢を見るんだ。寝ている時に見る夢。真っ白で出口のない部屋の中に幼い私達がいるの。ゲームしたり、炬燵でみかん食べてたり、好きなことをしてる。ちょうど今日の皆みたいな感じで。小学生の頃から見続けてる」

誰にも話さなかった私の願いが反映された真っ白な部屋。

「皆を閉じ込めてるの」
「閉じ込めてる?」
「出口がない部屋は私が……皆がこのままそばにいてくれればいいなっていう酷い願望からできたもの」

好きなことができる場所を提供する代わりに部屋からは出さず私のそばにいさせる。
閉じ込めてでもそばにいてほしいと言っているようなものじゃないか。

「それぐらい……執着してるんだ。陽も皆もこんなに素敵な人いないって思うくらい良い人達だから……皆が同じように思っててくれたら最高だなって思ってた」

でも、それはあくまで願望。
現実はそうはいかない。

「皆は未来へ進んでて、私は皆との思い出に縋りついてる。皆に執着しているから皆が周りにいない未来に一人で踏み出す勇気がない。皆のいる過去にずっといたい。高校とか行きたくないし、大人にもなりたくない。もっと……皆と離れちゃうから。甘えを抉らせて現実に影響が出てきてるんだね」

何となくおちゃらけてみせると陽に困った顔をされ、フッと力の抜けたような笑い方をしてしまう。

「私は昔から気に入った何かに対する思い入れが強いんだと思う。二歳くらいの時に風弥……兄から貰った人形も未だに手放せないくらいで」

本当は、皆といるとそんな私を無視できなくて少しだけ胸が痛かった。
私と関わらせてしまって良かったのかとか、離れたほうがいいんじゃないかと考えずにはいられなかった。

「私、駄目なの……思いが大きすぎて制御できない。こんなんじゃ、いつか皆に迷惑かける」

せっかく里緒奈の気持ちを知って、上手く皆と話せて、他の人ともゆっくり話せるようになるのかと思っていたのに悩みは尽きない。
皆とのよりを戻せても私が原因の悪い未来がきてしまいそうで。