この感情がどう呼ばれるのか私の知識じゃわからない。

「今はそういうことされてないんだよね?」

まだ不安を拭いきれていない里緒奈に頷くと、安堵する顔が見えた。

「里緒奈は心配し過ぎだよー」
「そーそー。なんかあったら私達が守るから安心して」
「槭の日常は私達が守る!」
「学校違うけど里緒奈よりは近い所にいるから」

彩花、美奈、花菜、未奈美が自信満々といった顔で見てくる。

「あははっ……そうだね。東京っていってもすぐに来れるわけでも、学校に突撃できるわけでもないから、槭の日頃の安全は四人にお任せします」
「はい!お任せされます」
「そこはお任せください、でしょ」

敬礼をする花菜にツッコむ美奈。

でも、四人に頼ってばかりはいられない。
私の日々を一番守れるのは私だと思うから。

そう伝えると「駄目だって時は絶対に私達を頼るんだよ」と頬を引っ張る里緒奈に言われた。

いひゃい(いたい)
「約束する?」
ひます(します)
「絶対?」
へったい(ぜったい)
「それなら、よし」

と言いつつも里緒奈は頬から手を離さない。
本当に痛い。

「何やってんだよ」

唸ってると陽と高雅が戻ってきて里緒奈を怪訝そうな目で見る。

「槭のほっぺがめっちゃ柔らかいの。ほら、おもちみたい」
「マジじゃん。触っていい?」

やっと里緒奈の手が離れても人が変わっただけで何も状況が変わらない。

高雅が私の返答を待っている。

高雅だしいいかな、なんて思って頷こうとすると陽が言葉を挟み、それは叶わなかった。

「皆片付けてくれてるんだから遊んでるなよ」
「そうだぞー。特に高雅。お前が一番散らかしてるって言っても過言じゃないからな」

陽の一言に反応したお片付け隊が高雅にブーイングをする。

「あーわかったよ!すみませんでした、ちゃんと片付けます」
「逆切れすんなよー」
「高雅、片付け嫌いだよね。部屋汚そー」
「汚くなるから去年に母さんに言われて毎週日曜日は掃除の日」
「継続できてんのすげぇ」

片付け隊に合流した高雅の後を追って私達三人もゴミや積み重なった漫画を元の場所に戻す。

片付けが終わるとそれぞれ帰り支度を始めた。

「スマホよーし。財布よーし。陽太の漫画よーし」
「盗んでいくんじゃねぇよ!」

荷物がまとまった人から玄関に向かう。

私も皆と一緒に帰ろうと鞄を持つが里緒奈に奪われ、それは何故か陽に渡された。

「槭はもう少しいたら?陽太が話があるみたいだし」
「は?里緒奈、何言って……ウグッ」

里緒奈が陽の口を塞ぐ。
これ、さっき陽にされたことを仕返してる?

「だよね?」

口は笑ってるのに目は笑ってない。

陽は里緒奈の圧に負けてか、頷いた。