初めに抱きしめてきた彩花、花菜、美奈、未奈美。
昔からこの四人と里緒奈はいつも一緒にいた。
私は一人でいることを好んだので自分から里緒奈以外の誰かに関わろうとすることは少なかった。
が、そんなことお構いなしに見かける度里緒奈は私に声をかけ、他四人も何も言わず笑って迎えてくれた。

小学校に上がってから里緒奈が引っ越した後も年の初めに声をかけたり、誕生日にお祝いの言葉をくれ続けてくれたのは四人で、顔には出さなかったけど、本当はすごく嬉しかったんだ。
中学生の今も四人は短い会話になると分かっていながら言葉を交わしてくれ、違う学校に通っている未奈美もメールをくれる。

そんな四人は一度離れてからもう一度、ゆっくり包み込むように私と里緒奈を抱きしめてくれた。

「良かった……」
「誤解、解けたみたいだね」
「え、誤解って……知ってたの?それに今の会話聞いて……」

多少周りも騒がしく、里緒奈にしか聞こえないような声量では話していたので聞かれていたことに驚いた。
それと誤解をしていたことを知っていることも。

四人が里緒奈と連絡を取っていたことは何も変なことではない。

ただ、里緒奈は私を親友と思っていなかったという勘違いを。
私は里緒奈を嫌っているという思い違いを。

里緒奈は話していたのかもしれないけれど、だとして私は里緒奈への思いを誰にも言ったことはない。
里緒奈が誤解していることは私だって知らなかった。
つまり、私を想いを知る者はいなくて、今この瞬間まで里緒奈の考えが誤解という確証はなかったんだ。
それなのになんで誤解が解けて良かっただなんて……。

「あんなに里緒奈が大好きだった槭が一晩で嫌いとでもいうような態度をとるなんておかしいもん」
「絶対にありえない!って思ってた」

美奈と彩花が笑い、花菜と未奈美が言った。

「二人は相思相愛で私達の入る隙なんてないぐらいだったよね」
「槭と里緒奈が今も、本当は今までもずっと親友だったこと、ちゃんとわかってるよ」

四人の言葉に涙を流したのは里緒奈だった。

「っ……う……」

隣で泣く里緒奈に私も四人も戸惑う。
里緒奈が人前で泣くのはとても稀なことで私達にも耐性がないのだ。

「里緒奈」

オドオドしてしまう私達に反して陽が里緒奈に近づいた。

「これ……嬉し泣き、だからっ」
「うん。思いっきり泣けばいいよ」

タオルを渡す陽とそれを受け取る里緒奈。
胸がざわついたのは気のせいであってほしい。

それに私も涙が出そうだった。
今日は泣いて泣き止んで泣いてを繰り返してばかり。

「槭」

陽が私を呼んだ。