僕は恋をした。

祖母が亡くなった初夏の日に、1つの病室で。

長い綺麗な髪をした女性。
感情がない女性。
僕の、姉。双子の、姉。

「…までもうすぐだよ、今年もそんな季節だね」

あぁ、そうだ。
吉川家の夏の風物詩。
祖父母の家に向かっていたんだ。

何かの衝撃。

「…大丈夫……は私が…守るよ」

泣いちゃいそうな優しい声。

今思えば姉はこう言っていたんだろう。

「…大丈夫。葉瑠真は私が守るよ」

姉の優しい涙が、僕の頬にこぼれ落ちた―。