僕はよく夢を見た。

蝉が張り切って鳴き始めた初夏の日の夢。

そこには長い綺麗な髪をした女性。

「…までもうすぐだよ、今年もそんな季節だね」

どこまでもうすぐなのか。夢の蝉の鳴き声と現実の目覚まし時計のどちらが僕を引きずり込むかを争っている。目覚まし時計に軍配があがりそうだ。
ちょうどその時、夢の中で女性が僕の名前とともに悲鳴を上げた。

何かの衝撃が走った。

「…大丈夫……は私が…守るよ」

泣いちゃいそうな優しい声と優しい涙が、僕の頬にこぼれ落ちた―。