私はナカマツと共にイチローの帰還を待っていた。
帰還したイチローはスナイパーに撃たれたため、血まみれとなっていた。
「イチロー、しっかりして!目を覚まして!」
私はイチローに声をかけた。いや、大声で怒鳴っていたのかもしれない。
その瞬間、ナカマツに引き離された。
「ハカセ君、泣いて喚くだけなら邪魔です。立ち去りなさい」
「そんな……私はイチローを心配して……」
「あなたがイチロー君を大切なのは分かります。だが、今必要なのは泣き喚くことですか?それとも彼の治療を手伝うことですか?」
「ごめんなさい、取り乱していました。治療を手伝います」
「では1分だけあげます。顔を洗って心の準備をしてきてください。あなたにもやれることがあることを忘れないで!」
ナカマツはそう言いながら、銃弾を取り出す手術を既に開始している。ナカマツは自分の仕事を完璧にこなしていた。
ナカマツに言われたように、私は顔を洗って鏡を見た。
ひどい顔をしている……。
これじゃダメだ。私はイチローを救わなくては。
「良い顔になりましたね。では、私が銃弾を取り出した傷口をこの液体で洗浄し、医療用テープで塞いでください」
私がうろたえていた間、既に一箇所の銃弾が取り除かれていた。
ナカマツに言われたとおり、液体で傷口を洗浄する。出血を拭き取り、医療用テープで傷口を塞いだ。
「この液体はもしかして、昨日話していた不老不死の超回復因子を培養したものかしら?」
「そうです。イチロー君のアイディアが役に立ちましたね。イチロー君の傷は重傷ですが致命傷とまではいっていませんので、命に別状はありません」
「それは良かったです。少し安心しました。」
「彼はまだ不老不死なので、このくらいならすぐに回復できそうです。そう言えば、彼が不老不死の治療を止めたのはハカセ君の我儘だと聞きましたよ」
「はい、私の我儘にイチローを巻き込んでしまいました……」
「でも、そのおかげで彼の命はきっと助かります。不老不死でなければ、出血多量で死んでいたかもしれません。結果論になりますが、あなたの我儘が彼を救うとも言えますね」
「そんなこともあるなんて……たまには我儘もしてみるもんですね」
「それが夫婦というものです」
イチローの処置は無事終わり、輸血をされながらベッドで寝息を立てている。
心なしか、顔色も良くなってきている。
「先程、ハカセ君の設計した治療装置も完成したようですよ。イチロー君に使うことも考えましたが、サクラ君とカトー君がまだ戦っている最中なので今はまだ使わないことにします。2人が無事に戻ってきたらイチロー君に使いましょう」
「2人とも無事だといいのだけど……」
「カトー君ほどの男がイチロー君を守りきれなかったということが、戦いの激しさを物語っていますね。私達は私達の仕事を確実にこなせるようにしましょう」
「そうですね。私はボスに状況報告をして、救出した捕虜の様子を見てきます」
私はイチローの顔色を確認したあと、ボスの元へと向かった。
――
私とゴディの交渉中、血相を変えた兵士が部屋に入ってきた。
「閣下、報告があります。捕虜のいる牢獄が何者かの襲撃を受けているようです」
カトーとイチローの救出作戦が始まったようだ。
私はカトーと合流するまで時間を稼がなければならない。
「なんだと!付近の兵士を送り込み、直ちに鎮圧せよ!地球人ごときに突破できるとは思わないが、決して油断せず皆殺しにせよ。それから、親衛隊をここに集結させよ。万が一に備える」
「はっ、直ちに」
兵士が去ったあと、ゴディは私を睨みつける。
「紗倉どの、まさかと思うがお主達のしわざではあるまいな?」
「地球人の全てが服従を望んでいる訳ではありません。中にはこのような手段に出る者もおりましょう。それとも閣下は私のような地球人を恐れているのですか?」
「なんと……この私に向かってそのように豪胆な発言をするとは……気に入ったぞ。お前は奴隷とせず、私の側近として使ってやろう」
「もったいないお言葉です。しかし、その前に手続きを滞りなく進めさせてください。まずは降伏条件の説明をお願いします」
こんなゴリラの側近だなんて、どんな冗談なんだよと思いつつ、時間稼ぎのために笑顔で対応する私。
私、女優にも向いているのかも。
地球人になったら、やってみようかしら。
「さて、次の条件だが……。ん?何か外がうるさいな。まだ鎮圧できないのか?」
先程の兵士とは違う防具を着た人が続々と入ってきた。彼らが親衛隊だろうか。
「閣下、船に忍び込んだネズミはたった1匹のようですが、恐ろしく強いようです。兵士を倒しながらこちらに向かってきているようです」
「なんだと!我らは宇宙最強だぞ。たった1人になぜ手こずっているのだ……」
カトーがいい仕事をしているようだ。
ちょっと煽ってみるか。
「閣下……地球人1人にここまでやられてしまうようでは、従わない者がどんどん出てくる恐れがございます」
「わ、分かっておる。ええい、親衛隊以外の兵を全て鎮圧に投入せよ。なんとしても食い止めるのだ」
よし、これでカトーが兵士を全て倒してくれたら、残るはこの部屋の親衛隊とゴディだけとなる。
あとは、カトーと合流さえできれば作戦通りということになる。
少し経った後、銃撃の音が止んだ。どうやら外の戦闘は終わったようだ。
ドアが開き、部屋に入ってきたのは……。
帰還したイチローはスナイパーに撃たれたため、血まみれとなっていた。
「イチロー、しっかりして!目を覚まして!」
私はイチローに声をかけた。いや、大声で怒鳴っていたのかもしれない。
その瞬間、ナカマツに引き離された。
「ハカセ君、泣いて喚くだけなら邪魔です。立ち去りなさい」
「そんな……私はイチローを心配して……」
「あなたがイチロー君を大切なのは分かります。だが、今必要なのは泣き喚くことですか?それとも彼の治療を手伝うことですか?」
「ごめんなさい、取り乱していました。治療を手伝います」
「では1分だけあげます。顔を洗って心の準備をしてきてください。あなたにもやれることがあることを忘れないで!」
ナカマツはそう言いながら、銃弾を取り出す手術を既に開始している。ナカマツは自分の仕事を完璧にこなしていた。
ナカマツに言われたように、私は顔を洗って鏡を見た。
ひどい顔をしている……。
これじゃダメだ。私はイチローを救わなくては。
「良い顔になりましたね。では、私が銃弾を取り出した傷口をこの液体で洗浄し、医療用テープで塞いでください」
私がうろたえていた間、既に一箇所の銃弾が取り除かれていた。
ナカマツに言われたとおり、液体で傷口を洗浄する。出血を拭き取り、医療用テープで傷口を塞いだ。
「この液体はもしかして、昨日話していた不老不死の超回復因子を培養したものかしら?」
「そうです。イチロー君のアイディアが役に立ちましたね。イチロー君の傷は重傷ですが致命傷とまではいっていませんので、命に別状はありません」
「それは良かったです。少し安心しました。」
「彼はまだ不老不死なので、このくらいならすぐに回復できそうです。そう言えば、彼が不老不死の治療を止めたのはハカセ君の我儘だと聞きましたよ」
「はい、私の我儘にイチローを巻き込んでしまいました……」
「でも、そのおかげで彼の命はきっと助かります。不老不死でなければ、出血多量で死んでいたかもしれません。結果論になりますが、あなたの我儘が彼を救うとも言えますね」
「そんなこともあるなんて……たまには我儘もしてみるもんですね」
「それが夫婦というものです」
イチローの処置は無事終わり、輸血をされながらベッドで寝息を立てている。
心なしか、顔色も良くなってきている。
「先程、ハカセ君の設計した治療装置も完成したようですよ。イチロー君に使うことも考えましたが、サクラ君とカトー君がまだ戦っている最中なので今はまだ使わないことにします。2人が無事に戻ってきたらイチロー君に使いましょう」
「2人とも無事だといいのだけど……」
「カトー君ほどの男がイチロー君を守りきれなかったということが、戦いの激しさを物語っていますね。私達は私達の仕事を確実にこなせるようにしましょう」
「そうですね。私はボスに状況報告をして、救出した捕虜の様子を見てきます」
私はイチローの顔色を確認したあと、ボスの元へと向かった。
――
私とゴディの交渉中、血相を変えた兵士が部屋に入ってきた。
「閣下、報告があります。捕虜のいる牢獄が何者かの襲撃を受けているようです」
カトーとイチローの救出作戦が始まったようだ。
私はカトーと合流するまで時間を稼がなければならない。
「なんだと!付近の兵士を送り込み、直ちに鎮圧せよ!地球人ごときに突破できるとは思わないが、決して油断せず皆殺しにせよ。それから、親衛隊をここに集結させよ。万が一に備える」
「はっ、直ちに」
兵士が去ったあと、ゴディは私を睨みつける。
「紗倉どの、まさかと思うがお主達のしわざではあるまいな?」
「地球人の全てが服従を望んでいる訳ではありません。中にはこのような手段に出る者もおりましょう。それとも閣下は私のような地球人を恐れているのですか?」
「なんと……この私に向かってそのように豪胆な発言をするとは……気に入ったぞ。お前は奴隷とせず、私の側近として使ってやろう」
「もったいないお言葉です。しかし、その前に手続きを滞りなく進めさせてください。まずは降伏条件の説明をお願いします」
こんなゴリラの側近だなんて、どんな冗談なんだよと思いつつ、時間稼ぎのために笑顔で対応する私。
私、女優にも向いているのかも。
地球人になったら、やってみようかしら。
「さて、次の条件だが……。ん?何か外がうるさいな。まだ鎮圧できないのか?」
先程の兵士とは違う防具を着た人が続々と入ってきた。彼らが親衛隊だろうか。
「閣下、船に忍び込んだネズミはたった1匹のようですが、恐ろしく強いようです。兵士を倒しながらこちらに向かってきているようです」
「なんだと!我らは宇宙最強だぞ。たった1人になぜ手こずっているのだ……」
カトーがいい仕事をしているようだ。
ちょっと煽ってみるか。
「閣下……地球人1人にここまでやられてしまうようでは、従わない者がどんどん出てくる恐れがございます」
「わ、分かっておる。ええい、親衛隊以外の兵を全て鎮圧に投入せよ。なんとしても食い止めるのだ」
よし、これでカトーが兵士を全て倒してくれたら、残るはこの部屋の親衛隊とゴディだけとなる。
あとは、カトーと合流さえできれば作戦通りということになる。
少し経った後、銃撃の音が止んだ。どうやら外の戦闘は終わったようだ。
ドアが開き、部屋に入ってきたのは……。