戦いを控えてカトー氏とサクラ氏は日々激しい訓練を続けている。
サクラ氏は戦いが終わるまで禁酒をすることにしたようだ。これ以上の戦闘力低下を防ぐためなのだろう。
各自やれることをやるということだったが、戦闘員ではない俺にできることは多くない。
色々考えた末にあることを思いつき、ナカマツ氏とハカセに説明を行うこととした。
「イチロー、思いついたことって何?」
ハカセが面倒くさそうな反応をする。
婚約以降はデレっぱなしだったけど、本来のハカセはこんな感じだったなと思い出す。
「実は日本で有名なバトル漫画に出てくる治療装置を俺達も作れないかと思ってね」
そう言って俺は漫画のシーンを2人に見せる。
趣味で見始めた漫画だったが、まさかこんな形で紹介することになるとは。
「簡単に説明すると、重傷になってもこの丸いカプセルに入るとかなり早い時間で回復する仕組みなんだ」
「イチローって本当にこういうのが好きよね……」
若干呆れ顔でハカセが呟く。
子供っぽいとか考えているんだろうな。
「この液体みたいなものはなんでしょうか?」
ハカセとは対象的にナカマツ氏は食いついてきた。
医者としての好奇心なんだろうか。
「多分、回復力を大幅に高める液体なんだと思う。で、ナカマツ氏なら作れるのではないかと思うんだ」
「なるほど、もしかして不老不死の超回復因子のようなものを血液から抽出して培養するとか考えていますか?」
「そう、そんな感じ。外傷であれば血液の中に無くても、その液体の中に触れるだけで効果があるじゃないかな」
「そうだね。可能性がありそうなのでやってみようか。サクラ君とカトー君の血液なら緊急時に備えてストックしてあるから、それを少し使えば良いものが作れるかもしれないね」
ナカマツ氏が真剣に検討を始めたので、ハカセも身を乗り出してきた。
ようやく、自分が呼ばれた理由を理解したらしい。
「ありがとう。そしてハカセはこの装置の設計をしてほしい。バイタルのチェックや、液体と温度コントロールの機能が必要になりそうだね。設計図ができたらすぐにエディ氏に作成してもらおう」
「了解、すぐに取り掛かるわ。でも、こんなものを作ろうだなんて……。イチローもやっぱり不安なの?」
「うん。もちろんカトー氏とサクラ氏の強さを信じているけど、万が一ということもあるからね。それに今回使い道が無くてもどこかで役に立つだろうし、無駄にはならないんじゃないかな」
そんなことを話していたら、またしてもニュース速報が流れてきた。
今回は【ノクトリア】から映像が発信されたとのことだ。
ウィルス兵器の恐ろしさを伝えることが目的らしい。
小さな部屋に1人の捕虜が鎖で繋がれている。
そこにガスのようなものが噴出された。
そこから映像は早回しとなり、2日後にその捕虜はもがき苦しんで死亡した。
時間的に考えて、捕虜を攫ってすぐに撮影したものだろう。
「ひどい……なんでこんなことができるのよ……」
ハカセはひどくショックを受けている。
俺だって目を背けたくなるような映像だった。
「これは……やはり私達の国を滅ぼしたウィルス兵器の特徴と完全に一致します。奴らが仇だということは間違いありません!」
医者のナカマツ氏が言うのだから間違いないのだろう。
この映像はウィルス兵器の恐ろしさを伝えることで全面降伏を促す目的なのかもしれない。
しかし、結果的に俺達は戦う相手の正体と、その武器の情報を知ることができたのだ。
「そういえば、捕虜の方々は日本の軍人らしいね。軍の施設を襲って拉致をすることで力の差を見せつけたい狙いがありそうだね」
「ん……軍人……!さっきの映像、もう一度見ましょう」
ハカセが何かに気付いたようだ。
さっきまでショックを受けていたハカセだったが、真剣な眼差しで映像の捕虜を眺める。
もがき苦しんでいる姿を見るのは何度見ても辛い。
「やはりそうよ、この捕虜の方は何かを伝えようとしているわ。このもがき方に違和感があるというか、法則性のようなものがあるように思えるの」
「つまり、地球の仲間には分かるけど、異星人には分からないような方法で情報を伝えようとしているということですね」
「そう、ちょっと調べてみましょう。えっと……多分このモールス信号というものよ。もがき苦しんでいるようにして壁や地面を叩いているけど、その時間が信号になっているのよ。早送りになっているから【ノクトリア】側も気付かなかったようね。速度を遅くして再生してみましょう」
俺達はまた映像を見ながら、信号表と照らし合わせてみる。
「敵は50人……捕虜は最下層……責任者の名はゴディ……」
すごい……自分の死の間際だというのに、全ての情報を伝えようとするその姿勢に敬意を感じた。
そして、その情報を知った者として最大限に活用しなければならない責任があるのだ。
「ゴディというのは【ノクトリア】の将軍だった人ですよ。冷酷だが非常に強いことで知られていました。これはやっかいなことですね……」
「カトーやサクラと比べてどちらが強いかしら?」
「不老不死になる前だったら、2人で戦っても勝てなかったと思います。でも、今は分かりません。他の敵も50人ほどいるみたいですし、無傷で戦えれば……という話になってきますね」
「捕虜の場所が分かったのも収穫ね。どうやってそこまで行くかは作戦を考えないといけないみたいだけど」
俺達3人はこの情報を伝えるべく、ボス氏に緊急招集をかけてもらった。
サクラ氏は戦いが終わるまで禁酒をすることにしたようだ。これ以上の戦闘力低下を防ぐためなのだろう。
各自やれることをやるということだったが、戦闘員ではない俺にできることは多くない。
色々考えた末にあることを思いつき、ナカマツ氏とハカセに説明を行うこととした。
「イチロー、思いついたことって何?」
ハカセが面倒くさそうな反応をする。
婚約以降はデレっぱなしだったけど、本来のハカセはこんな感じだったなと思い出す。
「実は日本で有名なバトル漫画に出てくる治療装置を俺達も作れないかと思ってね」
そう言って俺は漫画のシーンを2人に見せる。
趣味で見始めた漫画だったが、まさかこんな形で紹介することになるとは。
「簡単に説明すると、重傷になってもこの丸いカプセルに入るとかなり早い時間で回復する仕組みなんだ」
「イチローって本当にこういうのが好きよね……」
若干呆れ顔でハカセが呟く。
子供っぽいとか考えているんだろうな。
「この液体みたいなものはなんでしょうか?」
ハカセとは対象的にナカマツ氏は食いついてきた。
医者としての好奇心なんだろうか。
「多分、回復力を大幅に高める液体なんだと思う。で、ナカマツ氏なら作れるのではないかと思うんだ」
「なるほど、もしかして不老不死の超回復因子のようなものを血液から抽出して培養するとか考えていますか?」
「そう、そんな感じ。外傷であれば血液の中に無くても、その液体の中に触れるだけで効果があるじゃないかな」
「そうだね。可能性がありそうなのでやってみようか。サクラ君とカトー君の血液なら緊急時に備えてストックしてあるから、それを少し使えば良いものが作れるかもしれないね」
ナカマツ氏が真剣に検討を始めたので、ハカセも身を乗り出してきた。
ようやく、自分が呼ばれた理由を理解したらしい。
「ありがとう。そしてハカセはこの装置の設計をしてほしい。バイタルのチェックや、液体と温度コントロールの機能が必要になりそうだね。設計図ができたらすぐにエディ氏に作成してもらおう」
「了解、すぐに取り掛かるわ。でも、こんなものを作ろうだなんて……。イチローもやっぱり不安なの?」
「うん。もちろんカトー氏とサクラ氏の強さを信じているけど、万が一ということもあるからね。それに今回使い道が無くてもどこかで役に立つだろうし、無駄にはならないんじゃないかな」
そんなことを話していたら、またしてもニュース速報が流れてきた。
今回は【ノクトリア】から映像が発信されたとのことだ。
ウィルス兵器の恐ろしさを伝えることが目的らしい。
小さな部屋に1人の捕虜が鎖で繋がれている。
そこにガスのようなものが噴出された。
そこから映像は早回しとなり、2日後にその捕虜はもがき苦しんで死亡した。
時間的に考えて、捕虜を攫ってすぐに撮影したものだろう。
「ひどい……なんでこんなことができるのよ……」
ハカセはひどくショックを受けている。
俺だって目を背けたくなるような映像だった。
「これは……やはり私達の国を滅ぼしたウィルス兵器の特徴と完全に一致します。奴らが仇だということは間違いありません!」
医者のナカマツ氏が言うのだから間違いないのだろう。
この映像はウィルス兵器の恐ろしさを伝えることで全面降伏を促す目的なのかもしれない。
しかし、結果的に俺達は戦う相手の正体と、その武器の情報を知ることができたのだ。
「そういえば、捕虜の方々は日本の軍人らしいね。軍の施設を襲って拉致をすることで力の差を見せつけたい狙いがありそうだね」
「ん……軍人……!さっきの映像、もう一度見ましょう」
ハカセが何かに気付いたようだ。
さっきまでショックを受けていたハカセだったが、真剣な眼差しで映像の捕虜を眺める。
もがき苦しんでいる姿を見るのは何度見ても辛い。
「やはりそうよ、この捕虜の方は何かを伝えようとしているわ。このもがき方に違和感があるというか、法則性のようなものがあるように思えるの」
「つまり、地球の仲間には分かるけど、異星人には分からないような方法で情報を伝えようとしているということですね」
「そう、ちょっと調べてみましょう。えっと……多分このモールス信号というものよ。もがき苦しんでいるようにして壁や地面を叩いているけど、その時間が信号になっているのよ。早送りになっているから【ノクトリア】側も気付かなかったようね。速度を遅くして再生してみましょう」
俺達はまた映像を見ながら、信号表と照らし合わせてみる。
「敵は50人……捕虜は最下層……責任者の名はゴディ……」
すごい……自分の死の間際だというのに、全ての情報を伝えようとするその姿勢に敬意を感じた。
そして、その情報を知った者として最大限に活用しなければならない責任があるのだ。
「ゴディというのは【ノクトリア】の将軍だった人ですよ。冷酷だが非常に強いことで知られていました。これはやっかいなことですね……」
「カトーやサクラと比べてどちらが強いかしら?」
「不老不死になる前だったら、2人で戦っても勝てなかったと思います。でも、今は分かりません。他の敵も50人ほどいるみたいですし、無傷で戦えれば……という話になってきますね」
「捕虜の場所が分かったのも収穫ね。どうやってそこまで行くかは作戦を考えないといけないみたいだけど」
俺達3人はこの情報を伝えるべく、ボス氏に緊急招集をかけてもらった。