宇宙船の医務室で俺は目覚めた。
どうやら長い夢を見ていたようだ……。
体が重い……と思ったのだが、ハカセが俺に抱きついて寝ていた。
これは一体……どうなってるんだ?
「おや、目覚めたようですね。具合はどうかな?」
ナカマツ氏が俺を覗き込む。
そうか……ハカセのコーラ?を飲んで気絶してしまったのか。
「これは一体どういうことなの?」
ハカセを指さしてナカマツ氏に尋ねた。
「イチロー君が寝ている間、ハカセ君は片時も離れることがなかったんだよ……だから疲れて寝てしまったんだね。『イチローが死んじゃう!』って大騒ぎで大変だったんだよ。頭脳は凄いけど中身はまだ子供なんだよね……」
ハカセの寝顔を見ながらナカマツ氏がそう呟いた。
俺もハカセの寝顔を見ながら、さっきまで見ていた夢……昔の事を思い出していた。
「ふがっ」
そんな事を話していたところ、ハカセも目覚めたようだ。
「あ……イチロー。目が醒めたのね!生きていて良かった!」
「いや、そう簡単に死なないでしょ、不老不死なんだし」
「それはそうなんだけど……。ごめんなさい……。私はいつもこうなんだよね、色々反省してる……」
「俺の方こそ、ごめんな。調子に乗ってたと思ってる」
「今回はあの地球人にしてやられたわね……私の科学力を精神で超えてくるなんて、なかなかやるものね」
「ハカセが完敗するのは初めて見たような気がする」
「次は必ず勝ちます!」
「いや、次とかないからさ。なんでも勝ち負けに拘る必要はないと思うよ。あの地球人は勝ち負けでコーラを作ってないからね」
「そういえばそうね……」
「勝ち負けと言えば、あの2人はどこに行ったの?」
「カトーとサクラなら、例の【本気組手3時間】をやってるはずだよ」
「カトー氏……無事だといいんだけど……」
サクラ氏とカトー氏は戦闘を担当している。
共同生活を始めた頃は死体に群がる凶暴な野生生物が出没していたため、防衛任務を行っていた。
その後、様々な惑星を巡るようになってくると、その惑星の住民と揉めた場合の戦闘を担当するようになった。
野生生物とは違い、文明人は武器を持っているため、彼らのような戦闘のプロが必要なのである。
「きっとボロ雑巾のようになっているんじゃないかな……」
カトー氏とサクラ氏、2人の戦闘能力はかなり高いのだが、近接戦闘となるとサクラ氏が圧倒的に強く、カトー氏は今まで一度もサクラ氏に勝ったことが無いらしい。
それどころか一撃を入れたことさえないらしく、2人の戦闘訓練はカトーが戦闘不能になって終了することが多い。
「なんでサクラ氏はあんなに強いんだろうね。不老不死の影響もあるとはいえ、軍の特殊部隊にいたカトー氏があそこまでやられるって理解できないよな」
「それに関してはカトーからお願いされている研究があるので、近いうちに面白いものが見せられるかも」
ハカセが自信満々にそう答える。
「失礼しま~す。怪我人を連れてきました~。ナカマツいる~?」
訓練を終えたサクラ氏がボロボロになったカトー氏を連れてやってきた。
「訓練お疲れ様です。サクラさん、毎回やりすぎですよ…………。不老不死だって痛みはあるんですから……」
ナカマツ氏が呆れ顔でサクラ氏に言った。
「うーん、これでも大分加減しているんだけどなあ。カトーが弱すぎなんだよな~」
「え、サクラさん手加減しているんですか?ちょっと見た感じでも3箇所くらい骨折しているみたいですが……」
カトー氏を診察をしながらナカマツ氏が驚いた。
「いつも手加減するかハンデを付けてるよ。今日は本気だけどハンデで両手使ってないし」
「えっ?」
「えっ?」
「えっ?」
俺、ナカマツ氏、ハカセが同時に驚いた。そりゃそうだ……足だけなの?。
「いつかぶっ飛ばしてやる……覚悟しておけよ……」
カトー氏が力なく呟いた。
「あはは、その意気だよ。楽しみにしているぜ!」
「さて、カトーさん。診察結果になりますが、5箇所骨折していますね。すぐ治ると思いますけど、念のため今日は安静にする必要があります」
上機嫌のサクラ氏を尻目に、ナカマツ氏が残念な診察結果をカトー氏に伝えた。
「そんなことより、何か美味いものでも食べに行こうぜ。運動したら腹が減るんだよ……イチロー、肉だ!肉を食える店に連れて行ってくれ」
細く引き締まったお腹をさすりながら、カトー氏の大怪我を【そんなこと】扱いしてみせるサクラ氏。
共同生活が始まった頃は少しの怪我でも大騒ぎで心配していたが、すっかり感覚が麻痺してしまっているようだ。
「カトーさんはここで安静、私も様子を見ていますから3人で行ってきたらどうですか」
カトー氏の青白い顔を眺めながらナカマツ氏は答えた。
長年医者をやっていて、救えなかった命をたくさん見てきた彼は、もう少し自分達の体を大事にしてほしいと思っているのかもしれない。
――
俺はハカセとサクラ氏を連れて秋葉原へやってきた。
そういえば、ハカセとサクラ氏は初めての上陸だったな。
2人とも地球に若干興奮しているみたいだ。
「地球っていったな、まあまあの星じゃないか!」
サクラ氏が腕を組んで偉そうに言った。
「サクラ、それ多分……侵略者とかのセリフだよ……」
いつも通り、ハカセが冷静に突っ込む。
サクラ氏は色々と言葉を間違えるのだが、ハカセだけが突っ込んでいる。だって怖いから。
そんなやりとりをしながら歩いているが、すれ違う人がみんなこちらを見ていることに気付く。
「ちょっと、イチロー……。あんたがそんな服を着ているから、みんなこっちを見てるじゃない!どこでそんな服を買ったのよ……」
俺の服には【読者の金で焼肉が食べたい】と書いてある。
焼肉を食べに行くということで関連のありそうなTシャツを選んだのだが、何か間違っているのだろうか。
「いや、サクラ氏の方こそファッションショーみたいな派手な服じゃないか、ただでさえ目立つ容姿のくせに!」
実際、注目を集めているのはサクラ氏の方だった。容姿だけでなく所作も美しいので、歩いているだけで注目を集めてしまうのである。
美女と子供、それとTシャツを咎められた俺、傍から見たら不思議な3人なのかもしれない。
そんな不思議な3人が向かう先はもちろん焼肉屋である。
どうやら長い夢を見ていたようだ……。
体が重い……と思ったのだが、ハカセが俺に抱きついて寝ていた。
これは一体……どうなってるんだ?
「おや、目覚めたようですね。具合はどうかな?」
ナカマツ氏が俺を覗き込む。
そうか……ハカセのコーラ?を飲んで気絶してしまったのか。
「これは一体どういうことなの?」
ハカセを指さしてナカマツ氏に尋ねた。
「イチロー君が寝ている間、ハカセ君は片時も離れることがなかったんだよ……だから疲れて寝てしまったんだね。『イチローが死んじゃう!』って大騒ぎで大変だったんだよ。頭脳は凄いけど中身はまだ子供なんだよね……」
ハカセの寝顔を見ながらナカマツ氏がそう呟いた。
俺もハカセの寝顔を見ながら、さっきまで見ていた夢……昔の事を思い出していた。
「ふがっ」
そんな事を話していたところ、ハカセも目覚めたようだ。
「あ……イチロー。目が醒めたのね!生きていて良かった!」
「いや、そう簡単に死なないでしょ、不老不死なんだし」
「それはそうなんだけど……。ごめんなさい……。私はいつもこうなんだよね、色々反省してる……」
「俺の方こそ、ごめんな。調子に乗ってたと思ってる」
「今回はあの地球人にしてやられたわね……私の科学力を精神で超えてくるなんて、なかなかやるものね」
「ハカセが完敗するのは初めて見たような気がする」
「次は必ず勝ちます!」
「いや、次とかないからさ。なんでも勝ち負けに拘る必要はないと思うよ。あの地球人は勝ち負けでコーラを作ってないからね」
「そういえばそうね……」
「勝ち負けと言えば、あの2人はどこに行ったの?」
「カトーとサクラなら、例の【本気組手3時間】をやってるはずだよ」
「カトー氏……無事だといいんだけど……」
サクラ氏とカトー氏は戦闘を担当している。
共同生活を始めた頃は死体に群がる凶暴な野生生物が出没していたため、防衛任務を行っていた。
その後、様々な惑星を巡るようになってくると、その惑星の住民と揉めた場合の戦闘を担当するようになった。
野生生物とは違い、文明人は武器を持っているため、彼らのような戦闘のプロが必要なのである。
「きっとボロ雑巾のようになっているんじゃないかな……」
カトー氏とサクラ氏、2人の戦闘能力はかなり高いのだが、近接戦闘となるとサクラ氏が圧倒的に強く、カトー氏は今まで一度もサクラ氏に勝ったことが無いらしい。
それどころか一撃を入れたことさえないらしく、2人の戦闘訓練はカトーが戦闘不能になって終了することが多い。
「なんでサクラ氏はあんなに強いんだろうね。不老不死の影響もあるとはいえ、軍の特殊部隊にいたカトー氏があそこまでやられるって理解できないよな」
「それに関してはカトーからお願いされている研究があるので、近いうちに面白いものが見せられるかも」
ハカセが自信満々にそう答える。
「失礼しま~す。怪我人を連れてきました~。ナカマツいる~?」
訓練を終えたサクラ氏がボロボロになったカトー氏を連れてやってきた。
「訓練お疲れ様です。サクラさん、毎回やりすぎですよ…………。不老不死だって痛みはあるんですから……」
ナカマツ氏が呆れ顔でサクラ氏に言った。
「うーん、これでも大分加減しているんだけどなあ。カトーが弱すぎなんだよな~」
「え、サクラさん手加減しているんですか?ちょっと見た感じでも3箇所くらい骨折しているみたいですが……」
カトー氏を診察をしながらナカマツ氏が驚いた。
「いつも手加減するかハンデを付けてるよ。今日は本気だけどハンデで両手使ってないし」
「えっ?」
「えっ?」
「えっ?」
俺、ナカマツ氏、ハカセが同時に驚いた。そりゃそうだ……足だけなの?。
「いつかぶっ飛ばしてやる……覚悟しておけよ……」
カトー氏が力なく呟いた。
「あはは、その意気だよ。楽しみにしているぜ!」
「さて、カトーさん。診察結果になりますが、5箇所骨折していますね。すぐ治ると思いますけど、念のため今日は安静にする必要があります」
上機嫌のサクラ氏を尻目に、ナカマツ氏が残念な診察結果をカトー氏に伝えた。
「そんなことより、何か美味いものでも食べに行こうぜ。運動したら腹が減るんだよ……イチロー、肉だ!肉を食える店に連れて行ってくれ」
細く引き締まったお腹をさすりながら、カトー氏の大怪我を【そんなこと】扱いしてみせるサクラ氏。
共同生活が始まった頃は少しの怪我でも大騒ぎで心配していたが、すっかり感覚が麻痺してしまっているようだ。
「カトーさんはここで安静、私も様子を見ていますから3人で行ってきたらどうですか」
カトー氏の青白い顔を眺めながらナカマツ氏は答えた。
長年医者をやっていて、救えなかった命をたくさん見てきた彼は、もう少し自分達の体を大事にしてほしいと思っているのかもしれない。
――
俺はハカセとサクラ氏を連れて秋葉原へやってきた。
そういえば、ハカセとサクラ氏は初めての上陸だったな。
2人とも地球に若干興奮しているみたいだ。
「地球っていったな、まあまあの星じゃないか!」
サクラ氏が腕を組んで偉そうに言った。
「サクラ、それ多分……侵略者とかのセリフだよ……」
いつも通り、ハカセが冷静に突っ込む。
サクラ氏は色々と言葉を間違えるのだが、ハカセだけが突っ込んでいる。だって怖いから。
そんなやりとりをしながら歩いているが、すれ違う人がみんなこちらを見ていることに気付く。
「ちょっと、イチロー……。あんたがそんな服を着ているから、みんなこっちを見てるじゃない!どこでそんな服を買ったのよ……」
俺の服には【読者の金で焼肉が食べたい】と書いてある。
焼肉を食べに行くということで関連のありそうなTシャツを選んだのだが、何か間違っているのだろうか。
「いや、サクラ氏の方こそファッションショーみたいな派手な服じゃないか、ただでさえ目立つ容姿のくせに!」
実際、注目を集めているのはサクラ氏の方だった。容姿だけでなく所作も美しいので、歩いているだけで注目を集めてしまうのである。
美女と子供、それとTシャツを咎められた俺、傍から見たら不思議な3人なのかもしれない。
そんな不思議な3人が向かう先はもちろん焼肉屋である。