天燈祭が終わった後、私達にほんの少しだけ変化があった。まだしっかりとお互いを知らないままだがこの変化はとても良いものになるだろう。

「その様付けはやめねーか?キースでいい」
「キース…ですか?なんか変な感じですね。じゃあ、私の呼び方も変えてくださいな」
「え"、まさか」
「あの時みたいにちゃんとアンナって呼んでください。それが条件です」

しどろもどろになるキースに私は可愛らしさを感じてしまう。だって夫婦になったのですもの。寄り添える仲でいたい。
そう思わせてくれるのはやはりあの約束と願い事のせいだろう。

「しら…じゃなくて、アンナ」
「はい、なんですか?」
「あ〜慣れねぇ〜…」
「私もまだキースのことを様付けしそうですからお互い様ですよ。それに…」
「直す時間もカイネの願いを叶える時間もたくさんある」
「フフ♪そうですよ。私達にはまだやらなくてはいけない事が沢山あるんですから!!」

赤いインクの線が願い事が書かれた文字の上にまた引かれてゆく。その線がページを埋め尽くすにはまだまだ時間がかかるだろう。
この願い事の旅は終わりがまだ見えないのだから。


キースとお姉様が交わした約束。

「ねぇ、キース。約束して欲しいの。アンナを幸せにして。あの子を私の幻影から解き放ってあげて」


そして、願い事は。

「どうか貴方達の行く道にいつまでも光があらんこと」

とてもカイネらしい約束と願い事はゆっくりと果たされて続けゆく。




これは天燈に魅入られた若い夫婦の旅行記の最初の物語。