「月夜…大丈夫かね。」
最近、月夜は月を見上げて涙を流すようになっていた。
「おじいさま。私…月に…帰りたくはないです。ですが…もうじき、迎えが来ます。次の満月の夜です。あと、一ヶ月ということです。」
「彼を呼んでもよいか。皇子丸さんを。なにかの接点があるのだろう。」
「全て治る医療機器…持ってきていないのです。もう、用はありません。」
「膵炎を患っておるのか。」
「私は、美夜の人生をなぞっているだけです。その時点で、それはもう運命なのです。」
月夜の顔を、月の明かりが染め上げる。
「運命に…抗ってもいいだろう…美夜。」
月夜の後ろには、皇子丸が立っていた。
「でも私は…家庭を築けません。抗っても、あなたとご一緒はできないのです。」
「美夜は諦めなかったのです。その気持ちで、この先も生きましょう。月夜様は築けないではなく、築きたくないのですか。僕と、生きてください。」
涙が、溢れた―。
「運命に抗いたいです。」
月が綺麗な夜だった。