その瞬間から、世界の流れが遅くなった。
 私が先程まで乗っていた車が、回転し、車道外へと、流れていく。
 きっとそのまま行けば、電柱にぶつかって事故を起こすだろう。
 一方、宙に浮いたままの私はと言うと、目の前に迫ってくるものがあった。

「あ――」

 それは、自分の体の何倍、何千倍以上もありそうな、ダンプカー。
 恐怖に青ざめた運転手の顔。
 耳に不快に響く、クラクションの音。


――ああ、私は、ここで――


 ひどくゆっくりとした時間の流れの中、
 私は、思った。


 終わりか――。


 それにしては、落ち着いた心の中、
 スローモーションで、近づいてくる死を、いや無を、私は目を閉じて受け入れようと――