「はっ? ラファエル様が? 何で?」

「さぁ? お話があるそうですが」

 まず小説のストーリーに、そんなイベントは存在しない。
 ラファエルは悲しい事にエイミーに興味がない。そのため別で呼ばれる事も、お話があるとか言うはずもない。

(おいおい。今までにない展開だぞ? そもそも話があるなら、さっき言え)

 萌は何かの罠ではないかと警戒しながらも、仕方がなくそのメイドに案内してもらう。応接間の前まで案内されると萌はノックをする。
 すると小さな声で「どうぞ」と言ってきた。
 何だがラファエルにしては弱弱しい声のような?

「失礼します」

 萌は部屋に入ると、その瞬間だった。スライディングのように土下座をしてくるラファエル。うわぁ~ビビった!?
 あまりも見事な土下座だったため萌は飛び上がるほど驚いてしまった。

「申し訳ございませんでした」

「えっ……ええっ!?」

 これは……どういう事だろうか?
 突然の土下座もだが謝罪をしてくるなんて。正気の沙汰ではないだろう。
 しかも今は部屋に誰も居ない。2人きり状態で、このような状況になって戸惑ってしまう。

「あの~これはどういう事ですか?」

 恐る恐る聞いてみると顔を上げるラファエル。いつもの偉そうな顔つきではなく、目尻には涙が溜まっていた。

「こ、これには深い訳があるんです」

 泣くような声で言ってくるが、深い訳とは何ぞや??
 萌は困惑していると、ラファエルは土下座をしたまま重い口を開いた。

「じ、実は……僕は転生者なんです」

 萌は一瞬何を言っているのか分からなかった。しかし、すぐに我に返ると、その言葉に衝撃を受ける。
 いきなり土下座で謝れたかと思ったら、自分も転生者だと言ってくるではないか。

(はぁっ~何ですって!? この男、正気で言っているの? マジで? 頭がおかしくなったとかではなくて? あ、頭がおかしいのはもともとか。いやいや……そうじゃなくて。転生者だと?)