それから数十年後の春。エイミーに転生した萌は原作通りに魔法学園に入学する。
 この学園は15歳から19歳までの5年間は在籍が出来る。
 15歳になっても皇太子・ラファエルの態度は相変わらず。偉そうに威張っているし、性格悪く育っていた。お互いに必要な時しか会話や挨拶をしない程度。
 しかし、19歳になる年になる頃から彼の姿を見て居ない。

(どうしたんだろう?) 

 と思っていたら最近体調不良で休みがちだと連絡があったと噂で耳にする。

 (まさか病気? いやいや、原作でもピンピンしていた。なら、どうせめんどくさがり屋のラファエルのことだから仮病とかだろう。そうだ……そうに違いない)

 そう自分に言い聞かした。
 どーせ、アンジェリアが転校する頃には出て来るはずだ。
 とりあえず適当に手紙でも書いて渡しておけばいいか。花束と一緒に。
 萌はそう思い直した。自分が好かない男の媚びを売る気はない。
 そんなことよりも自分はルーカスと仲良くならない。
 萌はそう思い、学園の庭に向かうとキョロキョロとルーカスを探した。
 もうそろそろ潜入調査のために、この学園に入り込んで居るはずだろう。

(あ、居た居た!)

 校舎から出ると、学園の中心にある噴水広場でルーカスは本を読んでいた。
 黒縁眼鏡とボサボサな前髪で素顔を隠している。見た目だけだと、ただのダサい根暗男性だ。
 制服は深緑色のジャケットとネクタイとズボンが赤のギンガムチェックの柄。
 ちなみに女子も深緑色のジャケットとリボンとスカートは赤のギンガムチェック。
 あれで、彼の素顔は凄い美形だどいうのだから凄い。まさによくある小説や漫画の世界だろう。そう考えてしまうとルーカスから輝かしいオーラが見えてきそうだ。

(あ、そうだ。見ているだけではなくて声をかけないと)

 見ているだけではストーリーは進まない。せめて親しくなるきっかけを作らないといけないだろう。
 萌は、それとなくルーカスに近づいてみる。よく考えたら、どうやって仲良くなればいいのか分からない。それとなく話しかけてみる?
 本来の原作通なら皇太子で婚約者のラファエルに蔑ろにされたエイミーは、この噴水広場で落ち込んでいる時にルーカスに声をかけられるはずだった。