「……分かりました。ラファエル様」

 ニコッと笑い続け、皇太子・ラファエルとのお茶会を無事に終わらせた。
 そして即行で自宅に帰るが、萌の怒りはマックスになっていた。

「はぁっ~ふざけるなよ!? この馬鹿皇太子が。何が俺を立たせて謙虚で居ろだ?
どう考えてもモラハラ夫の特徴じゃん」

 エイミーが使っていた部屋のベッドの上で、萌は枕をバンバンと叩きつけながら怒りをぶつけていた。

(ああ、思い出しただけでも、はらわたが煮えくり返りそうよ! 謙虚がどうとか言う前にお前が謙虚になれよ!? というか何で私が、あの男の機嫌を取らないといけないのよ?)

 どう考えても納得がいかない。
 それを見ていたエイミーの専属侍女のアンナはオロオロしながらも、慌てて止めに入ってきた。

「エイミーお嬢様。落ち着いて下さいませ」

「落ち着いていられないのよ、アンナ。こうなったら原作のようにしてやるわ」

 どのみちアンジェリアが学園に転校してしまえば流れが変わる。あのクズ皇太子はアンジェリアに骨抜きにされるはずだ。
 その間にイジメていないという確かな証拠と、ルーカスを探し当て交流を深めていけば、バッドエンドにならなくても済むはずだ。
 晴れて原作同様にルーカスと結ばれるだろう。
 そうなれば倒クズ皇太子、そして性悪女のアンジェリアの、ざまぁ展開が見えるだろうと確信する。

「オッホホッ~見てなさいよ。クソ皇太子」

「どうしましょう……エイミーお嬢様が壊れたわ」

 高笑いをする萌を見て、逆にアンナは困惑する。普段と違うエイミーの行動に。
 だが、こうしてはいられないだろう。まずは作戦を立てないと、それに悪役令嬢にされるにしても人脈と教養は欲しいところだ。
 原作ではルーカスは賢くて、純粋なエイミーに惹かれていた。なのにアンジェリアや皇太子以上にアホでは話にならない。
 証拠を掴むのには、ある程度の人脈と仲間が必要だろう。まだ学園に入学するには時間はある。
 こうして私は原作通りの道に進むために新たに決意をしたのだった。