「……や、やっぱり緊張してきたよ」
地図の場所が見えてきた公太は、一人が心細くなり緊張がピークに達しようとしていた。
まだ依頼主に声を掛けたわけでもなく、誰かから声を掛けられたわけでもない。本当にただ、目的地が見えてきただけだ。
「……で、でも、ここで引き返したら、太一君や勇人君に迷惑を掛けちゃうし、クレアさんにも迷惑が――」
「あんたが依頼を受けてくれた冒険者か!」
「どわあっ!?」
ぶつぶつと独り言を呟いていた公太の背後から野太い声が響くと、彼は驚きの声をあげてしまった。
「おっと! すまん、すまん! まさかここまで驚くとは思わなかったぞ!」
「……ご、ごめんな、さい」
「いやいや、俺の方こそすまん! ところで……あんたが解体作業の手伝いの依頼を受けてくれた冒険者か?」
無精ひげを生やした男性が質問をすると、公太は無言のまま何度も頷いた。
「おぉっ! そうか、そうか! ……だがあんた、本当に大丈夫か? 見たところまだ子供みたいだが、力仕事だぞ?」
「……い、一応、スキルで怪力を、持っています」
「おぉっ! マジか、怪力か! それじゃあ期待できるな! だがまあ、そこまで難しい依頼じゃないから、気負わなくてもいいぞ! がははっ!」
男性は豪快に笑いながら公太の背中をバンバンと叩く。
若干痛かったものの、公太は苦笑いを浮かべながら歩き出し、解体作業を行う場所に男性と向かう。
「おーい! 依頼を受けてくれた冒険者が来てくれたぞー!」
そこには数十人の作業員が動き回っており、建物の解体作業を行っている。
公太が見た限りでは作業が詰まっている場所など内容に思えたが、そうではなかった。
「あんた、名前は?」
「こ、公太、です」
「そうか、コウタか! 俺はドルンだ、よろしくな! それじゃあ、コウタ、あんたには解体で出てきた廃材を一番奥の廃材置き場まで運んでもらいたいんだ!」
早口で説明していくドルンは続けて、廃材置き場の場所にも案内してくれた。
入り口から見れば結構な距離があり、廃材を持って移動となれば相当な労力を要することになるだろう。
「……ぼ、僕にできるかなぁ」
「なーに、全部やってくれって言ってるわけじゃねえさ! Fランクの新人なんだろう? なら、できる限りでいいさ!」
「……そんな感じでいいんですか?」
「おうよ! だが、全力を出してくれなきゃあダメだぜ! サボったりされたら俺も依頼完了のサインをやれねぇし、ギルドに抗議させてもらうからな! がははっ!」
最初こそどれくらい頑張ればいいのかと考えた公太だったが、自分なりの全力で仕事をしてほしいと告げたドルンを見て、結局はその通りだなと思い直した。
「が、頑張ります!」
「おう! 頼んだぜ、コウタ!」
こうして公太の初めての依頼がスタートした。
元気な最初は廃材置き場から一番遠い入り口へと戻り、そこから廃材を運んでいく。
どれが必要なもので、どれが廃材なのかの見分けがつかない公太は恐る恐るといった感じで作業員に声を掛けたが、彼らは気安く答えてくれ、その態度が公太の緊張を少しずつではあるが和らげてくれた。
廃材の持ち方も最初は難しく、ポロポロと落としてしまうことも多かったが、回数を重ねるごとに効率の良い持ち方を見出し、周りの作業員が驚くほどのスピードで廃材置き場まで運んでいくことができた。
「おう、コウタ! 頑張ってるじゃないか!」
時間を忘れて作業をしていると、ドルンから声が掛かった。
「あ、ありがとうございます!」
「いやいや、それはこっちのセリフだっての! そろそろ飯にするが、持ってきてるか?」
「飯……あっ!」
すでに太陽はてっぺんに来ており、ドルンたちは休憩がてら昼食を取ろうとなっていた。
「……持ってきて、ないです」
「がははっ! 新人にはよくあることだ! 俺の弁当を分けてやるから、こっちに来い!」
「でも、いいんですか? 皆さんの方が動いてるし、力も使ってますよね?」
「子供がそんなこと気にすんじゃねえっての! ほら、こっち来い!」
「あ、ありがとうございます!」
そうして作業員が集まっているところに向かうと、作業員から好意的な声が何度も掛けられた。
「坊主、すごいな!」
「マジで助かったよ、ありがとな!」
「後半もよろしく頼むぜ!」
「……は、はい! 頑張ります、ありがとうございます!」
ドルンから弁当を分けてもらい、作業員から好意的な声を掛けてもらえ、公太は自然と頬が緩んでしまう。
「そうだ、コウタ。依頼書を貸してくれねぇか?」
「えっ? はい、分かりました」
突然ドルンからそう言われ、公太は首を傾げながら依頼書を手渡した。
「……よし、これでいいな!」
「これでいいって……えっ! ちょっと、ドルンさん! 僕まだ、仕事終わっていないですよ!」
ドルンはまだ仕事が残っているにも関わらず、依頼書に依頼完了のサインをして公太に返していた。
「これだけやってくれたんだ、問題ねぇだろう!」
「で、でも……」
「むしろ、普通の新人なら一日かけてもコウタと同じようにはできねぇっての!」
ドルンがそう口にすると、周りの作業員たちも大きく頷いている。
これで依頼完了、このまま冒険者ギルドに持っていっても報酬を受け取ることはできるし、後半の仕事は少し力を抜いても問題はないだろう。
それでも公太は残りの時間も全力で取り組もうと心に決めていた。
「それでも、皆さんの力になれるよう、頑張ります!」
「がははっ! よろしく頼むぜ、コウタ!」
「はい!」
その後、公太は廃材のほとんどを廃材置き場まで運び、最後にはドルンから勧誘されるくらいの活躍を見せ、初めての依頼は大成功に終わったのだった。
地図の場所が見えてきた公太は、一人が心細くなり緊張がピークに達しようとしていた。
まだ依頼主に声を掛けたわけでもなく、誰かから声を掛けられたわけでもない。本当にただ、目的地が見えてきただけだ。
「……で、でも、ここで引き返したら、太一君や勇人君に迷惑を掛けちゃうし、クレアさんにも迷惑が――」
「あんたが依頼を受けてくれた冒険者か!」
「どわあっ!?」
ぶつぶつと独り言を呟いていた公太の背後から野太い声が響くと、彼は驚きの声をあげてしまった。
「おっと! すまん、すまん! まさかここまで驚くとは思わなかったぞ!」
「……ご、ごめんな、さい」
「いやいや、俺の方こそすまん! ところで……あんたが解体作業の手伝いの依頼を受けてくれた冒険者か?」
無精ひげを生やした男性が質問をすると、公太は無言のまま何度も頷いた。
「おぉっ! そうか、そうか! ……だがあんた、本当に大丈夫か? 見たところまだ子供みたいだが、力仕事だぞ?」
「……い、一応、スキルで怪力を、持っています」
「おぉっ! マジか、怪力か! それじゃあ期待できるな! だがまあ、そこまで難しい依頼じゃないから、気負わなくてもいいぞ! がははっ!」
男性は豪快に笑いながら公太の背中をバンバンと叩く。
若干痛かったものの、公太は苦笑いを浮かべながら歩き出し、解体作業を行う場所に男性と向かう。
「おーい! 依頼を受けてくれた冒険者が来てくれたぞー!」
そこには数十人の作業員が動き回っており、建物の解体作業を行っている。
公太が見た限りでは作業が詰まっている場所など内容に思えたが、そうではなかった。
「あんた、名前は?」
「こ、公太、です」
「そうか、コウタか! 俺はドルンだ、よろしくな! それじゃあ、コウタ、あんたには解体で出てきた廃材を一番奥の廃材置き場まで運んでもらいたいんだ!」
早口で説明していくドルンは続けて、廃材置き場の場所にも案内してくれた。
入り口から見れば結構な距離があり、廃材を持って移動となれば相当な労力を要することになるだろう。
「……ぼ、僕にできるかなぁ」
「なーに、全部やってくれって言ってるわけじゃねえさ! Fランクの新人なんだろう? なら、できる限りでいいさ!」
「……そんな感じでいいんですか?」
「おうよ! だが、全力を出してくれなきゃあダメだぜ! サボったりされたら俺も依頼完了のサインをやれねぇし、ギルドに抗議させてもらうからな! がははっ!」
最初こそどれくらい頑張ればいいのかと考えた公太だったが、自分なりの全力で仕事をしてほしいと告げたドルンを見て、結局はその通りだなと思い直した。
「が、頑張ります!」
「おう! 頼んだぜ、コウタ!」
こうして公太の初めての依頼がスタートした。
元気な最初は廃材置き場から一番遠い入り口へと戻り、そこから廃材を運んでいく。
どれが必要なもので、どれが廃材なのかの見分けがつかない公太は恐る恐るといった感じで作業員に声を掛けたが、彼らは気安く答えてくれ、その態度が公太の緊張を少しずつではあるが和らげてくれた。
廃材の持ち方も最初は難しく、ポロポロと落としてしまうことも多かったが、回数を重ねるごとに効率の良い持ち方を見出し、周りの作業員が驚くほどのスピードで廃材置き場まで運んでいくことができた。
「おう、コウタ! 頑張ってるじゃないか!」
時間を忘れて作業をしていると、ドルンから声が掛かった。
「あ、ありがとうございます!」
「いやいや、それはこっちのセリフだっての! そろそろ飯にするが、持ってきてるか?」
「飯……あっ!」
すでに太陽はてっぺんに来ており、ドルンたちは休憩がてら昼食を取ろうとなっていた。
「……持ってきて、ないです」
「がははっ! 新人にはよくあることだ! 俺の弁当を分けてやるから、こっちに来い!」
「でも、いいんですか? 皆さんの方が動いてるし、力も使ってますよね?」
「子供がそんなこと気にすんじゃねえっての! ほら、こっち来い!」
「あ、ありがとうございます!」
そうして作業員が集まっているところに向かうと、作業員から好意的な声が何度も掛けられた。
「坊主、すごいな!」
「マジで助かったよ、ありがとな!」
「後半もよろしく頼むぜ!」
「……は、はい! 頑張ります、ありがとうございます!」
ドルンから弁当を分けてもらい、作業員から好意的な声を掛けてもらえ、公太は自然と頬が緩んでしまう。
「そうだ、コウタ。依頼書を貸してくれねぇか?」
「えっ? はい、分かりました」
突然ドルンからそう言われ、公太は首を傾げながら依頼書を手渡した。
「……よし、これでいいな!」
「これでいいって……えっ! ちょっと、ドルンさん! 僕まだ、仕事終わっていないですよ!」
ドルンはまだ仕事が残っているにも関わらず、依頼書に依頼完了のサインをして公太に返していた。
「これだけやってくれたんだ、問題ねぇだろう!」
「で、でも……」
「むしろ、普通の新人なら一日かけてもコウタと同じようにはできねぇっての!」
ドルンがそう口にすると、周りの作業員たちも大きく頷いている。
これで依頼完了、このまま冒険者ギルドに持っていっても報酬を受け取ることはできるし、後半の仕事は少し力を抜いても問題はないだろう。
それでも公太は残りの時間も全力で取り組もうと心に決めていた。
「それでも、皆さんの力になれるよう、頑張ります!」
「がははっ! よろしく頼むぜ、コウタ!」
「はい!」
その後、公太は廃材のほとんどを廃材置き場まで運び、最後にはドルンから勧誘されるくらいの活躍を見せ、初めての依頼は大成功に終わったのだった。