4.因幡の美少女

 僕がお寺の床掃除をしていると、友達の宗心がやってきた。
「なあなあ、因幡の国にいる美少女のこと知ってるか?」
「因幡の美少女?」
 僕は聞いたことがなかった。宗心は真剣な顔で続けた。
「なんとか入道って人の娘さんがちょーかわいくてモテモテなんだけど、お父さんが誰とも結婚させないんだって」
「ふーん」
「何でだかわかるか?」
「なんでだろうねえ。『うちの大事な娘をどこの馬の骨ともわからん奴にやれるか!』とかの類いかな?」
 僕が推理してみせると、宗心は悲しげに眉を下げた。
「違うんだ。その娘が変わりもんだから『こんな娘は誰にも嫁にやれない』ってお父さんが言っているらしい」
「変わり者……」
 どんな子なのだろう。どんなに変わっていても、人それぞれいいところもあるだろうに。
 宗心はため息をついた。
「それがその娘はさ、栗ばかり食べて米を全然食べないんだって。そりゃあ仕方ねえよなあ。わかるよ」
「待って。全然意味がわからない」