1.兄上の思い出

 僕が仁和寺に入る前日、兄上は僕を呼び出した。難しい顔をして正座していた兄上の前に、僕はびくびくしながら出ていった。
「兼友。これから大事なことを言う。よく聞け。友とするのには悪い者が七つある」
 僕はごくりと唾を飲み込んだ。
「ひとつめは俺様。ふたつめは若造。みっつめは脳筋。よっつめは酒好き。いつつめはやんちゃが過ぎる奴。むっつめは嘘つき。ななつめはがめつい奴。何故だかわかるな?」
 僕は頷いた。兄上の言いたいことはわかった。一概に友達になっちゃダメだとは思えなかったけれど、でも僕自身はそうならないように気を付けたいと思った。
 兄上はさらに続けた。
「そして、良い友にはみっつある」
 僕は緊張して拳を握りしめた。
「ひとつめ、それは、頭のいい人」
 僕は頷いた。僕も誰かにとっての「良い友」になりたい。
「そして、あとのふたつ。ーーそれは、物をくれる人と医者だ!」
 とてもよくわかった。