18.秘密の歌
「延政門院悦子内親王さまが、まだ幼かった時にだな、父上の後嵯峨院にこんな歌を送られたそうだ」
兄上が僕に話してくれた。
「ふたつ文字牛の角文字すぐな文字ゆがみ文字とぞ君はおぼゆる」
「どういう意味ですか?」
「どういう意味だと思うか?」
兄上はニヤリと笑った。
何かの暗号だろうということは僕にもわかった。僕の見立てでは、内親王さまの父上である院の身に迫っている危険を、誰かはわからない敵に悟られないようにお教えするための歌に違いないと思う。
考えに考え、僕はひとつの結論に辿り着いた。
ーー二つの牛の角がまっすぐやってきて、その身を歪ませてやろうとしている。早く逃げて! という暗号だ!
答えがわかった僕は顔を上げた。と同時に兄上が答えを言い始めた。
「ふたつの文字、つまり『こ』。牛の角の文字『い』。まっすぐな文字『し』。歪んでいる文字『く』。つまり『恋しく』。『おとうさま、だーいすき!』ってことだな! めちゃくちゃかわゆくあらせられるな!」
全然違った。
「延政門院悦子内親王さまが、まだ幼かった時にだな、父上の後嵯峨院にこんな歌を送られたそうだ」
兄上が僕に話してくれた。
「ふたつ文字牛の角文字すぐな文字ゆがみ文字とぞ君はおぼゆる」
「どういう意味ですか?」
「どういう意味だと思うか?」
兄上はニヤリと笑った。
何かの暗号だろうということは僕にもわかった。僕の見立てでは、内親王さまの父上である院の身に迫っている危険を、誰かはわからない敵に悟られないようにお教えするための歌に違いないと思う。
考えに考え、僕はひとつの結論に辿り着いた。
ーー二つの牛の角がまっすぐやってきて、その身を歪ませてやろうとしている。早く逃げて! という暗号だ!
答えがわかった僕は顔を上げた。と同時に兄上が答えを言い始めた。
「ふたつの文字、つまり『こ』。牛の角の文字『い』。まっすぐな文字『し』。歪んでいる文字『く』。つまり『恋しく』。『おとうさま、だーいすき!』ってことだな! めちゃくちゃかわゆくあらせられるな!」
全然違った。