12.真乗院の尊い僧侶 その3

「彼はな、かつてはとても貧しかったんだ……」
 兄上は続けた。盛親僧都の話だ。尊い僧侶にもそんな時代があったのかと、僕はしんみりした。
「だが、ある時彼の師匠が亡くなってな。遺産を彼に遺してくれたんだ。ざっと、銭三百貫(三千万円くらい)」
 僕はほっとした。きっとその師匠も盛親僧都の将来を心配していたのだろう。
「彼はそのお金を少しずつ芋頭の購入にあてた」
 また芋頭だ。僕は警戒した。
「そして、たらふく芋頭を食っては、またお金をおろし芋頭を買って、またたらふく食い、を繰り返し、ついに三百貫全てを芋頭に費やしたのである……!」
 僕はもう驚かなかった。僕も大人になったものだ。
 兄上は続けた。
「それを見た人々は口々にこう言ったそうだ。『貧しいのに、三百貫全てを芋頭に費やしてしまうなんて……誠にありがたい! これほどまで仏の道を追求できるとは!』と!!」
「えっ!」
 僕は驚いた。