兼友さん ~仁和寺の法師たち~ (徒然草より)


「兼好兄上へ。お元気ですか、僕も元気です。僕が仁和寺に来てからひとつき。もうすっかりここでの生活にも慣れ、毎日楽しく過ごしています。
兄上は『大寺院なんて男色坊主ばっかりだぞ。そんな所に行ったらお前も狙われてしまうぞ。なんと言ってもお前はかわいいからな。悪くすると染まってしまうかもしれん。いや……むしろそのほうが幸せかもしれないが……』とか心配していたけれど、皆僕に優しいです。狙ったりとかそんな命の危険なんかないです。いい人ばかりで上下関係もうまくいっています。友達もたくさんできたので今度紹介しますね」

 僕はそこまで書いて筆を置いた。僕には年の離れた兄上がいる。皆からは「兼好法師」と呼ばれている。卜部兼好という名前だから、それを音読みしたのだそうだ。
 十二歳になった僕は、仁和寺に修行に行くことになった。僕のお坊さんとしての名前は「けんゆう」だ。「兼友」だから「けんゆう」と呼ばれることになったのだ。

これは、僕と兄上と仁和寺の法師たちのお話だ。