アキラがいなくなって1か月。最期の瞬間に笑えなかった私は無理矢理笑顔を作って登校する。そして今日も好きでもない男を口説く。
「おはよう。私、諦めないから」
 アキラと同じ顔をしたその男はどこか申し訳なさそうに私を見たあと目を逸らす。
「俺に媚びたってアキは返さないし、俺はお前のこと好きにならねえからな?」
「今はそうかもしれないけど、10年、20年後はどうなるか分からないでしょ?」
「俺は、蘭みたいな強い女が好きなんだよ」
 知っている。だから私は二度と泣かない。勝負に負けても、何度ひどいことを言われても。
 この人に認めてもらえるように、私は強くなる。そうしたらいつか、貴方がその体に帰ってきてくれるかもしれないと信じて。