風邪っぴきの救世主




「えっ、〝また〟ですか..................?」



私、木野陽子(きのようこ)は。



担任の先生から、何度目かの、
衝撃的な話しを聞かされているところ。



内容は、いつも至ってシンプル。



それは、クラスメイトの、
与田美影(よだみかげ)くんのこと。



彼はもの凄く特殊で。



誰も意味が分からないことが、
彼の身に起きている、不思議な男の子。



インフルなどの、
季節性のかぜなど。



私を含めて、
みんな当たり前に引くもの。





だけど、彼。



与田くんは.................................



ドンピシャで、
流行っている時期には体調を崩さない。



流行が終わったころ。



与田くん1人だけが、
ひっそりと風邪を引いて。


しかも、与田くんの体が強いのか弱いのか。



与田くんの風邪は、
──────治るのが遅い。



そんな与田くんを
先生も私も心配しているんだけど............



流石に単位足りなくなるかな?って、
心配は、テストの点数で挽回しちゃうし。



ほんと。



「与田くんって、」

「与田って、」



「「分からないなぁ」」



与田くんの風邪に関する七不思議に、
私と先生が、今日も、
首を傾げたのは、言うまでもないい。




***



先生と首を傾げてから数日。



私は、与田くんの、
〝ある秘密〟を知ることになった。



聞きに行ったわけじゃかいから、
──────ものすごく偶然。



廊下で与田くんと偶然会った。



会っただけじゃなくて..................



-----------------ドンッ!と。



不覚にも、与田くんにぶつかってしまった。



その時だった..............................



「木野さん、熱あるでしょ」



たかが一瞬、されど一瞬。



ぶつかっただけで、
〝熱〟があるなんて分からないのに。



与田くんが放った言葉は、
衝撃以外のなにものでもなくって。





「ど、して............っ?」



お母さんも気づかなかったから。



私はバレずに学校に来たのに。



〝どうしてだろう?〟
そう思ったら、自然に言葉が出てて。



「.........あ、いや、なんとなく?」



誤魔化すように言葉を出した与田くんだけど。



なんだかうろたえてる様子で。



「ごめん!木野さん。俺もう、行くわ!」



うろたえていたのを誤魔化すように。



与田くんは、
〝どこか〟へと走って行ってしまった.........



ただ、与田くんに指摘された直後。



5時間目の授業は、
朝から体がだるかったのが.....................



──────嘘みたいに治っていた。





***


SHRが終わったあと。



隣のクラスの子が、
『与田くん、保健室にいたよ。また』



そんな会話が聞こえて来たから、
教室を出て向かう場所は保健室。



正直、与田くんのことが心配で。


駆けつけるように、
保健室のドアを開けた瞬間。



「............、せんせ、」



顔を真っ赤にした与田くんが、
倒れ込むように私の方へと倒れ込んできた。



私はそんな与田くんを、
受け止めるように支えると。



彼をそのまま、
保健室のベッドへと運んだ。


与田くんは男の子だから、
もちろん重たかったけど。



でも、それ以上に心配で..................



気が気じゃないまま、
与田くんが目を覚ますのを待った。





──────与田くんが倒れてから1時間。



「............、あれ、俺、」



まだ熱が少し高そうな気もするけど。



驚いたような顔をして、
こちらを見ている与田くん。



そんな与田くんに.....................



「よ、与田くん!大丈夫?」



そう声をかけると。



「ごめん、木野さん」



なんのことだかサッパリ。



突然、謝ってくる与田くん。



与田くんの、
行動の意味が分からなくて...............



「与田くん。なんのこと?」



そう問いかけると。



「......えっ、俺のこと気づいたんじゃなの?」



拍子抜けのようなトーンで、
問いかけてくる与田くん。




「え、待って。
与田くん。なんの話ししてるの?」



そう問いかけると..................



「俺が木野さんの熱、吸収したこと、
てっきり、気づいてるのかと......思った、」



そう言った与田くんの言葉に、
ほんの少し疑問を感じた。



普通は、熱は〝移る〟なのに。



与田くんは、〝吸収〟と言った。



その言い回しに、
何か、意味があると思って.....................



「与田くん............ってまさか、
人に触れたら、熱や風邪を貰える、とか?」



まさに、半信半疑。



そんな、
ファンタジーみたいなことあるわけがない。



そう思って問いかけたのに...............


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